(2)




「また黙り込む気?質問に答えなさいよ」




「た、確かに…ちょっと長引いたけど。その――」





冷静になれ、落ち着くんだ!




昨日、この女たちに言ったことを思い返す。




そうだ、あたしは遠藤虎男と高橋来登から目をつけられている…




そういう設定だった。





「…時間はかかったけど、最終的には丸くおさまったと思う」





多分ね、多分だけど、こう言うしかない。




あたしは高校一有名な不良たちに恨まれていたけど、




全ては話し合いによって解決した。




そして、今後一切、お互いに関わらないということを約束したのだ。





「遠藤虎男と高橋来登からは、ちゃんと許してもらえたし。


もう二度と関わらないって誓い合った。


だから、大丈夫!」





あたしは、単に目を付けられていただけ。




それだけの理由で、あの男たちと話し合うことを余儀なくされたのだ。




ですが、ご安心を…ちゃんと解決しましたから。




あたしとあの男たちが関わることは、もう絶対にない。




だから、あたしのことなんか気にせず、




どうぞご自由にファン活動を続けてくださいな。




きっと、桐島麗華と岡本杏奈も、これで安心してくれるはずだけど…





「……」





あれ?




なぜか、二人の表情は変わらない。




というより、さっきよりも硬くなったような。




まだ、何か不満があるの?




こうなったら、言うしかない!




この女たちを、何としても納得させなければ。





「あのさ…、あたし、イケヤンには全く興味ないんだ。


だから、どちらかというとファンの女子たちを応援するし、


邪魔する気とかさらさらないから。


信じてくれて大丈…うぐっ!」





親指を立てた瞬間、




桐島麗華と岡本杏奈から顔面を押さえつけられた。




え、急に何!?




本当に何なの、この女たち!!




必死に振り払おうとしていると、





「へぇ、興味ねぇんだ。それは残念だなあ」





背後から、聞き覚えがあるような無いような、男の声。




振り向くと、そこにいたのは――





「ひっ…」





ピンクの男の後ろに、金と銀と赤の男。




この組み合わせ、あの人たちしかいないじゃん。




恐怖を覚えた瞬間…





「キャ――――ッ!!!」





殺人でも起きたかのような、凄まじい悲鳴。




これは、正式には歓声である。




周囲の、特に女子たちが、ワイワイ騒ぎだした。





「おはよーう、亜輝くん!」



「虎~、こっち向いて!」



「純成さん、カッコいいー!」



「お会いできて光栄です、敬悟様!」





あちこちから沸き上がる、それぞれのファンたちの声。




もはや、宗教ですね。




改めてドン引きするわ…。




中谷美蝶のオーラと同じくらい、このイケヤン騒ぎには未だ慣れない。




きっと、一生、慣れることはないだろう。




ところで、そろそろこの女たち(桐島麗華&岡本杏奈)、放してほしいんだけど。




イケヤンに見入っているせいか、あたしをグイグイ押してくるんだ。




どうやらイケヤンマジックでボーッとしているようなので、




その隙を見て、あたしは二人の手を思い切り振り払ってやった。




そして、その後ろにサッと身を隠す。




イケヤンなんか見たくないし、見られたくもない。




さっさと、どこかへ行っちまえ!




そう念じていると…。





「お前ら、朝からうるせぇんだよ!黙らねぇと、ぶっ殺すぞぉ!」





粗暴で荒っぽい怒鳴り声が、廊下中に響き渡った。




こんなことを言うのは…遠藤虎男しかいない。




アンタの方こそ、朝からうるさいよ!




そう思ったのは、あたしだけではないらしい。





「やだ…やっぱり、虎男だけはハズレよね」




「ほんと、まるで野犬みたい。イケヤンの品格が落ちちゃう」




「てか、なんでここにいるの?虎男は二年でしょ」




「オイ、そんなの俺の勝手だろうが。文句があるなら出てこいや!」





周囲をギロッと睨みつける、赤い不良。




その恐ろしさに、誰もが黙り込んだ。




凄いパワー、さすがは人殺しとも噂されるヤンキーね。




進真にも、この十分の一ほどでいいから、強さがあれば…。





「ったく、ごめんねぇ。朝から空気を掻き乱しちゃって!」





このウザい話し方は…金城亜輝しかいない。




まるで、手に負えない息子の母親みたいだ。




クスクスと笑い声が聞こえてきた。





「毎日、こうやって歓迎してくれて、ありがと!


