第25話 夏休みの予定
前期夏休み前の授業も終わり来週から夏休みに突入だ。大体予定は立てているが、予定出来ていないのが、立花君との事だ。
長い夏休みの間全く会わないという事は考えられない。せっかく、偶に彼と一緒に夕食を食べれるまでになったんだ。
明日当たり夕食一緒に取れないか聞いてみるか。まだ、十時前連絡は大丈夫だろう。
私は立花君にチャットメールを送った。一応礼儀。
『………』
何も既読も付かない。何かしているんだろうか。何度か送ったが返信どころか既読も付かない。ちょっと心配になって電話に切り換えようと思ったが、立花君も都合あるだろうと思うと止めた。
如月先輩のマンションを出て駅に向かう。何気なしにスマホを見ると柏木さんから結構連絡が入っていた。一番新しいチャットメールを開けると
『用事が有るから連絡下さい』
なに用事って。心当たりは無いがこれだけ送られて来たなら意味もあるだろう。仕方なく返信する。
『すみません。お待たせしました。用事ってなんでしょうか』
少しして
『明日夕飯一緒にどうかな。もう来週から夏休みだし』
夏休みと夕飯の因果関係は良く分からないが、明日の夕方は何も予定はない。
『良いですよ』
『やったー。じゃあ明日連絡するね』
文字と一緒に猫が二匹で喜んでいる絵が送られてきた。
意味不明だ。
結局家に十一時半過ぎについた。シャワーを浴びると寝るのが一時近くになってしまった。明日は日曜だと思い目覚ましを掛けないで寝た。
自然と目が覚める。机の上の時計は十時を少し過ぎていた。良く寝たな。
俺は、伸びをたっぷりするとベッドの狭いのが気になるが、あまり大きいベッドも入れられないので仕方ない。もう背が伸びるのは止まったと思うが、百九十一センチにもなってしまった。
俺の両親はそんなに大きくない。叔父が大きいので隔世遺伝というところだろう。
顔を洗い、髪の毛を整えて…と言っても顔を洗った濡れた手で髪の毛をサッと整えてブラシするだけ。いい加減。…コーヒーを飲むと部屋を掃除することにした。
今日は柏木さんが来る。部屋が汚いとか言って掃除を始められたら、困る事もある。まあね。
キッチン、ダイニング兼用リビングそして洗面所。ベッドルームもサッと。ここは彼女が入ることはあり得ないし。お風呂はシャワーだけだからまあそのままで。
結構な手抜きで終わらせるとテレビを付けた。流し見で点けていると交通事故のニュースをやり始めた。現場からの生中継の様だ。
『こちらから走って来た車が、カーブを曲がり損ね反対車線にはみ出したところで、反対側から来た自動車が運転席を直撃し、その反動でガードレールにぶつかったようです』
自動車が写し出されている。フロントと運転席がぐしゃぐしゃだ。運転手は駄目だろうなと思いながら見ていると現場の報道記者がとんでもない事を言い始めた。
『運転手は、首の骨を折る大けがをして心肺停止状態で病院に搬送されました。運転していたのは男性。名前は高田幸助、十九才。未成年による飲酒運転と思われます。一緒に乗っていた女性も病院に運ばれました』
「っ!」
何とも嫌なニュースだと思い、他のチャンネルに変更したが、何故か同じニュースを流していた。
あいつが飲酒運転。呆れたてテレビのスイッチをオフにした。もう俺には関係ない事だ。
でも助手席に乗っていた女性とは。
頭の中に嫌な思い出が蘇った。もう仕舞い込んだはずなのに。
ピンポーン。
玄関の監視カメラを見ると柏木さんだ。夕飯を作るには、早い時間。なんだろう。
ガチャ。ドアを開けると
「こんにちは立花君。早速だけど買い物行かない。食べる物決めてないんだ。君と一緒に決めようと思って」
「…いいですよ。ちょっと待って下さい」
急いで財布とスマホ、そして部屋の鍵を持つと柏木さんと一緒にアパートを出た。
二人並んでスーパーへ歩く。
「えへへっ。嬉しいな。立花君とこうして歩けるの。何食べようか」
俺と歩くのが嬉しい。分からん?
