第101話挑戦の権利




誠黒ダンジョンでこれ程、驚いたことが無かった。

ジャングルを抜けた瞬間に、眩い光にさらされて、危うく落ちそうになった。


俺は絶壁の崖端に立ち尽くしていた。


その崖下には広大な世界が広がっていた。これはダンジョンの域を超えた広さだ。

俺は実際には、ダンジョンでなく別の世界に来ていたと、言われたなら信じたろう。

そしてその遠くには、壊れた遺跡が見えていた。

たしか絵画で見た記憶がある。


「あ、そうだバべルの塔だ」


印象的で調べたことがあった。旧約聖書の『創世記 11章1-9節』中に登場する巨大な塔。

たしか、人類は1つの言語でまとまり、神に近づこうと塔を協力して建設した話だ。

天にも届く塔を建設しようと、大勢の人々が働いた。

それが神の怒りをかい、塔は崩れて言語も乱れていくつもの言語が生まれ人々は別れた。


そのバベルの塔の絵にそっくりだった。


しかし、あのタワーが最終地点だと、何故か思えてきた。

あそこへ行けば答えが待っている。

あれを攻略すれば、ダンジョンが消え去るのか・・・?

それとも新たな展開が待っているのか?俺には分からない。

しかしここまで来れば行くしかない。


しかし崖下に見えるジャングルの中には、巨大な恐竜が頭を出して動いていた。

あれはブロントサウルスで、デカイ胴体に長い首で草を食べるやさしい恐竜と、恐竜図鑑に載っていた。

それがジャングルの中を歩いていた。ここからは、あの恐竜とも戦うのか?


もしかして、ここから恐竜ゾーンなのか?



『親分、ここを下りるのか?』


「そうだな、下りるしかないだろう」


ジャングルの中に開けた場所を見つけ、そこへワープすれば簡単だ。


「皆、俺に掴まれ。ワープで下のジャングルに下りる」


『わかったよ』


『OK』


『掴まったよ』


「ワープするぞ」


一瞬で開けた場所へワープした。

しかし、その瞬間に俺の脳内に声が響いてきた。


『新たな挑戦者よ、よく来た。汝に挑戦の塔へ挑む権利を与える。ここは再開の地だ。ここから挑んだ地まで送ってやるので、いつでも来るがよい』


俺は立ちくらみをして、座り込んでしまった。

やはりあの塔が最終点のようだ。

ポーションを飲んで、元気を取り戻して立った。


崖上からだと分からなかったが、俺が立っていた場所は、大きな岩盤に魔法陣が刻まれていた。

何と読むかも分からない文字が、ギッシリと刻まれていた。


『親分、大丈夫』


「ああ、大丈夫だ。声の言う通りに挑戦してやる」


『挑戦って』


「今から戦うってことだよ」


『そうなんだ』




それは突然に襲ってきた。

ジャングルの木が、土から這い出して枝でリップを捕まえた。

リップは、剣で枝を切り払ってどうにか逃れたが、あっちこっちから枝が襲い掛かる。


俺の探知系が完全に機能しない。

今の状態でも、魔物の気配が感じ取れない状態で、全範囲探知でも近くの反応も感じない。

これが挑戦の試練なのかも知れない。


「ピー、火を自由に使っていいぞ」


言われた瞬間から、ピーが【火炎龍】を発生させて、次々に木に襲い燃やしている。

いったん火が付くと、面白いほどに燃え広がり、生きた火龍であった。


キーも、雷撃を落とし、木に亀裂が入ると真っ二つにして倒した。


ツタは木に絡みつき、締め付けて折っていた。


ライムは根を溶かして、倒してからじっくりと溶かしていた。

三郎と四郎も木に跳び付き、徐々に溶かしている。


空からもグフは、突風で何本もの木を倒した。

倒れた木に、アイの光線が無数に穴を開けていき、木達の息の根を止めていた。



そんな中に、俺の勘が動く物を捕らえた。

すかさずに雷撃野太刀を、俺の影に突き立てて雷撃を放った。

俺の影から黒い煙が発生して、すぐに消えていった。

確かに、魔物が影に潜り込んだ。

その証拠に、俺の足元には黒魔石が残っていた。


あの魔物を始末出来なかったなら、何が起きていたのだろう。



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