第87話玉樹ダンジョン




何度も飛行機の乗り継ぎをさせられて、最後には大型ヘリで険しい所に降り立った。

どうやら中国人民解放軍の防衛拠点だと、案内人は話していた。

今は8000人程の軍人が居るらしいが、今も軍が集結中らしい。


俺の依頼が失敗した場合に、遠距離攻撃での破壊する作戦だとも言っている。

中国の案内人はここまでらしい。

この道を進んだ20キロ先に、玉樹ダンジョンが有ると言って防衛拠点から動こうとしない。

それ程、怖がられているのが現状だった。


俺は精神把握で兵隊の考えを覗くと、同じように怖がっている。

得体の知れない物に対しての恐怖だとひしひしと伝わってくる。


仕方なく俺1人でジープを運転して、険しい細い道を何度もカーブを曲がりくねって走り続けた。

そして落ちたら絶対に助からない道を、恐る恐る通った。


そしてようやく辿り着いた。

ここは中国の玉樹チベット族自治州の、玉樹ダンジョンは正に奥地であった。

山の斜面にどうにか家を建てて、住み着いた住民は俺を見て家に閉じこもり出てこようとしない。

30軒の中から視線だけが突き刺さってくる。

今も全範囲探知を発動しているが、おかしい反応はない。

ここの住人が生きているので、ここの住人に近しい者が犯人だと推測される。

しかし、その犯人らしい気配はここには感じない。

ならば玉樹ダンジョンに入っているのか?


ああ、あの燃え尽きた建物が支部だった焼け跡か?

近づいて見ると、焼き焦げた死体はそのまま放置されて、数は30体もあった。

腐敗臭も漂っているが、俺もそのまま通り過ぎた。


急な斜面に階段が作られて、鎖を引張りながらよじ登ってゆく。

しばらくしてお目当てのダンジョンへ到着。斜面にポッカリと穴が開いて階段が続いている。


そのダンジョンの周りにも死体が有ったが、骨だけになった無数の骨が散らかっていた。

先程飛び立った鳥の群れが食い漁ったのだろう。

この死臭の臭いは堪らなく嫌な臭いだ。

事件発生から14日しか経過してない。

今でも偵察機が上空を飛んでいて、俺を見ているようで嫌な気分だ。



このダンジョンは黄色だ。俺なら潜れるので階段を下りてみる。


若干薄暗い気がするが、カードをフロアに撒いて従魔らを呼び出した。


『親分、久しぶり』


『そうだ、そうだ』


「油断するなよ」


ここで全範囲探知を発動したが人や魔物の気配はない。

おかしいぞ、冒険者は予想では居ない筈で、居るなら犯人か?

その犯人が魔物を倒し尽くしたのか?

急いで次の階段へ行き下りてみた。ここも魔物の気配が無かった。


3階層も魔物は居なかった。


4階層も魔物は居なかった。


5階層も魔物は居なかった。


結局10階層のボスも討伐されて、11階層に下りたが、魔物は居たが数が少ない。

そして人の気配。犯人は居なかった。


階段ワープで1階までワープして地上に出た。もう日が傾き掛けていた。

このダンジョンを見張れる位置に移動して、テントの張れそうな平地にテントを設置。

結界オーブと魔石をセットして、結界を張り巡らした。

俺と従魔らとテントを見えないように指定して、サンドイッチを食べながらダンジョンを見ていた。


『親分、何か食わせろ』


『そうだ、そうだ』


『おれっちのもサンドイッチが食いたい』


仕方ないな、【黒空間】から魔石を取り出して、1個1個を渡してゆく。


「今日は1個だ。我慢してくれ」


『今日だけだよ』


「あのダンジョンに人が近づいたなら知らせろ。それが犯人だ」


『OK』


『親分、了解』


俺は中国の案内人に渡された無線機で、今日の出来事を報告。

根掘り葉掘り聞いてくるが適当に答えて切った。


これは持久戦になってしまった。

余りにも犯人の手掛かりが無さ過ぎた。

全範囲探知にそれらしい犯人の気配はない。

もう真っ暗になったダンジョンの方向をただ見ていた。



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