第124話和也の説得



我が家に帰えると、「あなた、和也から至急連絡してくれって」


「用件は聞いているのか?」


「言わなかったわ。何か気になるの・・・」


「何の用なのか、嫌な予感がしただけだよ」



スマホで連絡をしてみた。


『ただいま、電話に出ることができません。ピーと言う音の後に、お名前とご用件をお話ください。』


「誠だ!なんだよ、至急連絡してくれって言っているわりに、留守電か?」


その言葉を残して切っていた。

何だか無性に腹が立ってきた。



3時間後にようやく和也から掛かってきた。

詳しい内容は、電話で話せないの一点張りで、18時に第2猪野研究所で会う事になった。




俺は早くから、第2猪野研究所の会議室で待っていた。

18時20分にようやく和也が、会議室に入ってきた。


「すまなかった。俺から呼び出しておきながら」


「用件を早く言ってくれ。イヤな話は聞きたくないが、イヤな話なんだろう」


「そうだな、自衛隊とアメリカが我が社が開発した、警護君を迎撃ミサイルに使用したいと言ってきている」


「軍事産業に使用しないって、言ってなかったか?」


「核弾頭ミサイルを迎撃するミサイルだと言われたら、断れなかったんだ」


「お前は、死の商人になりたいのか?」


「何を言ってるんだ。政府が関与するのに、無差別に売ることは考えられない。絶対に・・・」


「もう既に、決まったことなのか?」


「そうだ。親父も賛成してくれたよ」



試作品が作られて、アメリカの核弾頭を外したミサイルで、テストがなされた。

見事に迎撃することに成功。

迎撃ミサイルは破壊される事もなく、海面に落ちたらしい。


今は迎撃ミサイルを無事回収出来るように、改良が施されて順調に進んでいる。


何でも極超音速ミサイルに対応するように改良中らしい。

極超音速ミサイルは、マッハ5以上のスピードでコースを替えながら、飛び続けるミサイルだった。

迎撃は不可能とされていて、中国とロシアでは開発されて配備されていると考えられている。



その為に、極超音速ミサイルに負けないスピードが必要だった。

今はマッハ6以上が出るように改良は済んでいて、急な軌道変更に対応させる為に、色々と改良中らしい。

それがアメリカ側が開発した、新たなAIシステムで、急な軌道変更を予測して軌道修正するシステムだった。

その予測をいかに100%までに引き上げられるか、それが課題であった。

飛行し続けて、軌道変更の分析をし続けて、軌道の予測率を上げていく仕組み。


今は、2発のミサイルを発射して、最終軌道変更予測の上位を2発が分担する方法が考えられている。

そして何度も体験させる事で、予測率が上がっている状態だ。


軌道変更用のメタルⅢの配置や形が、改良されてはテストが頻繁に成されていた。



「たのむよ、もっとメタルⅢが必要なんだ」


俺にも守りたい家族が出来た。

和也は、いつ日本にも核弾頭ミサイルが落ちるか分からない。

声を張り上げて、俺に説得を試みていた。


なぜ、人類は兵器にアイデアを転用するのだ。

そうか、原始人が骨を使って敵を倒すアイデアが始まりなのか?



俺は帰る途中で、ここを警備していた人に、 アタッシュケースを3つを置いて来た。

和也に直接渡すのが癪だったからだ。



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