第46話突き落とされる




「君、起きるんだ」


誰だ、寝ているのにそんなに揺らすな。

目を覚ますと固い廊下に顔をはりつけて寝ていた。

ドアを閉めた所までは覚えている。

体があっちこっち痛い、変な姿勢で寝たせいだ。


「やっと起きたようだね」


「誰ですか?」


玄関の方を見ると、あの隊長さんと後ろに数人の隊員がいる。


「ギルドの連絡で君がダンジョンから帰ったから来たんだ。又、君に頼み事がある」


「もしかして、例のなんたらで断れない奴ですか?」


「君には悪いがそうなるな」


「チョッと待って下さい。帰ってシャワーも浴びてないんで勘弁して下さい」


「それなら、シャワーの時間だけ待ってやる」


これは強制的に連れて行くパターンだ。

仕方ないシャワーでも浴びるか?


シャワーを浴びながら、今度はどんな事件に巻き込まれるか想像してしまう。

すっきりした状態で玄関に行くと、やばい防具類を脱ぎ捨てた状態のままだ。

そうだ鑑定持ちは、神戸と東京の2人しか居ない。

変わった防具を着ていると思っているかも。


玄関の傍らに置いていた、除菌スプレーで防具に万遍なく吹き付ける。


「もうそれ位でいいだろう。その防具を持って付いて来い」


一部は隊員が持って、ほとんど無理やりな感じだ。

2台の装甲車が目の前に止まっていて、2台目に乗せられる。

急ぎ装甲車が走り出した。


「今回の依頼は1人の男を殺しても良いから、データの入ったUSBメモリを手に入れることだ」


「何処に行くのですか?」


「東京都西多摩郡奥多摩町まで行って貰う、そこが確かな最後の目撃情報で消息を絶った場所だ」


そして鮮明な顔写真を渡される。右目の下のほくろが泣いているようで印象的だ。


「また山奥ですか?」


「そうだな、あと2日までがタイムリミットだ」


「何故タイムリミットがあるのですか?」


「それは極秘事項で言えないな」


あのダンジョンに来ると、立派な5階建てのビルが出来上がっていて、その中に入って行く。

エレベーターで5階に降りて、横のドアを開けると「ヒューヒュー」と風が顔面に当たってくる。

目の前に階段があり、連れられるように上がると、大型ヘリがプロペラを回して待機。

姿勢を低くして乗り込むと、急ぎ飛び立つ大型ヘリ。


「この装置を持っていくように、これで存在位置を監視している」


「誰か一緒に来ないですか?」


「誰も行かない、今までに沢山の人材が消息不明だ。だから気を付けろ」


あえて突っ込みを入れないでおく。

相手がどんなスキルかも判明してないのだろう。

監視タイプの人工衛星もようやく国会でも可決されて、半年後に打ち上げ予定でその人工衛星があれば楽だった筈。

最新高感度のカメラで任意の場所を動画撮影が可能で、顔認証や歩行認証も可能。

そして最新のソナーを搭載。


【サーチライトソナー】

衛星周囲360度にいる情報を見るためのもので、センサーの角度を自在に変化させる。

センサーを回転させて衛星周辺360度にいる動く物を情報を表示できる。

まさに、サーチライト(懐中電灯)で周囲を照らして探索するようなイメージ。


【スキャニングソナー】

衛星の全周囲360度方向に向けて一気に超音波を発射し、瞬時に探知、表示することができる。

そのため、探知漏れ域が生じない。

サーチライトソナーに比べて、探知速度は格段に速くなり、瞬時に全周囲を探知できる。

同じ動く物をなんどもとらえることが可能。

高速で動き回るバイクや車といった高速移動の探知はもちろん、動向をも判断できる。 


【セクタースキャニングソナー】

原理はサーチライトソナーと同じで、6度ステップで探索するサーチライトソナーに対し違っている。

セクタースキャニングソナーは45度ステップで探索する為、サーチライトソナーと比較して、4倍から7倍の速さで全方位の状況を把握することができる。


このソナーは膨大なデータを瞬時に解析して画像に映し出す能力は半端でない。

その為に最新AIの解析能力を向上させて抜群な演算処理が必要。

その為にダンジョンの物質が使われて入るのではと噂されている。


そんな色々なことを考えていたら、目的地に着いたようだ。

大型ヘリの乗客ドアが開くとロープが垂らされた。


「さあ、降りろ」


空中に止まったまま降りろとは、どのような意味があるのか?

隊長の顔を見るが真顔で、冗談を言っている訳ではないようだ。

他の隊員が俺の体に背負いバッグや拘束するような物を付け出した。

体に付けられた装置がロープにはめ込まれる。


「このボタンが降下ボタンで、はなすと止まる。他のボタンは今回は要らないな」


え!説明しないのか?万が一のことを考えろ。

そして有無を言わさず突き落とした。

成る程、止まって動かないが宙吊り状態。

手を伸ばして帰ろうとするも、手ではがされた。


「はやく下に降りろ。時間がないんだ」


心の準備も出来ていないのに突き落としておいて、そんな言い方はないだろう。

仕方なく降下ボタンを押すと、するすると下に向かって降りる。

はなすタイミングを間違えて地面に尻を強打。

その勢いでロープが外れ、それを合図に大型ヘリはいってしまう。


俺は大型ヘリを見ながら、ただ呆然と立ち尽くす。



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