「柏木さんが作ってくれた物でいいです」
「そう言うの一番困るのだけど」
俺の方をちらっと見る。
「決めて」
うっ、そんな目で見ないで下さい。
「わ、分かりました。では鶏ももの甘辛煮。八宝菜。お豆腐と野菜サラダ」
「うわっ、い、いいわ。作ってあげる」
「食べたいものって言われたので………」
「だから良いって言ったでしょ」
「………」
悪かったかな。
俺が籠を持ち柏木さんが、野菜やお肉を籠に入れていく。籠の中のバランスを取る為に入れられた物を動かしていると
「立花君って、結構細かいのね」
「えっ」
「だって、籠の中色々触るし」
「いや、冷蔵物と野菜とかを一緒にすると良くないかなと思って。それに持ちやすいようにしているだけです」
「やっぱり細かいよ」
「柏木さんは、揃えないんですか」
「いつもこんなに買わないし」
「…すみません」
「いいよ。立花君が一杯食べている姿って料理人冥利につきるから」
「そ、そうですか」
結構な買い物量になった。ちょっと注文しすぎたかも。でも荷物は全部俺が持っているからいいか。
部屋のドアを開けてキッチンに買って来た食材を降ろすと、柏木さんが動き始めた。冷蔵品、冷凍品、野菜など手際よく冷蔵庫に入れていく。追加で買った調味料は、流し台に付いている調味料ボックスに。キッチンを完全に把握されている。
まあ、いいか。
一通り入れ終わると俺が座っている所に寄って来て座った。
「立花君、夏休みはどうするの」
「夏休みですか。実家に一週間位行った後、こちらでバイトします。ちょっと旅行もしてみたいかな。お金ないから安いパックとかでもいいと思っていますけど」
「バイトってなにするの」
「まだ確定じゃないですけど塾で講師をしようと思っています。知人が紹介してくれそうなので」
「えっ、知人。誰その人」
うっ、突っ込んでくる。
「大学の友人です」
如月先輩の事は言う訳には行かない。言ったら良くないと第六感が感じている。
「そっか。私もバイトしようかな。それ私も紹介してくれないかな」
「まだ決まってもいないし」
「そうだね。ねえ、一週間実家に帰るって言ったよね。いつ帰るの」
また聞かれた。
「多分お盆前後だと思います」
「あっ、私もその時は帰るから一緒に帰ろ」
「えっ」
「何か都合が悪い事でもあるの」
「いえ、ありません」
「じゃあ決まり」
うっ、押し強い。なんで僕の周りには押しの強い人ばかりが、如月先輩といい、柏木さんといい。まいるな。
「さっき、旅行行くって言ってたよね。どこ行くか決めてあるの」
まただ。この人なんで俺の夏休みに興味あるの。
「まだです。適当な安いパックか、電車乗り継ぎで安宿探しのパターンもありかなって感じです」
「へー。いいな」
この後は突っ込んで来なかった。さすがに一緒に行くとは言えないよね。良かった。
この後は、柏木さんが作ってくれた料理でお腹がいっぱいになった。
「本当に助かります。ありがとうございます」
「いいよ。こちらこそ。一人で食べるよりこうして二人で食べた方が美味しいし、一人分作るより二人分のが作りやすいから」
「そうなんですか。俺はいつも電子レンジでチンですから」
「毎日でもいいよ」
「いやそれは、さすがに。それに帰宅時間も同じと言う訳じゃないし」
「そうだね。言ってみただけ。でも遠慮しなくていいよ。立花君が一人の時声かけてくれれば喜んで作るから」
「すみません」
何か誘導されている様な気がする。
―――――
立花君。君は誘導されています。いずれ毎日になりかねないですよ。
夏休みはこれからです。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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