第49話黄金製の王冠




居間で濡れたタオルを硬くしぼり、そのタオルで防具の内側を拭いてゆく。

そんな作業をしながら、今後について考えた。

限界突破で習得したであろうダンジョン耐性【火】は、俺にそのダンジョンへ挑めと言っていたのか?謎だけが残った。

しかし多々良ダンジョンの19階層と20階層も攻略してないのに、他のダンジョンに行くのは俺の性格が許さない。

決めた多々良ダンジョンに行こう。


拭き終わった防具を装備して、心の準備を戦闘モードへ切り替える。

目的地は多々良ダンジョンの19階層で、その為には18階層へゆく。

急いでステータスオープンから始まりダンジョンワープを表示。


目の前には19階層への階段ある。

従魔らをカードから戻す。


『親分、あの戦いは危なかったね。このキーなら一撃で倒していたのに』


「知っているのか?あの戦いを」


『知っていたよ。親分がLv90になってから地上の事は全て把握済みだよ』


「そんな、バカな」


従魔らを見渡すと、わずかな動きで知っていたと物語っている。

グフは『キーキッ』と鳴き頭を上下に振っている。


『親分、気を落とさないで、いつも一緒だよ』


『主よ、戦いが待ってますぞ』


「そうだった、19階層へ行くぞ」


俺は階段を下りて、全範囲探知で調べた。

この階層には罠は無いが、20体の魔物が歩き回っていることを確認。


「ベチャリ・・・ベチャリ」泥で覆われた熊がゆっくりと通路の向こうからくる。

精神把握で熊の精神は、人を食いたい欲望だけが支配している。


この精神把握は、多分あいつを殺した時に習得したのだろう。

俺は気絶して実感は無いがそれ以外、考えられない。

そして強化もあいつの物だ。

戦いの最中に急にスピードが速くなることもあり、俺自身もその豹変ぶりに戸惑った。

そして力も急に強くなりだす、そしてこの強化はステータスの一部を強化する能力があった。

この2つは色々な意味で考えさせられる能力だ。



ピーが発射した炎の弾が着弾すると、熊は一瞬で炎に包まれ土塊つちくれになり、ピーが体当たりすると飛散して魔石のみが残っていた。

ここの魔物では、従魔に敵う者は無さそうだ。


ライムの水弾も貫通力が増したのか、泥熊をでかい穴を貫通させて倒している。

俺の指示に従って次々と倒して、20体を倒した。

なので次の階層に行く為に階段を下りてゆく。


一本に通路が伸びる中、俺ら突き進むと1つの広いフロアにやって来た。


そこには、巨大な胴体に9つの首を持つ大蛇、ヒュドラーがいた。


ライムが水弾で首ごと吹き飛ばしたが、すぐにニョキニョキ再生し真新しい蛇の頭が出来ている。

風の刃で2つの首が斬り落とされても、同じく再生して復活している。


その間、俺はヒュドラーを見詰めて精神把握をしていた。

9つの頭が1つ1つ違う考えをする度に、俺の頭は理解しようとフル回転をしていて、ようやく答えを見つけた。


「胴体の真ん中を狙え。そこが弱点だと気にしていた奴がいた」


従魔らの集中攻撃に、9つの頭でかばうが再生が間に合わず、大きな穴が開きそのまま倒れた。


その瞬間に体が光り輝く、1つのスキルを習得した。

再生スキルで、自身の再生も勿論、誰かにも再生させる事ができるものだった。

そして支援スキルでもあった。


もしも地上で交通事故にあっても、再生さえあれば大丈夫になったみたいだ。


もうここまできたら決心が付き、目の前の階段を下りる。

21階層で出会った魔物は、尻尾が蛇の大きな雄鶏で羽をバタつかせている。


「コイツのブレス攻撃に触れるな。触れると石化するぞ」


『石化って石になってしまうの、そんなの嫌だよ』


『そうだ、そうだ』


「今からブレスがくるから注意だ!」


『ならば、おいらの突風で追い返してやる』


グフは突風で雄鶏のブレスを追い返すと、雄鶏自身が石になっていた。

するとカードがひらひらと落ちてきた。

俺が拾って見た。


雄鶏の王冠


王冠は黄金製


具現化した王冠は黄金の輝きが凄く、もった感じは1キロか?

今の金相場はどれくらいなんだ。ここではスマホで調べることも出来ない。

しかし、魔石の方がもっと高いのに気が付いた。

つい黄金の輝きに魅惑された。



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