第57話死闘




赤のダンジョンの40階の広いフロアで、死闘が続いている。

巨大なボディに燃え盛る岩盤が張り付き、そのボディが従魔らの魔法攻撃をことごとく防いでいる。

つぶらな眼でこっちを睨みつけて、4つの足を地面に踏みつけて突進してくる。

鼻先の角が赤く伸びて、俺は右にかわした。

突進の勢いは止まらず、壁に大きな穴を開けている。

角を引き抜く為に、頭を上下に振って穴を大きくして引き抜こうとしている。

その間に俊足を発動して近づき、剛腕の刀で斬りつけるが10センチの切れ込みをつけるだけだった。

それも剛腕の刀がはなれると、切れ込みが治りだしている。

ダダダッと動き方向転換をする間に、俊足を発動して離れる。


その瞬間に、またもや突進を仕掛けてくる。

この突進モード時は防御力が上がるみたいで、リップの剣1本が粉々に破壊された。



空中から懸命けんめいに攻撃している従魔達。

今は右目を集中的に攻撃している。どうも薄い膜で防いでいるみたいだ。

俺1人が囮状態で頑張っている。何度かわしたか分からない。


そしてついに、右目の膜がパリンと音がして壊れた。

今度は命懸けで、当たる瞬間まで待ち続けて、右目に剛腕の刀を突き刺した。

深く刺したが逃げ遅れて、でかいボディにわずかに触れて、空中に跳ね上げられる。


凄い衝撃だった為に、剛腕の刀を放してしまった。

空中で回転した状態で奴を見た。

方向転換を済ませて、右目に剛腕の刀を突き刺したまま、左目でこっちを見ている。


地面に叩き付けられて、何度もバウンドをしてようやく止まった。

俺の左足は変な方向に折れ曲がっている。

これでは逃げれない。

意識が段々とうすれてゆく・・・



俺は激痛で目を覚ました。

変な方向の足を両手で掴み、激痛に耐えて真直ぐにする。

なんとか中級ポーションを取り出して、その足にかけるとじわじわと回復してゆく。

そして振り返ると、従魔らが必死にサイの化け物をボロボロになりながら防いでいた。

そのせいでサイの化け物は止まった状態。

俊足を発動して、一気にサイの頭部に着地。

足を掛けて、剛腕の刀を更に突き刺して、そのまま左右上下に必死に動かした。


ドスンと音がして、サイの化け物は座るように足を折り曲げていた。

そして右目から大量の緑の液体が溢れていた。

どうやら終わったようだ。

そして周りに居た従魔らは、体を光らせていた。

俺だけが光らない。



スライム以外はボロボロ状態の従魔に、中級ポーションを与えてゆく。

アイの大きな眼に大きな切り傷が有ったが、中級ポーションを吸収すると嘘のように治った。


リップの細い根は全滅で、太い根も動かせるのは2本だけだった。

太い根だと中級ポーションが持てないので、俺が直接花の中に液を流し込んだ。

その途端に再生が始まり、一瞬で元の体に戻った。


ツタも切られた部分が多く、ツルを出せない状態だった。

ジグソーパズルのように、1つ1つ切れた所を合わせて地面に並べる。

そして中級ポーションをまんべんなく振りかけてゆく。

ツタが互いにくっつき合い、みるみる再生して治った。


グフは翼が片方しかなく、胴体に深い傷が入っていた。

グフの口の中に中級ポーションを飲ませると、翼も再生して深い傷も治った。



俺の足元には、スライムらが集まっていたが、たいした怪我も異常な症状もない。

しかし、スライムらは期待感をかもし出していた。

下級ポーションを渡してゆくと、嬉しそうに消化してゆく。


そんな回復をしている最中に、サイの化け物はダンジョンに吸収されていた。

残ったのは大きな魔石とカードが2枚だった。


この魔石は最大級魔石に思えた。この魔石はどれくらい電力を出し続けるのだろうか?

そう言えば、この戦いで従魔らは話し掛けてこなかったな?

何故だろう・・・それだけ真剣だったのかも知れない。

大きな魔石を【黒空間】に収納。


カードはDEF強化大カードと突進カードだった。


DEF強化大


DEFを10ポイント追加される


・  ・  ・  ・


突進


突進モード状態時に防御力が一時強化される



DEF強化大カードを自身に念じると、光り輝き1分程続いた。

ステータスにはDEF25+15と表示。

前回のDEF強化+5に+10が追加されたようだ。


今度は、突進カードを自身に念じた。

体が浮かぶ感じで光りだした、長い間光ってようやく消えだした。

突進は支援スキルでもあった。どう考えても攻撃スキルか防御スキルの筈なのに。

理由は定かでないが、地上での戦いが楽になるだろう。




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