第123話カードを使う




俺はスマホのアラームで、大切な約束を思い出した。

このまま探索をし続けられない。


「皆、帰るぞ」


『おいらが1番にタッチ』


『おいらは2番』


従魔がはしゃぎながら掴まったので、ワープを発動。

我が家へ帰ってきた。


「お帰りなさい」


「ただいま」


『親分、留守番のご褒美!』


『ごほうび!』


仕方ない。600個の魔石を取り出して、床にぶちまけた。

スラや始らがスススと魔石にかぶさり、溶かし始めた。

ピンクに淡く光り、美味しそうに喰っている。




そして、ワープを発動してあの国へやって来た。


建設ラッシュに賑わう街で、総理大臣のベッカムの就任演説が終わろうとしていた。

間に合って良かった。

ベッカムの側近が、俺を見つけて慌てながらやっていきた。


「もう時間がありません。はやくきて下さい」


その演説が終わり、群集からは歓喜の声が響いて、ダンジョン前の賑わいが頂点に達した。


「新たな冒険者よ、新たな力を手に入れて、この国の支えとなってくれ」


そしてベッカムに見送られて、ダンジョンの向かう選抜候補達が、ダンジョンに入ってゆく。

俺も後を追うように入った。




ここの冒険者は、支援スキルを習得する率が、異常に高かった。

その反面、魔物と戦う魔法スキル・防御スキルの習得率が異常にすくない。

攻撃スキルの習得が普通だったので、どうにかやれていたが深い階層へ行く為には不十分であった。


レアアースだけでは、世界に取り残される。

レアアースはいつか枯渇こかつして無くなる日が来る筈。

俺は1人の犠牲者を出したが、この国の事がよりよい国になって欲しかった。


無償でも良かったが、それではほどこしになってしまう。

日本や猪野研究所に、有利な貿易が出来る見返りに魔法や強化を施すと約束をした。

これで対等な取引きになる。




俺は1階フロアで、年齢もバラバラな男女30人に向かって話した。


「分かっているな、この国はお前らに掛かっている。俺はチャンスを与えるだけだ。その後はお前ら次第だ」


最初に、風魔法を念じて習得さた人数は21人。


「本当に風魔法を習得している。信じられない」


「見ろよ、風斬」


1人が嬉しくて、試しに風魔法を壁に向かって放った。

壁が傷つき、小石がフロア一杯に舞い踊り、何人も傷付いた。


「何をバカなことをする」


「見てみろ、彼女に謝れ」


「すいません。こんな事に成るなんて・・・」


傷付いた仲間から非難されて、しょげている。


「もう許してやれ、このポーションを配ってやれ」


傷を治して、静まったので今度は、強化カードで強化を図った。

念じて授ける度に、驚きの声がフロアを支配。


1人1人がステータスを確認して、抱きついたりして喜びあっている。



「今からダンジョンに挑戦するのか?」


「はい、挑戦します。ここは8階までしか探索されてません。俺達はそれ以上の成果を見せます」


「余り急がなくていいぞ、引き返すのも勇気だ」


「はい、頑張ります」


「ありがとう御座います」


1人1人が嬉しいことを言って、パーティーを組んで通路へ行ってしまった。




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