第12話 信じられない事の始まり


 暑い夏休みも過ぎて二学期の初日。

えっ、夏休みに星世と何したかって。それはもちろん、プール、夏祭り、映画、後一緒に宿題もやったよ。俺達高校生だから健全さ。…………?

 あっ、忘れてたあっちの事。それは高校生として節度ある対応で。


―――――


「星世、おはよう。暑いわね」

「美緒、おはよう。美緒少し焼けた」

「うん、ちょっと両親と海に」

「そうか。羨ましいな」

「星世は」

「うちは家族で行くのは無理。だから家でのんびりしていた」


ジーっと美緒が私を顔を見て来る。

「な、なに」

「ふふっ、嘘つきなさい。ほっぺにずーっと隼人と一緒だったと書いてあるわよ」

「えっ」


空いている右の手を頬に持って行って触ると

「ほら見なさい。羨ましいな。星世は彼が居て」

「美緒も作ればいいじゃない」

「そんなに簡単に出来たら、世の中の女の子は、苦労しないわ」


駅から学校までの通学路を美緒と一緒に歩いていると

「おはようございます。如月さん」


後ろから声が掛かった。あまり聞きたくない声だ。私は聞こえなかったかの様に無視をして歩き続けるといきなり横に並んできた。


「おはようございます。柏木さん、如月さん」

「おはようございます。高田さん」


美緒が返事をしてしまった。仕方なく

「おはようございます。高田さん」

「如月さん。いつもこの時間ですか」

「美緒、私用事を思い出した。先行くね」


「あちゃー。高田君、嫌われている訳じゃないだろうけど、朝から私達の会話に強引に入って来るのは、礼儀を逸しているよ。星世はそういうのが一番嫌いな子だから」

「そ、そうなんですか」

「そうよ。私も行くね」

私も早足で星世を追った。


ふーっ、難しいな。普通の子なら問題ないのになあ。


「幸助。止めとけ。俺も思うが今のはタイミングが悪い。二学期の一日目の朝、女の子同士で話をしているところに割り込むのは、男から見てもどうかと思うぞ」

「そうか。夏休み開けたら積極的に行こうと思ったが裏目に出たか」

「考えが無さ過ぎだよ。本当に如月さんをあの男から奪い取るならもっと考えろ。今のお前じゃ、箸にも棒にもかからない」

「考えろって言われても」

「他にも方法はいくらでもあるだろう」



「もう、朝から気分悪い」

ぷりぷりしながら私は教室に入って行った。

「おはよう如月さん」


一学期の内に仲良くなったクラスメイトが声を掛けてくれる。私は顔を外向けに直ぐに直すと

「おはようございます」

「夏休みどうしてたの」

「ええまあ、適当にしていました」


「如月さん。口固いな。友達と海とか山とか行かなかったの」

「家の仕事の関係で、どこにも行っていません。勉強とか図書館で本を読んでいました」

本当のことを言う必要もないし。


「そうなんだ。私は、友達と海に行った。夏祭りとかも行ったよ。如月さん、仲のいい男の子いたじゃない。背の高い。あの子とは何かしなかったの」

「何かって」

「一緒に遊ぶとか」

「ああ、一度一緒に宿題をしました。その位です」

「はぁー。なんか、夏休み過ぎたら話題豊富かなと思ったんだけどな」

この子は何を私から聞きたいのだろう。


チャイムが鳴り担任の先生が入って来た。中年の女性の先生だ。ちょっと厳しい。


「皆さん。夏休みは元気に過ごせたようですね。一人の欠席者もなく良かったです。では早速、夏休み宿題を提出して下さい。ペーパー類は後ろの席の人から順次前の人に回す形で回収するように。前の人は全部集まったら、私の所へ持って来て下さい」


私は、如月さんから回された宿題を見た。綺麗に完璧に書いてある。凄いわと思いながら、自分の分をその上に置いて前の人に回した。


あいつから、何か話題になる様な事を聞き出せと言われているけど、鉄壁なガードだ。実際は、色々していたのだろうけど、何も話してくれない。何とか引き出さないと。


キンコーンカンコーン


午前中の授業と言ってもほとんどの教科は、夏休みの宿題の収集や確認でまともな勉強は一つもなかった。今日は午前中で終わり。隼人に約束しておけば良かったな。


そうだ。私は、急いでトイレに行くと持って来ても学校では使用禁止のスマホで隼人に連絡を取った。


『隼人、今日何時に終わる。私もう終わった』

直ぐに返事が来た。

『終わって、今から学校を出る』

『じゃあ、待ち合わせしてお昼一緒に食べない』

『いいよ。一時にいつものとこで』

私は猫のOKマークを送信して、直ぐにスマホをポケットに入れて急いで席に戻ろうとした。


女子トイレから出てすぐの廊下に高田が立っていた。

「如月さん。少し話できませんか」

「急いでいます」

「すこしだけでも」

と言って急に私の腕を掴んだ。

「痛ーい」

大きな声で叫ぶと、まだ帰っていない生徒が私達の方を見ている。

「止めて下さい。これ以上すると先生に言いますよ」

「ちっ」


仕方ないと言う顔でその場を去っていく高田の後姿を見ながら

「サイテー」

と背中に言ってやった。

私は急いで席に戻って鞄を取るとすぐに教室を出た。


「幸助。もっとうまくやりなよ。何とか話題を聞き出すからさ。今のはだめだよ。あれで如月さん完全に幸助の事、要注意人物にしか見なくなったよ」

「強硬手段に出るか」

「まだ早いよ。二学期は始まったばかりだし」

「そうか。俺達も帰るか。…寄るか」

「今日は止めとく。ところで一郎は」

「ああ、バレーボールに決めたらしくてな。今日、練習見に行っている」


「そっか。幸助は部活やらないの」

「まあ、バスケでもいいかなと思っている。もう少し身長伸びるし」

「バスケやったことないでしょ」

「箔を付けるためだよ。あんなの背だけだろ」

「甘すぎない。まあいいわ。また明日ね」



―――――


高田幸助。要注意人物ですね。

彼と一緒に話していた女の子誰なんでしょう。何となく…………。



次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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