第58話夢をみた




どうにか赤のダンジョンの40階層を攻略出来た。

ならばステータスの強化を考えた場合は、黄のダンジョンに挑戦した方がよさそうだ。

きっと強化カードがドロップする筈だ。


「皆!頑張ってくれたな」


『親分、がんばったよ』


『そうだ、そうだよ』


『おれっちも、やられるかと思ったよ。もっと強さが欲しい』


「そうか!ならば皆を引き連れて、黄のダンジョンへ行こう。俺に掴まれ」


スライムらは体をよじ登り、背負いバッグの中へ入ってゆく。

他の従魔もツルで巻き付いたり、接触していることを確認した。


ステータスオープンを表示。そしてダンジョンワープに切り替える。

日本には未確認の黄のダンジョンはなかった。

人間に、まだまだ従魔らを見せることは出来ない。

安心して従魔らに戦わせる場所は、未確認ダンジョンしかない。


スマホの海外ダンジョンの位置と比較して、海外のダンジョンを探す。

成る程、中国の山奥に未確認の黄のダンジョンは有った。

その点に触れると、やはり階段の10階と20階が現れ、20階に触れた。

一瞬で移動させられて、黄のダンジョンへ来ていた。


奥に、ボスの魔物が待ち構えて居る。

背負いバッグをおろし従魔らをその場において、俊足を発動して更にもう1度発動と同時に突進モードに入った。

肩から魔物の腹へ突進して、奥の壁まで激突。

一瞬で魔物の体が粉々に砕け落ちた。


そして体が光った。

地面には砕けた破片とカードと魔石が残っていた。

俊足と突進が合わさって、凄い威力になったようだ。


うしろの方から従魔がやって来た。


『親分、ひどいよ。おいらを残して行ってしまうなんて』


『そうだ、そうだ。それでなくてもおいらが遅いのは知っているけど』


スライムらが、いじけている。

そしてLv101にレベルアップしていた。

魔石とカードを拾うと、耐性カードだった。


ダンジョン耐性【水】


水の耐性が付く


すぐにカードに念じて習得すると、淡く光ったのでステータスを確認。

すると防御スキルにダンジョン耐性【火・雷・水】と表示されている。


リップが背負いバッグを持ってきたので受取る。


「リップ、ありがとうな。俺は風呂に入ってから、ここでしばらく寝るから好きなようにしていいぞ」


『本当か?親分』


「嘘を言ってどうする。戦ってこい」


『おれっちに付いて来い』


『なんだと、おいらの黄金コンビに勝てると思ってるのか?』


黄金コンビは階層上に行き、リップは他の従魔を引き連れて階層下へいってしまった。

俺は一瞬に我が家に戻ると温泉に入って、サッパリしたので着替えて、ダンジョンに戻った。

【黒空間】からベッド一式を取り出して、ベッドへ潜り込んだ。

まだ温い体で、急速に眠気が襲い、知らない間に寝てしまっている。



・  ・  ・  ・  ・


高校校舎の人目のつかない所で、クラスの男子生徒8人と3年生2人が逃げないように囲まれた。


「お前、まだLv2だって、呆れてしまうな」


「お前には、瞳さんがいくら幼馴染だからって、気安く近づき過ぎなんだよーー」


腹に足蹴りがまとも入った。膝をつき両手で腹をかばう。


「お前の顔が気にいらないぜ、この情けない奴が」


後ろから蹴りをくらい、前に倒れ込んだ。

笑い声が聞こえる。


クラスの奴らは、Lv5になって到底勝てない。

中学では、運動神経抜群で勉強もそこそこ出来ていた。

ただ平凡な中学生で大人しかったのに、高校に入って間もないのに何故だ。

ダンジョンに入ってから、何故、俺がこんな目にあうのだ。

くやしい、悔しすぎる。


後はボコボコにされて、下級ポーションを頭から掛けられて、アイツラは去って行った。

これでは、打撲の痕も治って先生などに言ってもいじめと認めてもらえない。

多分、明日も同じことが起きてしまう。


母子家庭の母は、海外へ赴任して仕事に忙しい毎日。


俺はネットで調べて、多々良ダンジョンを見つけた。

不人気なダンジョンで、冒険者も数人だけ。


有り金を持って、俺は多々良村へ向かった。


・  ・  ・  ・  ・


ハタッと目が覚めた。

あれ!何故あんな夢を見てしまったのだ。

生生しい夢だった。

悔しい思いが、ぬくぬくと思い出してくる。


『親分、どうしたの涙を流してたよ』


目の辺りを触ると、確かに濡れていた。


「少し悪い夢を見てしまい、悔しかったんだろうな・・・」


『こんどは、おいらがいるから大丈夫だよ』


「ありがとう。ピー」


俺はベッドから起きて立ち上がると、足元に黄金コンビがまとわりついたので、抱きかかえて泣いていた。


『また悪い夢を見たの』


「イヤ、今度は嬉しい涙だ」


『なら良かったね』



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