第53話赤のダンジョンの21階層




海外の旅行だったが、現地活動は朝8時頃から18時で終了。

ほぼ日帰り旅行に近かく、飛行機の座席に座りっぱなしで。

暇を持て余して自己催眠で無理矢理に寝て過ごした。

時差ボケも寝て無理矢理にごまかした感じだ。



従魔らに会うのも6日ぶりだ。


赤のダンジョンでの20階では、従魔らと炎の人型が戦闘するさまを見る羽目になった。

既に知られている弱点に、どの従魔が先に攻撃を当てるかが競われて、キーの雷撃がわずかに速かった。


『よっしゃー!おいらがはやいぞ』


『キーに負けてしまった。もっとはやく撃てるようにしないと不味い』


『戦いは、時に身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれと言いますな』


『何それ、アイは時たま変な事を言うね』


『失敬な、スラには早かったな』


『そうだとも、おいらが2番目にはやかったよ』


『・・・違うぞ』


従魔は、会わない間にも体の変化が表れている。

スラにいたっては、ほぼ姿が見えなくて漠然と居るだろうのレベル。


「お前ら、もしかして20階層より深くまで潜ったな」


『ほらリップ、ばれてしまったよ。リップが下へ行けば美味しい魔石が食えると言うから』


『お前らもうまいうまいと言っておきなながら、それは無いだろう』


「何階まで行った」


『36階層まで行ったな』


「それならカードが沢山ドロップしただろう」


『それが30階のごちゃごちゃした魔物からドロップしたカード1枚だけだったよ』


従魔らのドロップ率は凄い数値だった筈。

何か違う条件があるのか?・・・そうか、俺がダンジョンに居なかった。

俺とセットでドロップ率が上がるのか?


ならば寝る時は、従魔が居るダンジョンで寝るしか方法はなさそうだ。



『親分、1枚だけどカードだよ』


プイィと吐き出したカードを拾い見てみる。


強化【火】


火の威力を倍増する


このカードならピーに与える選択しかないな。


「ピー、おいで・・・このカードをお前に与える。今後も頑張れよ」


『がんばるよ』


カードをかざして念じた。

ピーが輝き、体も真っ赤になっている。


『親分、つよくなったと感じるよ』


「そうかそうか」


真っ赤な体をなでてやると、いつもより温かい。

まるで湯たんぽみたいに暖かい。


『親分、試しに撃つよ』


一本の通路に向かって、撃ったのだろう。

空気中がゆらゆらと揺れて熱い。


19階へ上がる階段も跡形も無く、そして壁から2メートル程も深く穴が開いている。

炎の球レベルでなく、熱光線だ。それに威力も凄い。


それから21階層へ下りて、従魔らの戦いを観戦。

魔物はトンボで1メートルもあり、すばしっこく動き回っている。

上手くかわしたがかわした先に、複数の風の刃によって倒されていた。


『親分、カードがドロップしたよ』


AGI強化


AGIを5ポイント追加される


何とそんなカードがあったのか?

早速、自分自身に念じた。体が一瞬光るとすぐにおさまる。

ステータスがAGI70+5と表示されていた。


『親分、又も同じカードがドロップしたよ』


又もドロップしたのか?ここは使わずに溜めよう。

この21階層も全ての魔物を倒しきった結果。カードは11枚になった。

しかしランクアップすることも無く、カードホルダーに11枚と表示。

20階、下からはドロップしたカードはランクアップしないのか?


それもダンジョンならの仕組みなのか?

ならば再度、自分に念じてAGI強化をしよう。


あれ?変だカードが消えない。1人に1枚が使用ルールなのか?


ならば、従魔に念じてみよう。

足元の絡みつく、見えないスラに念じた。

カードも消え、足元が光った。更にスラにカードかざして念じたがカードは消えなかった。


諦めて、従魔らを並ばせてカードをかざして念じた。

3枚が残った。久しぶりにオークションに出品するか?

それ以外に俺らには使用出来ないから、オークションに活かすしかない。


今回は、カードで出品だ。カードは地上に出せるが地上で使用できない。

落札した相手と同じダンジョンに入らなければならない。


多々良ダンジョンに入ってもらい、苦しんでもらうしかないだろう。

もしも相手の色のダンジョンへ入れと言われても、集中しないとカードが使用出来ないと言えばOKだろう。

これも出品に合わせて注意書きが必要だろう。

もう正体がばればれだが、宝の持ち腐れにはしたくない。


俺には俺なりのカードに対しての愛着がある。

不遇の頃を思い出す、その為にもカードを有効に使いたい。

あの臭いカードだけは例外だ。



腕時計の時間は7時32分、神戸に行ってくるか?


「俺は地上に行くから、ほどほどにしておけよ」


『え!37階に行ったらダメかな?』


「危ないと思ったら逃げるんだぞ」


『逃げ足は、はやいよ』


『AGI強化したから凄くはやく逃げれるよ』


「そうだな、行ってくる」



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