第74話アジトでの戦い




山の頂上に近づく度に、人間が消化されてそれを目撃した人間がうろたえていた。

拳銃やライフルを投げ出して逃げる人間が現れだした。


『親分、こいつらは魔石が出ないよ』


「それは、人間だ魔物じゃないから出ないぞ」


『そうなんだ。けれど久し振りにレベルアップしたよ』


「従魔らも、冒険者を倒すとレベルアップするので、俺も負けてはいられない」


どんな味がしたと聞きたいが止めておく。余りにも趣味の悪い質問だからだ。

冒険者でない悪党は、見逃して下の軍で捕まえて貰う。

そしてそれなりの罪を償って貰い。今までの悪事の証言をして貰えればいいだろう。

どうせ見えないスライムに溶かされた現場しか見ていない。


ここからが他の従魔が本格的に戦ってくれる。

ここで高級魔石に交換して、山の頂上を全体に結界でおおい尽くす。

400人近い人間が逃げ出したが、675人がまだ残っている。

こいつらの他のアジトは前日に3ヶ所を襲って壊滅させている。

3ヶ所にいた3人の幹部も、従魔によって討伐されてた筈だ。

アジトの前で見ていただけなので、建物内の討伐まで見なかった。


それでもスライムらのレベルも相当上がっている。

手下も相当数が従魔らによって倒されている。


このアジトでは、ボスと幹部は俺が倒すと決めている。



やつらの支援スキルの発動で、やつらの動きが急に早くなった。

12人の1人のフェルナンド・ロビラが姿をあらわし、俺の横を凄いスピードで走り抜けた。


しかし俺の後方では、胴体が斬られて転げ落ちていた。

雷撃野太刀に気力を使わなかったが、凄い斬れ味だった。

斬った感触が無かった。あえて言えば空気を切った感触だった。


そして、レベルアップが起きていた。Lv113と表示されている。

コイツもどれだけの冒険者を殺したのだろうか?



リップに複数の銃弾が降り注いでいる。

けれど全然効かない、障壁によって防いでいるからだ。

手斧を持って襲い掛かる人間を、手斧を奪いそのまま花の中へ入れて食っている。

凄まじい咀嚼音そしゃくおんに見るのをやめる。



そして向こうでは、複数の男達が四方に向かって撃ち続けている。

しかし1人の男がツルに巻き付かれて、建物の中へ引き込まれる。

残った男達は一斉に、その建物に向かって撃ち続ける。弾が切れたのだろう。

急いでアジトへ戻ろうとする男の背中にツルが突き刺さり、そのままの状態で姿が干からびていた。

持っていた銃器は、ガチャガチャと地面に落とし声も出ないのに、必死に助けを呼ぶように口をパクパクとして事切れた。

それを見ていた男達は、一斉に逃げ出した。

しかし遅かった。その場の男達は次々にツルによって突き刺されて、呆気なく干からびて死んでいった。


瓦礫から這い出したツタは、次の獲物を探す為、動き出した。



建物の中に隠れて撃ち続ける2組みは焦っていた。


「なんで魔物が襲ってくるんだ」


「俺に聞いても分かるか?これは神の天罰なのかも知れない」


「俺は殺しはやってないぞ」


「殺してないが、それより酷い事をしてたよな」


建物の壁に光線が2本も貫き、先程までしゃべっていた男は既に死んでいた。

アイは窓から覗き、死体を確認するとその場を去った。



空中高くまで飛んでいるグフの足には、もがく男が必死に叫んでいた。


「どうか、助けてくれ!」


グフは掴んだ足をパッと放す。

男は一直線に建物の屋根へ落下。手足が変な方向に折れ曲がっている。

男は10分程まで苦しんで死んでいった。



12人の1人ホセ・ペイが散弾銃を撃ちながら突っ込んできた。

全ての玉をかわして、試しに生霊を使ってみた。

大きな口を開けて頭からかぶり付き、全てを食っていた。

血も残すこともなかった。これも気力の熟練度のせいなのか?

そしてステータスには、Lv114と表示されている。



従魔らに追い立てられた3人の男は、12人の幹部連中だった。

手下は従魔が片付けて、守ってくれる手下はいない。

今度は、全部を飲み込まないように注意して生霊を使う。

胴体のみかぶり付く生霊は、逃げる2の男もかぶり付き始末した。

最後の男の恐怖に満ちた顔は、印象的であったし哀れでもあった。

そしてステータスには、Lv117と表示されている。


建物から血だらけの男が飛び出して、俺に向かって血だらけのハンマーで殴りかけて来た。

ふわりとかわして肘打ちをかますと、リバウンドして道端に転がってしまった。

首が変な方向に向いている。


気になって男が出て来た建物に入ると、血をたどってゆくと地下室があった。

椅子に固定された男が居て、手足の損傷が激しい。

これは拷問されたようだった。

頭にはハンマーで殴られた陥没痕かんぼつあとがあった。確認すると息はしていない。

そして奥の牢屋には若い女性2人と少女3人が震えて、涙を流して俺を見ている。


雷撃野太刀で鍵を切ると簡単に切れた。

精神把握で落ち着かせて、


「何故こんな所にいる」


「わたし達はただ拉致されて、本当は今日売られる運命でした」


「あの男は知っているか?」


「知りません。ただお前が裏切ったのかと男がハンマーで叩いてました」


成る程、組織の裏切り者を探していたのか?裏切った者は居ないのに・・・

彼女らを結界の外まで案内して解放。よろよろと下に向かって歩いて行く。



キーが雷撃で20人を一気に感電死させている。


ライムの水弾が男が持っている機関銃と手に当たり溶かしている。

男は地面を転げまわり、腹部も溶けてて息絶えた。


ピーは男に飛び付き炎で焼き尽くしながら、次の男に飛び付いていた。

叫び声も炎によってかき消されている。



数人が結界にはばまれて、外に出れないで居る。

銃を外の見えない壁に向かって乱射している。

そして必死に外に向かって、「助けてくれーー」と叫んでいた。

そこへグフが襲い掛かり、ズタズタにして立ち去った。



外では中継で生放送されている。

音は外まで聞こえるようで、突然に血を噴出して倒れる人間を放送されていて。

誰もがテレビの前で釘付けになっていた。

人間が溶かされるシーンでは、多くの人がトイレに駆け込んでいた。


従魔が見えない生放送の為、誰もが神の仕業だと信じた。

人間の突然死を目撃して、神の天罰だと祈る視聴者が、頻繁に教会に通う現象が記事になっていた。



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