第7話 新しい生活


 俺は、ご両親のいない時間に誘われ、星世の家に遊びに行った。

いつものように俺は床に座って話をしている。さすがに女の子のベッドは抵抗が有って座れない。

ただ、いつもと違って星世がそわそわしている。


「星世、どうしたの。何か落着かないみたいだけど」

「う、うん。何でもない。それよりこれ見て」


立ち上がって、彼女の持っている本を覗き込む様に見ると

「横に座ってよ」

「でも」

「いいから」

と言って、ポンポンと自分の横のベッドを叩いた。

 

 座ってみるととても柔らかくて、少し沈み込む位だ。男が女の子のベッドの上に座るなんていいのかなと思いながらゆっくりとちょっと離れて座る。


「もっとこっち」


 俺が動かないでいるとすすっと側に寄って来て、本を閉じ俺の肩に寄りかかって来た。そして目を閉じた。


…………。



「良かったの」

「うん。今日はそう考えていたから」

「そうか。体大丈夫。とても痛そうだったけど」

「少しだけね」


 二人でベッドに横になりながら星世が、唇を合わせて来た。優しく背中を抱いてあげる。彼女も僕の背中に手を回した。

どの位時間が経ったか分からないけど、窓の外が暗くなって来た。



 星世の輝くほどに手入れされた髪の毛を優しく手で撫でると顔を僕の胸に付けて来た。


「そろそろ、帰らないと」

「まだ、みんな帰って来るまで時間ある」

「でも………。じゃあもう少しだけこのまま」


隼人の胸に顔を付けて目を瞑るととても落ち着く。嬉しい。


「星世。もうそろそろ」

「うーん。仕方ないか。ねえ、隼人。今更だけど、学校でも一緒にいたい」

「うん、いいよ。でも星世に迷惑掛からないか。俺はいいけど」

「いいよ。今更だし。もう学校で我慢しなくても良いかなって感じ」

「明日から朝迎えに来ようか」

「それはいい。大回りでしょ。帰りだけ一緒に帰って」

「そうしようか」



 月曜日、十一月も半ばを過ぎるこの時期になるとさすがに寒くなる。鞄片手に何とか教室まで辿り着くと星世はもう席について柏木さんと話をしていた。


「おはよ」

「おはよ」

俺はクラスの友達に挨拶をしながら席に着くと星世が俺の席にやって来た。


「おはよ。隼人」

「おはよ。星世」


「「「え、えっ、えーっ」」」

「「「どっ、どういう事。今二人名前呼びしたよね」」」


俺の前に座っている女の子がこっちを振り向いて

「立花君と如月さんって付き合っているの」

「ああ」

「はい」


 その言葉に穂香が振り向いて俺…ではなく星世を睨みつけている。手は握り拳。今にも飛びつきそうな感じだ。今度は俺の方を向くと


「隼人。どういう事」

「いや、どういう事って」

「いつからなのよ」

「うーん。十月位から」

「えっ、もう一ヶ月も前から」

「はい、そうです」

「……っ!」


穂香はいきなり教室を飛び出した。

「…………」


いつの間に来たのか柏木さんが、

「仕方ないよね。どう見ても鈴木さん、立花君の事好きなの見え見えだったから」



 私はトイレに逃げ込んだ。

分かっていたのに。高校になれば隼人と居る時間が長くなる。如月さんと隼人は遠のく。

 隼人を私に振向かせる時間は、これからいっぱいある。だから二人が付き合っても見ていればいい。そう思っていた。

 でも現実を突きつけられるとやっぱりきつい。

涙が少しずつ出て来た。泣いてはいけないと分かっているでも、少しだけ泣きたい。


 穂香は、目を腫らして、一限目の始まりのチャイムまでには席に戻ったが、俺の方を振り向くことは無かった。



 季節はもうクリスマスを迎えていた。

 中学一年の時と二年の時、クリスマスと初詣は穂香と一緒だった。付き合っているとかじゃなくて、仲のいい友達という関係で。


 でも今年のクリスマスは星世と一緒だ。少しだけ、穂香の事が気になった。

当然初詣も星世と一緒だろう。


 あれから穂香とは口をきいていない。でも仕方ないと思った。いずれこうなる事は分かっていたから。



それから時間が過ぎ、卒業式も終わり帰宅の時間。


「隼人、一緒に帰ろ」

「うん」



いつものように星世と手を繋ぎながら歩いていると


「隼人。もうこうして一緒に帰るの今日が最後だね」

「うん、でも四月からは、朝の通学時間は一緒じゃないか」

「それはそうだけどやっぱり寂しいよ」

「そうだね。ところで春休みはどうするの」

「うーん。隼人は」

「いや。俺が聞いている」

「隼人教えて」

「うーん、星世と一緒に居たいけど」

「じゃあ、そうしようか。まだ一ヶ月もあるから」

「そうだね」


…………。



 四月になり、星世は長尾高校へ、俺は大北高校に入学した。穂香は俺と同じ大北高校。中田は大里工業高校に行った。


 何となくバラバラになったけど、星世とは毎日スマホで連絡取っていたし、朝は途中まで通学電車は一緒だったので、寂しくは無かったが、デートする時間はめっきり減った。

学校の帰りに会えなくなったからだ。


 それでも俺はこの時、まだ高校三年間もずっと星世とこの関係で居れると思っていた。


―――――


次回から高校生活が始まります。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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