みんなからの声援が、俺の元気の源だよ」





まさに、アイドル気取りってやつだ。




この時点で引いているのに、金城亜輝という男は…





「てことで、俺からもサービス!受け取ってくれよ♡」





そう言って、投げキスを送った。




「キャアアア」と悲鳴が沸き起こる。




あたしは、違った意味で悲鳴を上げた。




うっわ、キモ。




ナルシストも、ここまできたら終わりだ。




正直、気分が悪い。




でも、それを通り越して、逆に笑えてきた。




あたしは必死に、込み上げてくる笑いを抑え込んだ。




その時だ。





「いやー、これが普通だよ。


あのメガネちゃんが異常だっただけでさ」





メガネちゃんって誰、と女子たちが話し合いだした。




周囲を見渡してみるが、自分も含めてメガネを掛けている者は見当たらない。




そう、このあたし以外は、誰もメガネを身に付けていないのだ。




…きっと、あたしのことだろう。




そう思わざるを得ない状況だ。




けれど、なぜ?




昨日、彼らとの縁は切れたはず。




それなのに、どうして……




彼らは、ここで意味深な態度を取ってくるの?




早く、どっか行ってよ!




パニック状態に陥りながら、ふと気が付いた。




桐島麗華と岡本杏奈、やたら静かだな…。




顔を覗かせてみると、二人とも両手を組み合わせているではないか!




まるで、神に祈りを捧げるシスターみたい。




…これは、ファンの中でも重症ね。




ファンすぎるあまり、推しの前では静かになるなんて…




今こそ、アピールしろよ!




呆れて溜め息も出ないでいると、




彼ら――イケヤンの四名が、こちらに近づいてくるのが分かった。




ウソ、ウソ!




あたしは心の中で叫んだ。




お願いだから、こっちに来ないで!




あっちへ行け!




グッバイ、イケヤン!!




…しかし。





「……」





目の前に、イケヤンの四人がやって来た。




なんで、なんで…!?




どういうこと!!




絶体絶命の状況だけど、懸命に気持ちを立て直す。




大丈夫よ、きっとここにいれば…あっちからは見えないはず。




このまま、じっとしていれば…。





「ど、どうかしましたか?」





桐島麗華が緊張した様子で尋ねた。




まるで別人のような声……一瞬、誰かと思ったわ!




女の豹変ぶりに驚いていると、チャリンという音が聞こえた。





「あっ…鍵?」





桐島麗華と岡本杏奈の声が重なった。




…鍵?




あ、まさか。





「ああ、八組のだ」





案の定、(おそらく)高橋敬悟が言った。





「昨日、返そうと思いながら、忘れちまってな…


そのまま持ち帰ったんだ。


申し訳ねぇ限りだ」





ただのドジじゃん。




やっぱり、アンタたちが犯人だったのね!




あたしは歯ぎしりをした。




無責任な奴ら。




イケヤンのこと、一生恨んでやる…!





「あ、皆さんが持ってたんですね。


…わたしが預かりますよ?」





桐島麗華が、蚊の鳴くような声で言った。




すると、岡本杏奈も横から元気よく言った。





「ちょうど探していたところだったので、助かりました!


ほんとにありがとうございます!」





桐島麗華はぶりっ子で、岡本杏奈は元気キャラで攻めるってわけね。




そんなことを分析していると、





「お前らの後ろにいる、そいつと話がしたい。


…悪いが、どいてくれねぇか」





え?




今…、何て?




どうか、聞き間違いでありますように。




でも、絶対、今、確実に言ったよね?




”後ろにいるそいつ”って…まさか、あたしのこと?




いやいや、そんなわけないよね!




だって、ただ鍵を返しに来ただけでしょ?




