第63話見ている中でカードを使う




眼下に広がる風景から俺の家が見えていた。

上空から見るとああなるのか?隣の敷地と合わせると結構大きいな。

大型ヘリが徐々に高度を下げて、ヘリポート着地。

多々良村へようやく戻ってきた。


大型ヘリから降り立つと、【ファビラの鉄槌】のメンバーが待ち構えて居た。

長い金髪をなびかせて美人で有名な、【男殺しのキラー】の2つ名を持つジャネット・キラー。

身長は186センチだが、ハイヒールを履いているので190センチは超えている。

その後ろに【ビックガン】がジャネット・キラーより高い身長で、俺を睨みつけている。

そのビックガンの足元には、黒のゴスロリ衣装の女で髪も黒いが肌は白く透けて程の美肌。

眼は右眼がブルーで左眼は褐色のオッドアイで、魔法に長けた【ミランダアイアン】。

その隣には、か細い体に似合わない、大剣を振り回す【熊殺しのダンロック】。

なんでも素手で熊をさば折りで殺したらしい。

標準的な体型だが、怒ると肌が赤くなる事から【レッドゴンザレス】。

そして最後の女は日系人で、身長も173センチと高く【なでしこ】と呼ばれている。

この女、長い刀を使い【秘剣つばめ返し】で大勢の魔物を切り殺すことで有名だった。


え!何故、派手なあいつらの横に、地味な人間が居るのだ。

その人物を見て思い出した。兵庫地方ギルドの風間さんだ。


そうか落札は終わったのか?金額はどうなっているのだ。


このビルの一室で、風間さんが説明してくれた。

AGI強化カードを1枚3億円で落札されて、3枚が同じ金額なので合計9億円。

1割が税金で引かれて、8億1千万円が俺の口座に振り込まれた。

そして風間さんが、内密な話と断って。


「【ファビラの鉄槌】メンバーが、他にカードがあるなら言い値で買うと言っているが、君は持っているのか?」


「もってますよ」


奈緒子なおこが急に割り込んで。


「どんなカードなの」


「DEF強化カード1枚とAGI強化カード2枚とDEX強化カードが11枚ですね」


「そんなに持っているの、やはり黒のダンジョンだからなの」


「さあ、他のダンジョンは余り知らないので・・・」


隣のジャネット・キラーと話し込んで、落ち着いたのだろう。


「1枚の金額を言ってくれる」


「1枚3億でいいですよ」


また、ジャネット・キラーと話し込んで、ビックガンも途中から参加して話がまとまったようだ。


「その金額でお願いするけれど、DEX強化カードの残り5枚の人間は、後でここに来させてもいい」


「ええ、いいですよ」


払い込まれる手続きは、ダンジョンに入って実証されて、地上に上がってから払うと言ってきた。

俺も素直に受入れて、席を立ち上がった瞬間に、後ろの壁にもたれ掛かっていた隊長が話し出した。


「目の前のダンジョンでも出来るだろ」


隊長は、何故こんなことを言って来たのだろうか?このダンジョンの何を知っているのだろう。


「入っても良いのなら、入りますよ」


「俺が許可するから、入ってやってみてくれ」



ぞろぞろと誠黒ダンジョンの穴にやって来た。


奈緒子は穴を指差して、メンバーに話している。これも発見されて間もない黒ダンジョンだと。


そして俺が入って行くと、何故か隊長も何も言わずに付いて来ている。

カードを使うのを見たいのか?見ることで何かをみれるのか?もしかしてそんな能力も備えているのか?色々な事を考えしまう。


そして【ファビラの鉄槌】メンバーも同じように付いて来た。

やはり階段下に来ると、俺以外は辛そうにしている。

ミランダアイアンは足を広げた状態で、頭を抱え込みながら座り込んでいる。


奈緒子が「強化をお願い・・・」


事前に渡された紙に、誰に何を強化するか書かれている。

その紙に従い、ミランダアイアンに強化カードをかざして念じてゆく。


「終わったぞ」


奈緒子が必死に話して、ミランダアイアンは四つん這いではって階段を上っている。

ビックガンは気丈に踏ん張っていて、強化カードを何度もかざして念じてゆく。

肩を叩き、終わったと合図して階段を指差してやると、ゆっくり踏ん張りながら階段を1段1段と上がってゆく。

いくらマッチョな体でも、このダンジョン酔いには敵わないのだろう。


どうにか全員が終わった頃に、隊長も階段に向かうが足取りはふらふらで、俺が肩を貸してどうにか上がれる始末だ。


1分ぐらいで嘘のように元気を取り戻した。

【ファビラの鉄槌】のメンバーは、ステータスを見ながらおしゃべりに夢中であった。

俺と隊長を見て、奈緒子は握手を何度もしてくる。

隊長の後ろにはビックガンが居て、バシバシと隊長の肩を叩くので、痛かったのだろうスッとかわしているが、反対の手で背中を叩かれていた。

これも向こうの他愛もない挨拶なのだろう。


「振込みは完了したわ、確認してくれる。近いうちに陽気な連中が来るけど気にしないで」


そう言って、メンバー全員がビルに入っていった。


「彼らは、あのヘリで関西国際空港へ行くらしい。色々と忙しい人間だったな」


何やら陽気に隊長は話している。隊長にはあの手の人間と相性がいいのだろう。



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