第76話お酒




従魔らは、俺が戻るまでに冷蔵庫の物を空っぽにして。

即席麺の袋を破って、かたい麺まで食っていた。

食っては風呂に入る日々を過ごしたのだ。


俺の当面の食料確保が急務だ。俺は出かけようと軽自動車の鍵を取った。


『親分、何処かへいくのか?』


「お前らが食った食料を調達にな」


リップが空ビンを持ってあらわれた。


「なんだ、それは保存状態が悪かったワイン。もしかして飲んだのか?」


『おらっちが全部、飲んだよ』


「不味かっただろう」


『美味しかったよ。もっと欲しい』


「分かった。大量に買っておくよ」


儲けたので、従魔らの褒美にはいいだろう。



村にも最近コンビ二が出来た。

昔懐かしい店だったのを、娘夫婦が戻ってきてコンビニのチェーン店に加盟して、つい最近にオープンした。


俺はそこで、山のように食料を買いあさった。

あいつらは、冷凍食品まで食っていた。

店のおじさんは喜んで、軽自動車まで荷物を運んでくれた。

そしてあいつらの要望で、酒類も大量に買ってきた。

不味いワインで味を占めたのが原因だ。そのせいで16万円以上を支払う羽目になった。

軽自動車に何回か往復して、食料を載せて帰った。



軽自動車を車庫にいれると、リップとスライムらが待っている。


『これはあの酒より、フルーティな香りがしているぞ』


そう言って、ワインのビンを10本も取って、近場の露天風呂へ行ってしまう。

リップがワインを飲んで、従魔らに魔石と同じぐらい美味しいと自慢したのが原因。

他の従魔らは、楽しみに待っているだろう。


「ほれ、日本酒の紙パックだ」


袋ごと渡すと5匹で協力し合って運び出している。

従魔らは、何故か酒に興味があるみたいで、どうやら味の共有も出来るようで、従魔の繋がりだと思う。



俺は冷蔵庫に食料を入れて、上の棚に即席麺をいれて、シンクの流し台の下にウオッカやウイスキー類を入れる。

久し振りの露天風呂にも入るか、しかし露天風呂では従魔らが倒れて寝ている。

死んでないことは確かで、ただ寝ているだけだった。

24時間戦い続けても平気なのに、これはこれで大発見かも知れない。

酒類の何が従魔に作用したのだろう。アルコールなのか?


あああ、露天風呂の底にスライムたちが沈んでいる。

ピーとキーは探すのは容易だったが、あとの7匹は手探りで探すしかない。

結局、露天風呂に4匹、水風呂に1匹と内風呂に2匹が沈んでいた。

沈んでも死なないと思うが確証はない。


リップは水風呂に浸かった状態で倒れているし、ツタは屋根にぶら下がっている。

アイとグフは植木のそばで寝込んでいる。


俺はそれをみながら露天風呂に浸かる。


そしていつものように防水用ノートパソコンで、例の件を調べはじめる。

あ!ここに詳しく書かれている。



なんとあの組織の悪行が、160件以上書かれている。

冒険者の殺害が1600人以上で、アジトにあった証拠資料だけで、未確認を入れると1万は超すみたいだ。

人身売買も頻繁に行なわれていて、男なら臓器の売買に使われていたらしい。

そう言えば襲ったアジトの中に手術室もあった。そんなことに使っていたのか?



ついでに冒険者ハンターのサイトも見ておく。

俺の報酬はまだ審議中だった。

そして俺の事件のことが書き込まれている。


協会の方の正式コメントでは、やむを得ない判断だったと述べている

それに対して、冒険者ハンターのコメントはあれは誰だと推測や噂ばかりであった。


俺は依頼内容から冒険者を殺してないか、入念に読んでゆく。

殺して逃亡した犯罪者も居たが、山奥に逃げた者とその地域で連続に発生していない者ばかりだ。

油断は出来ないので、小まめのチェックが必要。


最後にメールをチェックしていると、猪野からのメールがあった。


【魔石の調査報告】


高級魔石の調査結果がでたよ、メールでの報告より直に見てくれ。

訪問する日付を知らしてくれ。


猪野和也より


猪野のメールも俺と同じように素っ気無い。

俺もお返しに送っておく。


【行くよ】


×月×日の12時までに行くよ


青柳誠より



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