第17話 悪夢再び
俺は、あれ以来星世を酷く拒絶するようになった。顔も見たくない。朝の通学時間は、少しでも星世の姿を見かけると絶対にそちらには顔を向けない様にした。
「隼人。最近おかしいよ。大丈夫」
「大丈夫だよ。期末試験もうすぐだし」
「へーっ、中学校の時勉強に興味も無かった人が。変わったね」
「勉強は学生の本文だよ」
「あははっ、隼人からそんな言葉聞くとは想像も出来なかったわ」
「それより穂香はどうなんだ」
「私は、いつも通りよ」
通学時間はなるべく穂香と話している。それ以外は参考書を読んでいる。星世が近くにいる事は分かっている。いい加減に付きまとうのは止めて欲しい。あの男が好きならそうすればいい。俺には関係ない。
もう、あれ以来、隼人は顔を合せようともしなくなった。あいつの所為。でも私が悪い。私が優柔不断だから。
三学期末の試験は大体期待通りの成績二百四十人中二十五位。穂香は二十二位。これで二年になっても二人共またAクラスを維持できる。
最近穂香の様子がおかしい。通学や学校では変わった様子はないが、あれだけ一緒に居ようと言ってくれていた土日が全く会えなくなってしまった。聞いても用事が有るからだと。
だから、二人でいる時間はほとんど無くなった。あれもしなくなってしまった。どうしたんだろう。
俺達は二年生になってゴールデンウィークを迎えようとしていた。二人で何をするか相談しようと言ってみたが反応が薄い。
「穂香。どうしたんだ。お前らしくない。全然会えなくなったじゃないか」
「………」
「黙っていても分からないよ」
家から元よりの駅を降りてから別れる前に話しかけると
「ごめんなさい」
「どうしたんだ」
「おお、穂香じゃないか。丁度駅に来たから待っていたんだ」
「えっ」
そこには明らかに社会人と分かる恰好をした男が立っていた。俺達の所へ近づいてくる。
「君が立花君か。俺は合田友三。合田建設の次期社長だ。良い時に有った。もう穂香には近づかないでくれ。こいつは俺の婚約者になった。高校を卒業したら結婚する」
「何だって。穂香。本当か」
「隼人。ごめんなさい。ごめんなさい。どうにもならなくて」
「穂香。そう言ういい方は無いだろう。今付き合っている男より俺の方がいいとベッドの上で言ったじゃないか」
「嘘よ。噓だから」
「今更嘘ついても仕方ないよ。穂香。もう君は俺のものだから」
合田という男が穂香の腰に手を回して引き寄せた。
「こういうことだから。もう穂香に声を掛けるのも今限りにしてくれ」
「………っ!」
俺は鞄を背にすると思い切り走った。涙が出てくること等構わずに走った。直ぐに家まで着くとドアを開け何も言わずに部屋に入った。
「隼人。どうしたの」
俺は、毛布を頭にかけて何も聞こえないままに思い切り泣いた。
その週は全部休んだ。親には体調が悪いと学校へ言って貰った。
「隼人。もう二日も何も食べてないわよ。出て来なさい」
親は子供の部屋に無遠慮に入って来る事はしなかった。いつもとあまりにも違う様子だからだろう。
「隼人。出てこないないなら入るぞ」
父親が、有無を言わずに入って来た。
「どうしたんだ」
親の顔を見たらまた涙が出て来てしまった。
全部話した。星世の事、穂香の事。今の気持ちも。もう学校へ行く気もしなくなっていた。
その週の土曜日。父親が俺の部屋に入って来た。
「入るぞ。隼人」
「隼人。お父さんは、お前の友達関係。いや彼女関係について、何を言う事も出来ない。それはお前が心の中で消化するものだ。だが、消化するにしてもそれを忘れさせる何かが必要だ。
この前、学校にお前の事で電話した時、担任の先生がお前の事を痛く心配していてな。成績も優秀だし、人柄も良く多くの友達を持っているお前が学校に来ないのは本人の為にもよくない。友達も心配している。
だから、学校に来れない事情があるなら相談してほしい。その事情をなるべく取り除くよう努力すると言っていた。いい先生だな。
だが、私が言いたいのは、それだけじゃない。隼人成績優秀と言うならどうだ。思い切り国立トップの大学を目指してみないか。ワンランク上の予備校に通え。金はお父さんが出してあげる。考えてくれ」
父さんは、俺の返事も聞かずに部屋を出て行った。
日曜の朝、俺は両親に月曜から学校に行く事を伝えた。それと予備校に行く事も。
―――――
次回で前半の区切りを付けます。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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