第21話 隣人の気持ち
私は、柏木美穂。
立花君と同じ大学に入学した。彼は理学部だけど私は文学部。構内は広いけど会えない訳じゃない。それでも会える回数は少ない。そこで考えたのが、地元にいるうちに立花君が東京で住むアパートを聞き出す事だった。
何故そんな事するかって。当然、立花隼人と恋人になる為。
彼は、地元で女の子の中では人気ナンバーワン。長身で、イケメン。優しくて頭がいい。そんな彼が選んだ大学は、地元から入学できる人間は彼と私だけ。
本当はもう一人いたのだけど自滅した。その子が最大のライバルと思っていたから、心の中では嬉しかった。
こんな最高のシチュエーションを逃す手はない。彼が押しに弱い事は知っている。心が優しい事も。そこで私は、あの手この手を使って、彼の口からアパートの住所を教えて貰った。本人から教えて貰ったのだから問題ないでしょ。どうやって聞き出したかはまた後で。
立花君は、中学時代は全く目立たない子だった。私が図書委員をしている時、図書室をまるで仮眠所と間違えているのと言いたくなる位、良く寝ていた。成績も中の中。
私も興味の対象外だった。
そんな彼が変わるきっかけとなったのが、如月星世との交際。
星世と私は大の仲良しだった。中学入ってから知り合ったけど、思考が論理的で心が綺麗な素直に育った感じ。勉強も出来て二人で成績上位を競っていた。
ある時、星世が図書室に入ろうとするのと彼が出ようとするのが、全く同時だった。
星世の身長は彼の顎位までしかない。二人が不意ぶつかれば結果は見えている。星世はお尻を着き、パンツ丸見え、彼は恥じらいながらもしっかりとそれを見ていた。
星世は文句を言いながらも自分が落とした資料を丁寧に拾い、渡してくれた事に少し戸惑いを見せた。他の要因も有ったけど。
その後、二人はまた職員室の入り口で鉢合わせ。星世は私に運命を感じるとか言って彼に話しかけた。
立花君はその時、鈴木穂香さんという仲の良い女の子が居たけど、そんな事関係無いかの様に星世は立花君にアプローチ。見事立花君は星世に仕留められた。
その辺からかな。彼が変わり始めたのは。いい加減に伸ばしっぱなしだった髪の毛をすっきりと短くして、勉強も積極的にするようになった。星世の影響だろうけど。
中学卒業の頃は、十分私達と同じ長尾高校に入るだけの成績を残していたけど、結局大北高校に行った。星世から理由は聞いていない。
多分、これが星世と立花君が別れるきっかけだったのだと思う。
星世はその後、噂も良くない高田幸助という男と付き合い始め、体の関係まで持つようになった。途中までは私も高田とは付き合わない様に助言したけど聞く耳を持たず結局、高田の策略で彼を振った。それも皆の前で。
私もあれは酷いと思った。二年近くも一緒に居て深い付き合いをしていた男の子をあんなやり方で振るなんてショックだった。それ以来、星世とは表面的には接していたが心の中ではもう友達とは思っていなかった。
その後、彼は鈴木穂香と恋人関係になったらしいが、それも鈴木さんから一方的に振られたらしく酷く落ち込んでいたと聞いていた。
彼の噂を再度聞き始めたのは、大北高校にこの長尾高校の最優秀生徒より更に優秀な生徒がいると聞いてからだ。私が立花君だと分かった時、彼は全国模試で二十位に入る程の秀才に変わっていた。私もさすがに驚いた。秀才になった理由は分からない。
朝の通学電車で私が偶々一つ早い電車に乗った時、周りの人より頭一つ抜き出て、周りに女の子達が一杯の彼を見つけた。
私は直ぐにそれが立花君だと分かった。背が高くイケメンで優しそうな面立ちでいる彼を私は直ぐに意識してしまった。
それ以来、私は猛烈に勉強した。彼が行く大学は一つしかない。学部は違うだろうけど大学は一緒。必ずチャンスはあると思った。
案の定、彼は合格発表会場に来ていた。合格は知っているはずなのに来た理由は間違いなく私と同じ、テレビで見ている雰囲気を見に来たと分かった。
だから私は彼を喫茶店に誘って、色々な話をした。そこで彼のアパートの住所を半場強引に聞き出した。彼の優しさに付け込んでね。
後は、四年間で彼とゴールインする状況になればいい。ライバルはいない。もちろん大学の友人という線はあるが、それは十分排除可能だ。
そして、私は、彼の引越し日を同じ大学、同じアパートで同郷という理由で彼のお母さんから聞き出し、見事にファーストコンタクトに成功した。
そして一つ貸を作れた。後はじっくりと彼を落とすだけ。私もスタイルや美貌には自信がある。
ふふふっ、これからが楽しみ。
この時はそう思っていた。
―――――
ふむっ、柏木美穂さんの考え良く分かりました。
確かに今のところは彼女の独断場。でも世の中、そう簡単には行きません。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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