昨日、話は終わったはずだし…。




と、思っていたら、桐島麗華と岡本杏奈がこちらを振り返った。




目が…怖い!




あたしは、目の前の壁を見つめた(現実逃避)。





「…原口さんのことですか?」





桐島麗華が消え入りそうな声で尋ねた。




すると、(おそらく)遠藤虎男が答えた。





「そうだ、そうだ。原口夢果、隠れてねぇで出てこいや」





終わった――――!!!




フルネームで指名、そして…また呼び出しですか?




勘弁して、頼むから!




あたしの残り少ない高校生活が―――!!!(泣)




絶叫しながら、そばにあったスカートを掴んだ。




岡本杏奈が、またこちらを向いた。





「…何!?」





小声で怒鳴られた。




あたしも、小声で対応する。





「あたし、吐きそう…。だから、帰ってもらって?」




「ハァ?…自分で言いなさいよ、そんなの」




「無理。ほんとに吐きそ…」




「なぁに、ゴタゴタやってんだー?


原口夢果、お前、亀みてぇにノロいな。さっさしろよ」





…亀ですって?




アンタは虎でしょ、この赤頭!




心の中では言い返すも、体は拒否反応で動かない。




…壁さん、どうか助けて。




どうしようもなく、座ったまま溜め息を吐いていると――




チャリン。




視界に、鍵が入り込んできた。




それを手にしている金髪の男が、低い声で言う。





「すまねぇな、返すのが遅れて」




「…いいえ、」





あたしは答えた。





「構わないので、早く誰かに渡してください。みんな、待ってますから」





すると…





「受け取ってほしい、お前に」





は?




別に、誰でもいいでしょ。




空気読めよ!




イライラしてきた瞬間、





「とりあえず、立てよ。メガネの原口夢果ちゃん!」





金城亜輝によって、さらに苛立ち…。




あたしは、すくっと立ち上がった。




そして、高橋敬悟の顔も見ることなく、鍵をサッと受け取った。




桐島麗華か岡本杏奈に渡そうと思ったけど、二人から言われた。





「開けて!」





ということで、




あたしが鍵を開け、ついに三年八組の教室が開かれた。




生徒たちがぞろぞろと入っていく中、




あたしだけは廊下に残り、イケヤンの四人に囲まれることになった。




なんで、こんなことになったの!?




今日の最悪度、えげつないわ…。





「おい、聞いてるか?」





そう言ってきたのは、高橋敬悟。




いや、聞いていませんでした。




でも、何を言われているか、大体分かる。




鍵を返すのを忘れていて悪かったということ、そして…





「今、誰かいねぇだろ。気付いてるか?」





遠藤虎男が言ってきた。




誰がいないかって?




そんなの、もちろん、分かっている。





「…茶色」





それだけ答えると、イケヤンの四人は一度頷いた。




しかし、すぐに…





「オイ!髪の色じゃなくて、名前で答えろや!」





そう文句を言ってきた。




あー、面倒くさい。




早く、あたしも教室に入りたいんですけど。





「朝は不機嫌なタイプ?」





金城亜輝が尋ねてきた。





「昨日、話したのに。また振り出しに戻っちゃった感じ?」





そうよ、人見知りにはよくあること。




でも、悪いのはアンタたちだからね。




昨日交わした約束を破って、こんな風に話しかけてきたんだから!





「あらら、キレちゃってるよ」





金城亜輝は察した。





「確かに、もう関わらないって約束したもんな。


でもね、今日こうして話しかけたのには、俺らなりの事情があるんだよ。


聞いてほしいんだけど、いい?」





嫌だって言ったら、聞いてくれるの?




絶対ないよね。




だって、この人たち、話の通じない不良なんだもの!




それに、この状況では、拒否するなんて手段は存在しないも同然。




桐島麗華と岡本杏奈…いや、それだけじゃない。




あたし、今、この高校中の女子たちを敵に回しているんだ。




この後、どんな目に遭うのやら…。





「今日、来登は休みだ」





突然、高橋敬悟が言った。





「昨日、無理して学校に来たからな…ガタッときたんだろう。


悪化するといけねぇから、今日は家で休ませることにしたんだ」





…沈黙。




え、休み?




