第102話数で負けている




何故、草食の恐竜がこんなに獰猛どうもうなんだ。

たしか名はトリケラトプスで、サイをでかくした恐竜だった筈。

ジャングルの木を倒して、リップやスライムらを跳ね飛ばし俺に向かってくる。

どうにか魔法陣の盾が従魔らに展開して、手痛いダメージはない。


俺は両手を土に触れて、土魔法で分厚い壁を作り防いだ。

7メートルの厚みが、崩壊してトリケラトプスの動きがようやく止まる。

その止まったトリケラトプスに、キーが雷撃を落としたがダメージを与えていない。

周りの従魔も、一斉に攻撃を仕掛けているが、ダメージが与えた様子も無い。

ただ1体の従魔の攻撃を除いて。


この恐竜タイプは、防御に特化したタイプにみえた。


それでも、ツタのエランドの槍による突きがダメージを与えた。

3本も生えた角の1本を、エランドの槍で破壊。

右肩からも出血させる程のダメージを、しっかりと与えた。



ならば俺の雷撃野太刀でも、ダメージを与えられる筈。

邪魔な壁を消し去ると、雷撃野太刀を取り出して構えた。


攻撃スキルのパワースラッシュを発動。

滑るようにトリケラトプスの右横を走り抜ける。

トリケラトプスの右側が、深く裂けていた。


トリケラトプスは鳴き叫んで、鈍い動きで向きを変えようする。

しかし、周りの従魔は、その裂けた守られていない部分に攻撃を仕掛けた。


雷撃が落下して、トリケラトプスは小刻みに震えた状態で失神。

ライムの水弾が更に内部まで溶かした。

その瞬間に、泡を吹きながら吐血したトリケラトプス。

しばらくして巨体は消えて魔石とカードが残った。


魔石はツタが吸収。

そしてツルを使って、カードを拾って俺に渡してきた。


防御特化Ⅱ


DEF+20

従魔用


従魔用らしい、誰に与えよう。


「このカードは、DEF+20の効果がある。誰か欲しい奴はいないか?」


『その褒美は、おれっちよりツタにあげてくれ』


『そうだな』


『おいらでいいのか?』


『それでいいよ』


「ツタ、こっちにおいで」


スススーと近づくツタに、カードをかざして念じる。

ツタが一瞬、光り消えた。


「どうだ、変わったか?」


『分からないよ』



そんな時に、土がせり出して黒い甲虫が湧き出した。

20センチ程の甲虫で、数が半端ない数だ。


俺はスライムらを掴んではバッグへ放り込んで、空中に逃れた。

リップも障壁を足場に、空中に逃れた。

グフも分担した通りに、ツタを掴んで空へ舞った。


すでに、下は黒い絨毯のように広がりうごめいていた。


「ピー、火で焼き払え」


『分かったよ』


【火炎龍】を発生させて、次々に甲虫に襲い燃やしている。

他の従魔も攻撃に参加。

雷撃が無数に落ちた。

アイも、光線を連射続けている。

風の刃Ⅲが幾度も地面を切裂き、土煙を舞い上がらせた。


それでも、湧き出す甲虫。


いつしか赤紫の混ざった光沢のコガネムシが、「ブーン」と羽音を鳴らして大群で襲ってきた。

【暗黒球】を発動。何度も発動する羽目になった。

MPが尽きる前にどうにかするしかない。


これは数で完全に負けている。


「ワープして脱出する。俺に掴まれ」


従魔が体に掴まったことで、安心感が芽生えた。


俺にも、広範囲の相手を一気に始末出来る。

そんなスキルがあったことを、ようやく思い出した。


支援スキルのエナジーを念じて発動。

エナジーの霧のような物が、近づくコガネムシらを一斉に襲い死滅させて、更に地上の甲虫へと襲いだして死滅させていた。

霧が被いつくした範囲は、球場の2倍に及んでいた。


このエナジーの凄さを再確認。


地面に下り立ち、あれ程いた虫も消えてしまい、魔石とカード5枚を手に入れた。

そのカードは上級ポーションだけだった。

魔石の半分は従魔らに喰わせて、残りの半分は俺が貰った。


先程の判断の遅れは、不味まずかった。

このまま先を進むと、手痛い目にあいそうな予感がする。


「俺に掴まれ、我が家へ帰るぞ」


『帰るの』


『帰ったら風呂だね』


皆が掴まった瞬間に、ワープした。そして我が家のリビングに戻っていた。


『我が家へもどった』


『すぐに風呂へ行くぞ』


『おいらも行く』


『おいらも、おいらも』


従魔らは、先程の緊迫した状態を忘れてしまっている。

俺よりたくましい存在だと、何気に思った。




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