第65話手紙




赤の未確認ダンジョン1階層では、スラの目の前で5匹のスライムがうろついている。


「スラよ、このスライムを強くさせてくれ。お前の後輩だからな」


『後輩ですか?おいらが勝手にやってもいいの』


「ああ、好きなように育ててくれ」


『親分、分かったよ』


真新しいスライムは、やはり知能はよくなかった。

命令しないと、このようにうろちょろしているだけの存在。

昔のスラを思い出してしまう。


スラのステルス機能は、絶対に地上での戦いで有利になると睨んだ。

その為に俺は、スラタイプのスライムを増やす計画を立てた。


スラは早速、スライムをスライム相手に戦わしている。

初めての戦いはやはり手間取っている。

ここは我慢して見守るしかないだろ。

半日かけて、5匹のスライムは光ってレベルアップを2回も果たした。

これで俺がこのダンジョンに居なくても、スライムは戦えるだろう。

従魔強化で強くなったスライムも、レベルアップしたことで一人前に戦える存在になった。


「スラ、後は頼んだぞ。何かあれば念話で伝えてくれ」


『分かったよ。何かあれば呼ぶよ』


「もし用事でこれない場合は、下の階層で戦っている従魔に助けてもらえ」


『親分、分かった』


相手を倒したスライムは、魔石を消化している。

魔石を食べさせることでステータス能力アップに繋がるみたいだ。

レベルが低いせいと、俺が成長したせいで何となく感じる物があった。

触ってやると、ぷるぷるして喜びを表現してくれるようになった。

知性の芽生えだ。



ステータスオープンを表示して、ダンジョンワープに切り替える。

行きたい所を触り決定する。


我が家に戻って来た。

最近買ったマウンテンバイクにまたがり、誠黒ダンジョンへ向かってペダルを踏んでひたすら走った。

そして急な坂道も足をつくこともなく、あのビルに到着。

すっかり顔見知りになった警備の人たちに、挨拶して駐車場でマウンテンバイクを置く。


ここからも見える誠黒ダンジョンに、5人の外人と風間さんが居る。


「また頼むよ。ビリー・キャサリン・ホッサム・ジニー・さおりが今回の受ける人達だよ」


「ヘイ、ユーがなでしこのお気入りか?」


まだ俺とたいして歳も変わらない男が、話し掛けて来た。

最初の言葉以外、英語をまくし立てるので意味が分からない。

風間さんが英語で話して、今度は風間さんにまくし立てる。


「風間さん、先に入ってますよ」


風間さんが止める前に、ダンジョンへ一歩を踏み出して姿を消してしまう。

中は外の気温から2度ぐらい下がっていてヒヤッとする。

2、3分待って、ようやくあらわれた。


そして入ってきた瞬間から、立ちくらみをする人が続出。

無理をさせずに座るように身振り手振りで、座らせてから1人1人にDEX強化カードで念じてゆく。

終わった者から四つん這いではって階段を上っている。


地上に出ると、すっかり元気な5人が話しあっている。


「風間さん、用事が終わったので帰ります」


「え!青柳君・・・」


そのままマウンテンバイクにまたがり、誠黒ダンジョンから離れてゆく。


風間さんは呆気なく見送るしかなかった。


あのダンジョン内でさおりが、必死に手紙を俺のポケットに押し込んだ。

俺が何か言いたそうな顔をすると、顔を振ってしゃべるなと片手をあげていた。

俺は手紙の内容が気になってしまった。

その為に素っ気無く、立ち去った。


我が家に戻った俺は、早速、手紙を開いて見た。

数字がびっしりと書かれていて、3枚も同じように数字が並んでいる。

裏側に暗号と書かれていて、日付も書かれていた。

その日付は明日だ。

明日まで待たないと、この暗号が解けないのか?



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