昨日は元気だったのに、どうしてだろう。




学校に来れないくらいだから、けっこう酷いのかな?




頭の中ではいろいろなことが浮かんでいるけど、口には出さない。




聞いて良いことなのか分からないし、少しでも隙を見せたら何か言われそうだから。




すると、金城亜輝が溜め息交じりに笑った。





「何も言わないんだ」





呆れたような言い方。




…ハァ?




何よ、そっちが勝手に話しかけてきたくせに。





「少しも心配とかねぇの?」





いやいや、そんな無慈悲な人間じゃないよ、あたしは。




ただ…これ以上、アンタたちと関わりたくないだけ。




それに、あたしが心配しても、どうもならないでしょ。





「自分が心配しても、どうもならねぇって思ってる?」





…透視された。




驚いて顔を上げた瞬間、今日初めてイケヤンと目が合った。




げっ、やっちまった!





「あれ?」





金城亜輝が、あたしの顔をジロジロ見ながら言った。





「昨日より、ちょっとブスになったね。もしや、寝不足とか?」





腹が立つより先に、驚かされた。




まさか、コイツ、超能力でも持ってるの?




…あ、ダメダメ、惑わされちゃ。




金城亜輝は、ただのチャラ男です!





「えー…。ブスって言われても無視?


やっぱ、珍しいタイプの女だなぁ」





どうぞ、好きなように言ってください。




あたし、決めた…ここは無視作戦でいくぞ!!




人間って、無視が一番効くでしょ?




でしょでしょ?(ウザい)





「でも、諦めない」





金城亜輝がそう宣言した瞬間、





「バカだな、お前。こうすりゃ簡単だろ」





急に両肩を掴まれた。




そして…ブンブンブンブン!




もの凄い勢いで、前後に揺すられた。





「〇×△☆◎×〇☆△×…!!」





おい、遠藤虎男ッ!




お前は鬼か!!




そう思っていると、





「虎男、よせ。殺す気か」





高橋敬悟が止めに入ってくれた…当然だけど。




気分が悪い、吐きそう。





「ウエ…、ゲホゲホ……」




「ほらな、喋った。俺様の勝利だ」





喋ったんじゃなくて、吐き気と咳だよ!




なんてヤツだ…一応、あたしだって女子なのに。




思わず睨みつけていると、鬼(遠藤虎男)が言ってきた。





「原口夢果、ナメんじゃねぇぞ…俺は最強の男だ。


無視ばっかしてねぇで、ちゃんと会話をしようじゃねぇか。


次、無視したら、その辺に埋めてやんぞ」





…無視作戦、撤回。




ああ、もう!




この男たちが相手となると、計画がズレてしまう!




どうしよう、どうするべきか。




今、教室に駆け込もうか?




…いや、そんなことしたら、埋められる。





「はぁ」





大きな溜め息が出た。




イケヤンの四人が、あたしに注目する。





「…言っとくけどさ、来登は約束を守ろうとしてたんだぜ」





金城亜輝が言った。





「これ以上、お前に嫌われたくないからって。


俺たちにも、”絶対、余計なことすんな”って言ってたんだ。


でも、めちゃくちゃ寂しそうな顔しててさ…。


俺たち四人で、お前にもう一度話してみようってことになったわけ」





何が、”~わけ”よ。




さっぱり意味が分からない!




そもそも、高橋来登が分からないんだ。




嫌われたくないとか、寂しそうとか……Whyなぜ





「二度と関わるなって言われて、かなりショックだったんだろうな。


多分、そのストレスで体調を崩したんだ…可哀想に」





…え。




そんなことで?




ちょっと繊細すぎない?




けっこう図太そうだったけどね??





「…お前」




「!?」





急に襟元を掴まれ、見上げると…。





「また無視する気か?マジで埋めてやろうか」





遠藤虎男、物騒すぎる!




この目…、あたしを獲物と思ってるんじゃ?





