第72話メタル




誠黒ダンジョンにやってきている。

1階層では、スラとスライム5匹が戦っている最中だろう。

後、少しでもレベルをアップして欲しい。その為に頑張って貰っている。


俺は、3階層に繋がる階段を見ていた。

前回のこともあって警戒していたが、危険探知の警告は鳴らない。

このまま下りても戦えるだろう。


「気を引き締めて行くぞ」


『親分、任せてくれ』


『そうだ、そうだよ』



いつものフロアがあったが、通路の向こうを見ると長い草が茂った草原が続いている。

従魔らを引き連れて草原を歩きだす。ここでも全範囲探知が阻害されている。

草原に入った瞬間から、長い草のせいで従魔らも余り見えない。

草の動きと音だけで、居るだろうと感じ取るしかない。


あ!前方から殺気を感じる。

音がサッサッサッと聞こえた瞬間に、目の前に何かが襲ってきた。

雷撃野太刀で横切りにした瞬間に、放電によってソイツが痙攣状態けいれんじょうたいで横たわっていた。


なんとメタルボティのキラーラビットだった。

周りでは戦闘が始まっている。

キラーラビットの鳴き声と、金属のぶつかる音がそこかしこから聞こえている。

先程のキラーラビットを見ると、息絶えたキラーラビットがいた。


周りの戦いも終わったようだ。


「大丈夫か?」


『大丈夫だよ』


『OKだよ』


心配なさそうで安心する。

風魔法の【風乱斬ふうらんざん】を目の前に発動。

風の斬撃が四方を切り刻んで、うっとうしい長い草を一掃してくれた。

その際に、2匹のキラーラビットが金属音を発して倒れた。


もそもそとキーがやってきた。


『親分、カードだよ』


「カードがドロップしたのか?」


受取って見た。


メタル


硬い金属


これは素材カードなのか?噂で知っていたが実物を見るのも初めてだ。

金属系は結構レアな分類に属して、販売金額も不明であった。



突然、頭上に殺気を感じて、前に飛んで左手で地面を叩き一回転して立つ。

俺が居た地面に穴が開き、メタルボティの鳥がそこにいた。

羽ばたいて空へ飛び立とうとする瞬間を、ツルがそのメタルボティに巻きつき放さない。

そしていきよいよく地面に叩きつけた。ダメージは無さそうでなおも羽ばたく。

リップが横合いから細い根で受取ると、花の中へ入れると花を閉じてもぐもぐして食らっていた。

そしてプイッとカードを吐き出した。


俺が拾いあげて見た。


メタルⅡ


硬く軽い金属


なんとこれも素材カードだった。

それも硬く軽い金属なので具現化させてみた。

縦10センチ×横30センチ×高さ10センチのインゴットで、非常に軽い。


次に襲ってきたメタルバードは、アイの光線で溶かされていた。

次々に倒していたが、凄まじい闘争心で襲ってくる。


ようやく戦いが終わった。

メタルキラーラビット73匹を倒して、メタルカードは16枚。

メタルバードは44体でメタルⅡカードは9枚だ。



そして、【風乱斬】で又も切り開いた瞬間に景色が変わった。


「何故だ、何故ここに湖があるんだ」


『本当だね、入ってもいい』


「湖の中に魔物が居たらどうする」


『おいらがやっつけるよ』


その湖から何か飛んで来た。

雷撃野太刀の一振りで4メートル先で倒れていた正体は、メタルボディのフィッシュだった。


そして、次々と大勢で飛んでやってきた。

従魔らも倒すのに必死だ。

俺は雷撃野太刀で放電の結界を作ったので、襲ってくる奴らも簡単に仕留めていた。


キーの雷撃で、多くのメタルフライングフィッシュが倒されている。

電系の攻撃が効果抜群で、広範囲を一撃で倒していた。


1時間30分ぐらいで襲撃が終わり、どれだけの数を倒したのだろう。

俺が倒した奴の魔石を回収していると、ピーとリップがやってきた。


『親分、カードだよ』


カード11枚を吐き出すピーと、細い根に13枚のカードを渡してくるリップ。

その24枚のカードは、同じカードだった。


メタルⅢ


硬く軽い金属

気力で自由に動き回れる


なんと気になる事が書かれていた。

具現化したインゴットはメタルⅡと同じ大きさだ。

掴んだ状態で気力を使ってみた。メタルは淡く光っている。

動かないので浮かべと念じると、浮かび上がった。

進めと念じれば、思うように動いた。


「ああ、なんてことだ。これが地上で使えるなら、空飛ぶバイクや車も夢でない」


興奮すると独り言が多くなる。


『親分、それを貸して』


ピーに渡すと、ピーとキーがインゴットに飛び乗り、空を自由に飛びまわっている。


ライムが俺の足を引張る。

諦めてインゴットを渡すと、ライムも飛び回っている。


そしてツタも同じように飛び立った。

リップは前の事があったので見ているだけだ。

どれだけ飛び回ったら気が済むんだ。



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