第131話金
玄関の呼び鈴が、何度も煩く鳴っている。
時計を見ると、0時44分。
俺が部屋から出てくると、瞳も別の部屋から出てきた。
夫婦になっても、俺の活動が不定期な為に、瞳を起こさない配慮で別室で寝ていた。
今日も、5時頃にはダンジョンへ行く予定だった。
「誰かしら、こんなに遅くに・・・」
「俺が出るから、寝ていていいぞ」
「そんなことは出来ないでしょ。わたしも気になるし・・・」
誰だろうと、モニターを見ると和也だった。
「和也だ・・・なんで来たのかな?」
「ホントなの・・・」
ドアの鍵を解除して、ドアを開けた。
「今、何時だと思ってるんだ!」
「そんなことより重大な話があるんだ」
あわただしくリビングにやってくると、「水をくれ」と言ってきた。
「はい、水よ」
奪うようにコップを取って、一気に飲み尽くした。
「なんだか、めちゃくちゃ美味いな」
「ただの水だよ。それより話ってなんなんだ」
「温泉近くの金山、埋蔵量が半端ない量だと判明した。それだけじゃ無いぞ。金の画期的な取り出し方法が見つかったんだ」
「それで、こんな遅くにきた理由は」
「それだがな・・・お前に頼まれたので研究員に、金の取り出し方法を研究させたんだ。その研究員がバカな方法を試した結果、ドンピシャに成功したんだ。それで、埋蔵量の調査を依頼した会社に電話したら、既に送ったって言うので埋蔵量だけでも教えてくれって言ったら、「電話のみで貴重な情報を、お伝えできません」って断られた。必死に探し回ってこんな時間になった」
「それって、お前の責任だよな。郵便物を確認もしないまま山積みにしていて、どこかの書類にでも混じらせたか?」
「何故、分かった。スキルを使ったのか?」
「スキルを使わなくても分かるよ。それで埋蔵量はどれくらいだ」
「約5万tだ。世界1位のオーストラリアの約9千8百tの5倍も埋蔵量があるんだ」
「5万tと言われてもピンとこないな」
「信じられない奴だな。今、地中に埋まっている埋蔵量が5万tだと考えられているんだぞ」
「すると同じ量だと言いたいのか?」
「当り前だ。具体的に言えば、競技用プールで約1杯分だ」
「なんだか少ない気がするな」
「少ないって、今までの採掘量が約3.8杯分の量から考えても、凄い量だと思わないのか?」
なんと、和也の講義を長い時間を掛けて聞かされる羽目になった。
窓から外の明かりが差し込んできていた。
なんでも、今の技術では採掘できない金や採掘量に対してコストが見合わない金は、[資源量]と呼ばれ[埋蔵量]と呼ばれないらしい。
しかし、画期的な取り出し方法が[資源量]を[埋蔵量]に変えられる。
俺が多々良ダンジョンで手に入れた超磁石が、魔石に触れさせる事で金がくっつくらしい。
本来は、金は磁石に付かない。銀や銅や
勿論、銀や銅や錫でも試したが、反応しない。
金のみ異常に反応する事が分かった。
しかも、時間を掛けると、金鉱石のままでも超磁石の表面に金の塊が徐々に付くらしい。
それも多々良産の超磁石でないと、反応はしないことも分かっていた。
そこから推理して、長い年月を掛けて、黒のダンジョンが金を引き寄せたのかも知れない。
そして何らかの理由で、あの山に溜まった。
ダンジョンの出入り口がずれたのか?
それとも違う理由か?色々な推測が考えられる。
そして和也の考えでは、海水にも0.0005PPMという非常に薄い濃度で、金が含まれている。
この画期的な方法を使えば、海水からも金が取れると睨んでいる。
地球の海の量から考えて、50億tもの金が海水から取れる考えになる。
和也は、新たな事業を立ち上げようと、俺と瞳に話していた。
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