第56話新たな強化




赤のダンジョンの20階で説教はまだ終わらない。


「さあ、大事なことは?」


『親分との約束』


「俺は約束を守らないのは嫌いだ。あの時も正直に行けないのなら行けないと言えばよかった」


『主の言いたいことは分かり申した。ならば切腹して侘び申す』


『アイには手がないよね、剣を持っているリップにでも頼むの』


『なにを言うか?おらっちの剣は魔物を斬る為にあるが。仲間まで斬らん』


『なら親分の刀を借りるしかないのだ。親分、貸してやってよ』


アイはここ最近、俺が見ていた時代劇の映画に影響され過ぎている。

切腹のシーンが壮絶で、腹を一文字に切ったあとに更に縦にみぞおちからへその下まで切り下げる【十文字腹】。

介錯人が「お見事」と言って、首を一振りで斬り落とすシーンで画面が赤くなる。

そして精巧に作り込んだ頭が画面に向かって睨みつける。

なんとも残酷過ぎるシーンだが、今では販売禁止になっているDVDであった。


「何をバカなことを言っている。本当は黄のダンジョンに行く積もりだったが、折角だ39階まで案内しろ。39階まで行ったんだろ」


俺の説教がようやく終わると、もんもんとした気持ちが晴れた。


『親分、知ってたんだ。グフ、おいらを乗せたまま急いで39階まで行くよ』


『ちょっと待った!』


『なんだピー、邪魔するなよ』


『親分、カードを14枚もあるよ』


俺はカードを受け取って、グフにまたがった。


「グフ、しばらくは戦闘に参加せずに飛んでくれ」


『親分、分かったよ』


ふわりと浮かぶと、翼をゆっくりと羽ばたいている。

これは翼で揚力を生み出しているのでなく、完全に風魔法で飛んでいる。

するとアイのコウモリの羽も風魔法か?いや違うだろう。

あれは重力を扱っていると俺は睨んでいる。

暇な時にじっくりとアイとさしで話し合ってみよう。


グフに乗った状態で、カードを確認してゆく。

なんとDEF強化のカードが5枚もあった。

そしてVIT強化のカードも9枚も。


DEF強化


DEFを5ポイント追加される


DEF強化のカードを1枚手に持った。

早速、自分自身に念じた。ボワンと光り体が温かい。

ステータスもDEF25+5と表示。

成る程、これも1回限定のカードだ。

グフにもカードをかざして念じる。俺と同じくボワンと光り成功したみたいだ。


落ち着いた所で、リップとツタとアイにDEF強化を念じることに決める。

スライムらは、物理攻撃や魔法攻撃に耐性をもっているので、次回まで手に入ったら念じればいいだろう。


VIT強化


VITを5ポイント追加される


この強化カードは+5が基本の数値のようだ。

VIT強化のカードを持って。

自分自身に念じた。ピカッと光りこれも体が芯から温かく感じる。

ステータスもVIT35+5と表示。

グフにもカードをかざして念じる。俺と同じくピカッと光った。


そして俺の前に乗っているスラにカードをかざして念じる。

ピカッと光った。


そのスラを手探りで掴み、背負いバッグに入れて、手探りでスライムを掴む。

あ、ピーだった。


『親分、なんですか?』


「今からVIT強化をするからな」


『ほんと、嬉しいな』


ピーにカードをかざして念じると、ピカッと光った。

そして背負いバッグのスライム全員をVIT強化を済ませた。

残りの従魔も落ち着いた場所で強化すればいいだろう。




39階の40階への階段前に立っている。

従魔らのカード強化も済ませた。

ここまでの魔物の戦闘も13回程したが、従魔らの圧勝に終わった。


階段を見た感じも、危険探知は反応しない。

少し不安が残るが、危険探知を信じてこの階段を下りてゆくべきなのか?

ここでの判断が今後に影響を与えるだろう・・・



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