第54話 それぞれのクリスマスその2


「高橋さん、今年のクリスマスどうするの。去年みたいにみんなで一緒にする。金田君は断られた。医学部の人と一緒みたい」

「そう、私も今年はちょっと。ごめんね」

「えーっ、じゃあ、私はどうするの」

「ごめん」


宮崎さんごめんね。今年は京介と一緒なの。彼の事、まだ誰にも言えないんだ。


 あーぁ、四年生にして一人ぼっちのクリスマスか。私、普通に魅力あると思うんだけどな。なんで声かけてくれないんだろう。外のコンパに行っても大学名言っただけで避けられちゃうし、やっぱりこの大学の中なのかな。でも、もう一週間だよ。クリスマスまで。


「どうした。宮崎」

「あっ、的場先輩。どうしたんですか。今キャンパスにはあまり来ないですよね」

「ちょっと用事があってな。それより一人でどうしたんだ」

「聞いてくれます先輩。今年のクリスマス。私一人なんですよ。酷いと思いません」

「そ、そうなの。宮崎さんだったら引く手数多だと思ったけど」

「そう思うでしょ。でもこれ現実です。あっ、的場先輩は、どうするの。まあいるか」

「悪いな。幸運を祈る」

 

的場先輩が工学部の方へ歩いて行った。あれ、さっき高橋さんも同じ方向へ行ったよね。まあ、偶然か。

全く、同郷なのに。金田君と言い、高橋さんと言い、的場先輩まで。酷ーい。如月さんに至っては何故か遠い人になっているし。世の中不公平だ。

 仕方ない。バイトするか。店長人足りないって言っていたし。


………。宮崎さん、拾う神もあると思います。幸運を!




「音羽待ったか」

「うん、待った」

「そうか。悪かったな」

「じゃあ、今日の夕飯は京介の驕りね」

「はいはい」


今日は、京介とデート。この時期二人共時間は結構自由。


「京介、そう言えば就職は」

「ああ、医師免許も取れたし付属病院で駆け出しだ。まあ、仕方ないな」

「いいじゃない」

「音羽は」


「私、もちろん決まっているよ。三の三で全部受かったけど、○○製薬のIT部門にしたわ」

「へえ、音羽がITか」

「今は、ITだから理系なんて考えるのは石化した頭よ。あの業界というよりITは色々な世界に染み込んでいるわ。京介の世界だってIT無しには出来ないでしょ」

「まあ、そうだな」



「ねえ、ここの食堂新しくなって良いけど、少し敷居が高くなった感じ。理学部の裏の食堂も新しくなったけど、安くて美味しいわ」

「そういう事は言わないように。音羽、俺より先にお皿綺麗になっただろ」

「だってここのスパ美味しいし」

「まったく」



「ところでクリスマスは何処に連れてってくれるの」

「浦安にあるテーマパークかな。近くのホテルのレストランも予約してある」

「さすが、私の京介。もちろん………だよね」

「ははっ、音羽エッチだな」

「どっちが!」


 音羽とは、俺が高校の時に知り合った。あの時、音羽はまだ中学生だった。俺が出ていた剣道の県大会で、俺の友人である音羽の兄も参加していた。音羽の兄から紹介されたのが始まりだ。


 何回か、兄妹で会って話すうちに音羽と二人で会う様になった。俺が告白したのが、音羽が高校一年の時、俺が大学一年入学した後だった。


実言うと俺が高校二年半ばから三年三学期まで勉強が忙しくて会えなかった時期も有り、諦めかけていたが、思い切りって告白したら、こいつずっと待ってくれていたんだと。勉強が忙しいみたいだから、敢えて声を掛けなかったと。


 更に驚いたのは俺と会いたいからとここに入学して来た。さすがに医学部は難しいと言って文学部にしたが、驚いたよ。あの時は。

なんて言ってもいきなり


「京介、私も東都大学入学したよ」だからな。

まあ、これで俺と音羽の運命は決まったってところだ。


そういう意味では長いな。俺の親も音羽の親も結婚するが当たり前と思っている。

音羽は良い子だ。優しいし、俺の事を良く考えてくれる。こいつと一緒に居ると何故か落着く。それに綺麗だ。まあ既定路線だな。望月と違って俺は器用じゃないから。


 附属病院で正式に働き始めたら同居するか。新鮮さが掛けるとか言って、音羽は同棲をしなかったが、もうここまで来れば同棲じゃなくて同居だ。親達も認めてくれるだろう。


 そう言えば、柏木さんだっけ。あの子どうしたんだろう。如月姉のサークルの名前を聞いて以来だな。俺には関係ないが。


「京介、何考えていたの。目が遠くを見ていたよ」

「いや、プレゼント何しようかなと思ってさ」

「だから、今日会ったんでしょう。もう食べ終わったんだから行こうよ。渋谷いいな」

「ええ、高そう」

「いいの」

「買うの、俺なんだけど」


三歳歳下の高橋さんに、早くも尻に敷かれる的場君。どうもこの大学の男性は、優しいんですかね。



一方宮崎さんは、

あーあ、仕方ない。店長に電話してシフト入れて貰うか。


「店長、二十四と二十五は入れます」

「本当。宮崎さん、助かるよ。皆都合悪いって言って。シフトどうしようか困っていたんだ」

「分かりました。一番から入れます」

「ヨロピコ」

 なにこれ。もう五十過ぎの男がいう言葉?!まあ、いいや。


 頑張れ宮崎さん………。報われない努力を無駄と言う。ああ、酷いこと言う。

でも、クリスマスだから何か良い事でもあるかも。


―――――


なんと、金田君、宮崎さん、高橋さん、的場君が同郷だったとは。

その上高橋音羽と的場京介が恋人同士だったとは、私も知りませんでした。

柏木さんが行方不明ですね。どうしたんでしょう。

次回辺り望月君出て来ます。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る