第73話やばい奴ら




誠黒ダンジョンから1人だけ地上に戻った。

風呂に入りに、のんびりとくつろぐ。

スマホの電源は切っていたので、防水用ノートパソコンにはメールが届いていた。

露天風呂に浸かりながら、そのメールを見てみる。

やはり迷惑メールが大半であったが、冒険ハンター協会より指名依頼が来ていた。


【冒険ハンターより、ぜひこの依頼を受けて欲しい】


コロンビアで麻薬カルテルの1つが乗っ取られた。

それが、冒険者崩れの集団で勢力を伸ばしつつある中で、冒険者を誘拐して殺害しているらしい。

目的は分からないが、冒険者ハンター協会は大変な事態だと認識している。


地元警察も壊滅に向かったが、返り討ちにあい今では尻込みして動かない。

コロンビア政府も軍の関与を考えている最中に、軍の将軍が次々に暗殺される事態になってしまった。

政府の要人までも脅迫文が送られ、アメリカ政府に泣き付いている。


君に頼みたいのは、麻薬カルテルのボスとそれに従う12人の逮捕、或いは殺害を依頼したい。

その際の抵抗する部下の不可抗力の殺害は、冒険者ハンター協会とギルドとコロンビア政府が認める。


報酬額4億から6億円 (最低でも3億円で結果しだいで報酬額も上がる)


※麻薬カルテルは、麻薬の製造・売買に関する活動を行う組織。

麻薬の所持、売買、使用等は、多くの国では刑罰の対象で、組織は非合法な存在である。

政府の警察や軍部に匹敵するような大規模な武装勢力となり、その国以外の隣国にも治安悪化をもたらしている。

内戦状態や無政府状態の原因でもあった。


なんとも凄まじい文章だ。

冒険者の殺害は、あの秘密を知ったと判断出来る。

早い段階でコロンビアの麻薬カルテルを潰さないと大変な事になってしまう。




プライベート ジェット機の機内で、詳しい内容の資料をノートパソコンで見ている。

顔写真の横に詳しい情報が載っている。

ボスの名は、アントニオ・センシオでギルドの情報では、支援スキルに人をコントロールするスキルを持っているらしい。

支援スキルの持ち主はその特性上、自分自身の支援スキルを秘密にしている。

しかし、このアントニオは冒険者時代にも支援スキルを使って、法律すれすれのことをしていた。

その為にその情報がギルドに残っていた。


クストディオ・ロビラはナンバー2だが、至って臆病な男だ。

探知系の支援スキルの持ち主だ。


ホセ・マドリードは攻撃系の支援スキルの持ち主だ。

内容まで書かれていないが、被害者は血を大量に抜かれて死亡。

10メートル離れた被害者を、大勢の人の前で殺しておきながら証拠不十分で釈放。

殺し屋ホセと聞けば、一般人でも震え上がる男だった。


今では鑑定スキルの支援スキルを持った者が現れて、証拠不十分にならない。

ここ最近の出来事なので、奴にも容疑者として指名手配が掛けられている。


後の顔写真も見たが、10人には普通な支援スキルを持っているだけで、警戒する程でもないようだ。


そして最初の冒険者の被害者殺害の経緯も書かれていた。

マヌエル・トリセスは、このコロンビアのトップランカーだった。

早朝に家に押し込みマヌエルの娘を拉致する予定だったが、マヌエルにばれて戦闘になった。

身体強化されたマヌエルだったが、娘は殺されマヌエルも死んだ。

その時にクストディオは、右腕を失っている。

殺害したのは、殺し屋ホセだった。


いくら身体強化された体であっても、支援スキルの攻撃系の前では無力だった。


その後の3日後に、冒険者の拉致が始まっている。

身代金を取る為でなく、殺害して強くなるためだろう。

そして1ヶ月後に、1つのカルテルが乗っ取られた。

レベルアップした力で上層部の人間を皆殺しにしたらしい。




アントニオ・センシオと9人の幹部が居るアジトを軍が取囲んでいる。

通訳の男が強張こわばりながら言ってきた。


「あんた、本当に1人で行くのか?」


「心配しなくていい。その為に呼ばれたんだ。弱い奴は見逃すから捕まえろよ」


「分かっている。正義感の強い兵だけで包囲している。1人も見逃さず捕まえるよ」



アントニオカルテルのメンバー以外の住民は避難させている。

1つの山の頂上にアジトはあった。

それを守るようにスラムの家々が建ち並ぶ所だった。


アントニオ・センシオはテレビ放送局に声明文を送りつけた。


我らアントニオが率いるカルテルは、どんな敵も屈しない。

来る者は、全員殺す。

我らの強さを再確認するだろう。


強気の声明文だ。そのせいでテレビ中継の車や取材の記者が、軍の後ろで固唾を呑んでいる。



俺は結界オーブに魔石を近づけて、見えない結界を張った。

そして俺はカードを出して念じた。従魔らが次々と現れている。

事前に教え込んだ通りに、スラとスライム5匹は見えない体で頂上に向かって動き出した。


結界オーブに俺と従魔を指定して見えないようにした。


サブマシンガンを持つ手下が、3人ともに天井から落下した3匹のスライムに呑み込まれている。

頭から呑まれたせいで、助けの声も出せずに消化されてゆく。

スラの針が見張りの1人を仕留めた。既に近くにいたスライムがその死体を消化し始めている。


何か異変に気付いたのだろう。無線機から怒鳴る声が聞こえている。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る