第125話意思




俺は、暗くなるまで浜辺に座り、ただ海を見ていた。

波の音だけが心地よく、もんもんとした気持ちを静めてくれている。

あれ程に人が居て散歩していたのに、2人の男女だけが歩いていた。


迎撃ミサイルが成功すれば、核弾頭ミサイルに使われるだろと考えてしまう。

俺も大量殺人に関与してしまったと、罪の意識を考えてしまう。

イヤ、核弾頭ミサイルは抑止力よくしりょくだと考えよう。


おもむろに立ち上がり、尻に付いた砂をはたきながら「我が家に帰るか?」




俺は、我が家に帰って、瞳に迎撃ミサイルの事を話していた。

俺のいた堪らない気持ちを、少しでも理解して欲しかった。


「あなたは何故、罪を感じるか考えてみて」


何故、突き放すように言うのだ。

俺は瞳の顔を見続けた。


「わたしは、あなたが人殺しをしたことが、恐かった。だけど改めて考えたのよ」


「何を・・・」


「わたしが魔物を倒した時に、何も罪悪感を感じなかった。あなたも知っているでしょ。わたしが虫も殺せない性格を・・・」


「そう言えばそうだ」


「だけど、地上で人殺しは無理だと思うの。あなたとわたしの差は何だと思う」


「レベルの差か?」


「そうなのよ。何故そうなのかと考えて、わたしはある仮説を考えたの」


「もったいぶらないで、早く話してくれ」


「ダンジョンの意思がそうさせているのよ。あなたは人を殺して更に強くなった。それをさせたのがダンジョンの意思なのよ。あなたはその言葉を聴いている筈」


「頭に聴こえる声が、そうだと言うのか?」


ダンジョンに意思があったのか?

そう考えれば、そうなのかも知れない。あの声には逆らえない強さがあった。


「今回の迎撃ミサイルの件だけど、あなたの強さには直結する物でなかった。だから罪悪感を感じるのよ。ダンジョンにとってどうでも良い事なのね」


「何故、ダンジョンがそうさせるんだ!」


「それは、わたしにも分からない・・・」


今考えれば、率先して殺しの場へ向かうような行動をしていた。

何も悪い感情も抱かずに、そんなことをしていた。


「瞳、俺はどうすれば良い」


「あなたは、わたしに答えを求めるのでなく、あなた自身が考えて答えを求めるしかないのよ。ごめんなさい・・・」


「それなら何故、早く教えてくれなかったんだ」


「それはあくまでも仮説で、あなた自身が罪悪感を感じたことで、確証が得られたのよ」




キーとピーが、俺が立ち尽くす足元に来ていた。


『親分、どうしたの』


『おいらが相談にのるよ』


俺は、キーとピーを抱きかかえて、ジーッとしていた。


『え!しょっぱい雨が・・・』


いつしか俺の周りには、従魔が集まり見守ってくれていた。

そして、最後に瞳が俺を包むように抱いていた。



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