第137話赤い髪の少女




アイは、森の木とすれすれに飛行し続けた。

シルバードラゴンに見つからないように、低空飛行をし続けている。

グフは俺達と一緒に歩き続けている。


『主、こっちの方向で間違いありませぬ』


俺達は、進行する邪魔な草木を切り払い、進んでいた。

木と木の間から開けた場所が見えてきた。



ようやくバべルの塔が見えた。

しかし、おかしな現象に俺は驚いていた。

アイやグフに、塔の方角を聞いていたので、今まで気付かなかった。


初めて見た時は、壊れた7階程の遺跡であったのに、いつの間にか30階程のビルの高さまで伸びている。

アイとグフは、そんな所が抜けている。

変化があれば、普通に知らせるのが常識なのに。


それにしても、見事な塔だ。

地上にあれば、観光地になって大勢の観光客を呼び寄せるだろう。


「ギャーウ」


その塔の上を、シルバードラゴンが飛び回っている。

この森を飛び出て戦うか?

もしかして、シルバードラゴンは知っている可能性もある。


シルバードラゴン以外の魔物は、見当たらない。


『親分、行かないのか?』


『ライム、あのドラゴンが強敵だから、親分は悩んでいるんだよ』


『そうだ、そうだ』


『ここは、当たって砕けろだよ』


『砕けたらダメだろう』


従魔らは、好き勝手なことを言っている。


「はやく戦いなさい」


「誰だ!」


振返ると、いつの間にか赤い髪の長い少女が、赤い目で俺らを見ていた。

敵意は感じられないが、敵に間違いない。


「あんたは、何者だ」


「わたしは、わたしでしかないわよ」


「・・・・・・」


「黙ってしまったようね、あいつが面白い奴を見つけたと言うものだから、興味を持った者でいいかしら」


すると、シルバードラゴンの相棒なのか?すると、とんでもない実力者か・・・


『あんたは強いのか?』


「わたしは、強いわよ」


「あなたに聞きたい、この場で俺達を殺すのか?」


「あの塔に向かうなら、殺すわ」


しっかりと殺すと言った。その言葉には、何のためらいも感情もない。


「わたしは嬉しいの、初めてあいつ以外と話せて、何度もこんな会話がしたいと願ってたの」


『あなたは、小さいけどドラゴンより強いのか?』


「分かったわ。わたしの姿を見せて上げる」


少女は、ふわりと浮き上がり、森を出て塔の間の広い所に降り立った。

すると、しだいに体が変化して、赤いドラゴンへと変化していた。


「どう、これがわたしの正体よ」


まさにレッドドラゴンと言うべきか、ウロコ自体がキラキラと輝き、神々しい姿だった。



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