第84話メタル球とジュース




どれだけのメタルの球を雷撃野太刀と剛腕の刀で斬り倒したことだろう。

二刀流で演舞を舞うように、2000以上のメタル球を斬り捨て続けている。


従魔らも、俺と同じぐらい倒しているだろう。

空中を飛び交うメタル球を、より多く倒しているのはアイとグフだろう。


地面にはカードが何枚か落ちているが、拾う暇もない程攻撃がやまない。

一振りの雷撃で30以上のメタル球を沈黙させて、次の赤いスジが10球を2つに斬り分けている。

返す雷撃野太刀で頭上のメタル球を斬り倒した。


更に俺が放つ【暗黒球】は一瞬で80球を食らい尽くした。


近場ではキーの雷撃が無数のメタル球に落ちて、雷鳴を轟かしている。


その向こうでは、グフが突風でメタル球を集めて、風の刃Ⅲが一まとめに切り刻んでいた。


ライムは新たに得た酸霧で複数のメタル球を溶かし尽くした。


5時間に及ぶ戦いがようやく終わった。

そして従魔らと俺はレベルアップをすること出来た。


従魔らは、ようやく地面の魔石を食い漁っている。

俺は黙々とカード拾いに励んだ。


メタルⅢカード69枚

上級ポーション2枚


大量のカードを手に入れることが出来た。


『親分、あいつらは何なんだ』


『そうだ、そうだよ』


「俺に聞いても知らん」


『えーー、つれない言葉です』


『主、ここ温泉に浸かり精神を癒すべきですぞ』


『そうだ、そうだ』


「そうか、我が家の風呂に入りたいか?」


『おれっちは、賛成』


『右におなじく』


『賛成』


「なら俺に掴まれ」


バッグに入って、体中に掴まる従魔らを確認してワープで我が家に戻った。

俺は離れた位置で、風呂場へ向かう従魔らを見送った。

ダンジョンワープで多々良ダンジョン1階の階段を確認。

0時を過ぎで冒険者は居なかった。

早速ワープして、重い足取りで階段を上る。


ギルド支部の明かりが見えてきた。

支部に入るとあの男性が受付に座って、パソコンに向かって入力中だった。

俺は機械に冒険者カードを読ませて帰ろうとすると、壁に新たなボードが掛かっていた。

ここ多々良ダンジョンで活動している冒険者数が165人と表示されていた。


「え!165人も居るのか?」


「昨日、50人が新たに加入しましたよ」


あの男性が話し掛けてきた。


「その50人は、どんな人達ですか?」


「ここの下の街の住民が大半らしいですよ。なんでもバス通勤で来るみたいです」


そうなんだ、ここにもようやくバスが通るようになった。

本数は少ないが村人は喜んでいた。



複雑な思いで我が家に帰った。


従魔用冷蔵庫の前で、ドアを開けたままジュース類をがばがばと飲んでいるのはリップと始と仁助らだった。

既に半分のジュース類が飲み尽くされていた。


『風呂上りの冷たいジュースは格別に旨い』


そう言って又も飲み続けるリップだった。


「紙パックはゴミ箱へ捨てろよ」


『申し訳ない』


と言って回収してゴミ箱へ捨てだした。

その紙パックを五郎とリップは取り合いをする始末だった。

五郎はまだ残ったジュースが飲みたいみたいで、紙パックを離さない。

リップは紙パックと五郎ごとゴミ箱へ捨ててしまい、なおもゴミ箱で必死にジュースを漁る五郎だった。


「五郎、新しいジュースだよ」


俺はりんごジュースの紙パックを開けて五郎に見せた。

どうも五郎は、残りのジュースを吸い取ろうと、体の一部を伸ばすが届かない。

スライムの中で柔軟性に難があった五郎だったので、これでもかと頑張っている。

五郎と紙カップを一緒に持ち上げて、床に置いてやる。

それで閃いたのか、紙パックを持ち上げて、落ちてきたジュースをじゅるじゅると吸取って満足そうにしている。



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