第64話冒険者ハンター




露天風呂に浸かっていると、スマホが鳴りだした。

取って見ると、メールだった。


【K国での報酬を振り込みました】


事件解決報酬1億5千万円をギルドの冒険者口座に振り込みました。


不明な点があれば、日本ギルド本部まで連絡下さい。



スマホで残高確認すると、今日の日付で振り込まれていた。

一、十、百、千、万、十万、百万、と桁を呼びながら微笑んでいた。

月末のスマホをにらんで、心細い思い出が懐かしい。


そして事件のことを思い返してしまう。

世間はまだ知られてないのだろう。

冒険者を殺すシリアルキラーの恐ろしさを、俺は考えしまう。


冒険者ハンターをネットで調べたが、ロシアチームは世界のトップランカーの一歩手前の実力者だった。

捜索の得意な支援スキルか、仲間に強化を掛ける支援スキルが、冒険者ハンターになる必要条件であった。

レベルも相当高かったが、奴と根本的な違いは殺しに特化した支援スキルがない事だった。

それに考え方も違っていた。


前回の奴もLv102で、トップランカーを超している。

トップランカーはLv85からLv93で、ひしめきあっている。

ステータスで既に負けているのだ。その認識が冒険者ハンターには無いのだろう。

筋力や動く速度で負けた状態で、勝てる筈が無いのだ。

それは俺自身が経験して知っている。


地上の戦いの場で、冒険者の能力に制限された状況で、シリアルキラーは特殊な変化を持った存在だと思う。

前々回の奴を殺し、支援スキルを受け継いだが、今回もシリアルキラーを殺して支援スキルを頂いた。

今回は1つだけだった。


それは【霧化】で体を霧のようにして姿を隠す能力だった。

こいつの能力の恐ろしさは、霧化状態では物理攻撃が一切効かないことであった。

銃弾を何発も受けても、弾は素通りしてしまいダメージがない事。

欠点は霧化で移動する際に、足を一瞬だが霧化を解除して、地面を踏み出す必要があった。

そして強風の中では使えない支援スキルであった。


だから、俺は解除された瞬間をノイズのように探知で出来た。

あれが有ったからこそ、見つけ出せたとも思う。


そしてLv111になって、俺にも新たな変化が起きた。

カードマスターの従魔が従魔Ⅱに変化したことだった。

これは、従魔を地上にも呼び出せる物だった。

そして従魔の能力や魔法も、地上でも使える優れ物だった。


今、湯船にはスラがスイスイと泳ぎ回っている。

他の従魔はテレビを見ながら、冷蔵庫の物を試し食いして、これは不味いこれは美味しいかもと試食している。


従魔らは、勝手にあっちこっち行くので、黄色いテープを張って、出ては行けない所を分かりやすくしている。

スラだけは例外で、水の動きでスラがいるのだろうとステルス機能は今も健在だ。



そして誠黒ダンジョンのビルの一室で、密かに隊長とやり取りをしたことを思い出した。


「君には、冒険ハンターに登録をして欲しい」


「登録をしてもいいですが、条件があります。今回のような冒険者を殺した犯罪者のみ依頼を受けます」


「それで構わない。よろしく頼むよ」


手を出してきたので握手を交わした。


その条件が追加された書類が渡されたので、読んでからサインをした。

受ける際に、金額に折り合いが付かない場合は拒否できる。

しかし条件があって、2回連続の拒否は出来ない決まりになっていた。

それ以外に相当な理由があればギルドの外部組織審査会に申請して、審議中は免除されてる。

申請を受理するには簡単な審査が入る。1日で終わる審査で。

その結果で申請受理された場合は、免除期間に入り罰せられない。

ダメな場合は、依頼を受けるか罰金かの2択しかない。


それに細かな決まりもあったが、容認できる範囲だった。

ここ最近になって、ジバ組織はテロ対応で、多くの犠牲者を身内から出している。

そのせいで、テロ方面に人材を多く使っている。



そして今回の件は、絶対に秘密にしておく必要があった。

冒険者を殺して、支援スキルが頂ける事実とレベルアップが容易である事。

もしその事実を知ったなら、普通の人間が冒険者を狙う恐れがあった。


普通の人間に限定する必要も無いのかも知れない。

強い冒険者が、更なる力を得る為に、安易に人殺しを選びかねない。

そんな世界になったなら、未来は一体どうなるのだろう。



そして、スマホをいじっていて、【ファビラの鉄槌】の記事に目がとまった。


どうやら新たな階層に挑むと、書かれていて仔細は分からないが、明日からアタックすると書かれていた。

俺はその記事に、いいねを押した。



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