第67話暗号文




村役場に温泉使用契約書を手渡すと、鈴木課長は喜んで「お茶でも飲んでゆくか?」と言って来た。

丁寧に断って村役場を出てくると、誰も居なかった足湯にばあちゃん達が足をつけてしゃっべっていた。


「あらまーーあ、まことちゃん久し振りだね」


あ~あ!中村のばあちゃんにつかまってしまった。

このばあちゃんは話しが長いのだ。一方的にしゃべりまくるタイプ。


「あら!ひさちゃんと彼氏のともや君、こっちにおいでーー。前に話ていた、まことちゃんだよ」


そのちゃん付けも止めて欲しい。

それに何なんだ、このペアは肘で互いに押して、早く話せと突っつきあっている。

ここでもラブラブして見せ付けるのか?


「先輩、最近金回りがいみたいですね。もしかしたらオークションの高額出品は先輩ですか?」


こいつらは、バカだった。余りにも直球で聞き過ぎだ。

もっと世間話から情報を仕入れて、矛盾点を突かないと本当のことは白状しないぞ。

こんなバカに、嗅ぎ回れるのがもっとも恐い。

何をするか分かったもんじゃない。


「君らに知らない事、教えてあげよう」


あのばあちゃん達から離れるチャンスだ。

ばあちゃんが見えない道端まで来て、きょろきょろと周りを確認する。


「この近くに、もう1つダンジョンがあるのを知っているか?」


「え!それは本当ですか?」


「そうだな、あの山の頂上から見える筈だ。ほれあの山だ」


「あれですね」


このペアは、何も考えないタイプだと睨んだ。

話題を誠黒ダンジョンへもってゆき、そのダンジョンが怪しいと思わせればいい。

俺に対しての感心が無くなる筈だ。

それに村役場は、前のテロ騒ぎに村のイメージが悪くなると、村人全員に口外禁止にしていた。

その話題をしゃべって他人に漏らすことを禁じると、回覧板が回り判子欄に判子を押させていた。

俺は留守で押してない。なので話してもOK。


「あのダンジョンは、ジバの組織が管理している。ネットで調べても無駄だ」


「え!公開されて無いのですか?」


「隣にビルも建っている。分かるよな、この意味を」


「普通は1週間内に公開されるの当り前なのに、何故ですか?ワザと秘密にしていると・・・」


「トモヤ、話はもっと早いわ。あのダンジョンが高額品のドロップするダンジョンよ」


「それだけじゃない。あのダンジョンの色を調べる為に俺も無理やり入れられたんだ」


「あのダンジョンに入ったのですか?」


「そうだよ。それで多々良ダンジョンと同じ色だと判明した」


「ちょっと待って下さい。多々良ダンジョンは色が判明してませんよね」


「これは噂だが、黒のダンジョンと言われている」


「トモヤ、どうする新しい色だよ」


「お前らも分かると思うが、絶対に秘密だぞ。それにあのダンジョンは、相当強い魔物が居るからお進め出来ない。俺でも1階で逃げ帰った」


「絶対に秘密にします」


2人は嬉しそうに話しながら、俺が指さした山へ登ると言って去っていった。

多分、パーティー仲間に話して、もしかするとここへ来ている若者に話すかも知れない。

あれ?嘘を付く筈だったのに、本当の事しか話していない。

まあ、いいか?


そしてあのダンジョンの話題で、俺には見向きもしなくなるだろう。




我が家に帰ったら、スライムチームが横1列になってテレビを見ている。

俺はそれを見て負けたんだと思った。


「親分、おれっちのチームが勝ったよ」


そういって紙を渡してきた。

その紙を受取って読んでみた。



あなたに伝えたい事がある。

私達は、ジバに取り調べられている。

それはあなたについてで、ジバの狙いはあなたです。

ジバは盗聴も盗撮もなんでもありの組織。

私の知り合いで、ジバのせいで冒険者を引退した人は数人いる。

もしかして法律を犯している可能性もある。

そしてあの隊長はジバの中で浮いた存在らしい、もしもの時は協力を仰ぐといいかも。

油断しないでね。

何かあれば連絡はここに×××××××××××

暗号分で送ってね。


何とも考えさせられる文だ。


それにあの隊長が浮いている存在か?色々考えさせられる。

隊長も一緒にダンジョンに入ったのに、その説明を聞いてないのか?それとも言わなかったのか?謎だけが残ってしまった。

そう言えば、冒険者ハンターの規定にギルドは冒険者ハンターを擁護ようごする規定があった。

ロシアチームが死んだ事で、第三者委員会が発足してギルドの不適切な行為が無かったか調べられている最中だ。

俺の発言でロシアチームが死んだ事がばれて、戦いの最中にあいつが言ったと嘘をついて誤魔化した。

遺体遺棄場所も俺の発言で、ようやく発覚した。

俺のアリバイは完璧で、それについては言及されなかった。


俺の服を引張る奴がいる。


『報酬を忘れているぞ』


「ああそうだった」


従魔に高級魔石2つを順番にわたしてゆく。

テレビを見ていたスライムらは、体をねじらせて見ている。


「分かっている。努力賞に1つを与えよう」


『本当か?親分・・・』


『ほんと、ほんとだよ』


高級魔石を1つ1つ与えてゆくと、嬉しそうに消化している。


「今回のお前らの問題点はなんだ」


『う~ん、チームワーク』


『違うだろ。段取りが悪かった』


「間違いを何故間違えたを考えるんだ。分かったな」


『分かったよ』




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