「何か言うことはねぇのかっつってんだよ」





…何を言えっていうの?




とにかく、黙っているのが気に入らないみたい。




じゃあ、言ってやろうじゃない!





「とりあえず、放してください。ちゃんと言いますから…」





すると、意外にも、すんなり放してくれた。




まさかの素直。





「分かればいいんだよ」





と、遠藤虎男は言った。





「俺だって、こんなことはしたくねぇからな。


お前は珍しく無理じゃねぇ他人だし…


さっさと話して済ませたいところだ」





”無理じゃない他人”って言われて、喜ぶ人、いる?




まあ、この男の中では、重要なことなんだろうね。




それは良しとして…、




昨日みたいに長々ならないように話さないと。




遠藤虎男の言う通り、さっさと済ませられるように!




あたしは口を開いた。





「昨日の言い方は…確かに、良くはなかったと思います。


もしショックが原因で具合が悪くなったなら、心から謝ります。


本当にすみませんでした」





もう終わったことだと思っていたのに…、




こんな風に頭を下げることになるとはね。




内心でそんなことを思いながら、続ける。





「ただ…今も、気持ちは変わりません。


イケヤンの皆さんとは、関わりたく…」




「黙れ」




「…え?」





ちょっ、何…!




途中で遮ってきたのは、新木純成だ。




今回は一言も突き刺すようなことを言われずに済むかと思ったのに。





「…その単語を口に出すな。虫唾が走る」





そう言って、尖った人差し指を向けてきた。





「次、言ったら…その頭を撃ち抜いてやる」




「……」





ちょっと待って。




これは、もはや不良を超えて、ただの鬼畜なのでは?




その単語って、きっと「イケヤン」のことだろうけど。




あたし、多分、本人たちの前では言ったことない!




ただ、今さっきは口が滑ったの!




それなのに、次言ったら頭を撃ち抜くって?




ひどい、ひどすぎる!!





「おい、大丈夫か、お前。顔が青いぞ」





横から遠藤虎男が言ってきた。




アンタ、笑ってるじゃない!




見てみると、金城亜輝も手で口を押さえていた。




…やっぱり、同レベルの仲間ね。




その中で、唯一、高橋敬悟だけは良心が残っているらしい。





「大丈夫だ、本当に撃ち抜いたりはしねぇよ。


ただ、俺らみんな、その呼ばれ方が不本意極まりねぇんだ。


だから、もう言わねぇようにしてほしい。いいか?」




「…でも、」




「純成を敵に回さねぇ方が身の為だ。女にも子どもにも容赦がねぇからな」





高橋敬悟は、穏やかな笑みを浮かべた。




話の内容に合わない穏やかさ。




昨日はこの優しい微笑みに感激したものだけど、今はそんなことない。




この男たち…サイコパス集団だ。




約束は破るし、こうして脅しては笑うんだから!




ていうか、「イケヤン」という通称が気に入らないっていうのは…




今さらかって感じだし、言うなら最初に言いだした人に言ってよ!




今になって、変えたりなんかするもんか。




あたしは、ずっと、イケヤンと呼び続けてみせる!(※心の中で)





「で、何だったっけ。


俺らと関わりたくないって言おうとした?」





金城亜輝の確認に、あたしは頷いた。




分かっている…関わりたくないなんて、普通に酷いってこと。




でも、もう昨日から言っていることだし!




意志が変わらないってことを伝えなくちゃ。




あたしとイケヤンの共通点は、同じ人間であるってことだけなのだ!





「…昨日、聞こうと思ってたんだけど――」





金城亜輝は何を言う気なのか。





「俺らと関わりたくない理由って、女子たちからの目が気になるから?」




「……」





いきなり、爆弾を落としてきたね。




金城亜輝め…やっぱり、ただのチャラ男ではないようだ。





「その反応は、当たりだな?うわー、やっぱ…」




「いいえ。外れです」





いや、当たりなんだけど。




言えっこないし、あたしが個人的に関わりたくないということもある。




なんとか、誤魔化すぞ!




ああ、結局、また時間がかかりそうだ…。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る