第42話マンモス現れる




この広大なフロアから更なる魔物を引き寄せたみたいだ。

双眼鏡で小さな粒がいくつも向かっている。

やはり破裂弾の爆発音が反響して遠くまで響いたせいだ。


「リップとスラは破裂弾の使用はここでは禁止だ。爆発の音で魔物を呼び寄せている」


『そうなのか、だからひっきりなしに魔物が来るのか?』


『おいらには針が有るから、使わなくてもいいや』


「ここを出れたら使っても良いからな」


『本当だよ、やくそくだよ』



遠くから黒い一団が地響きを鳴らしながらやって来る。

双眼鏡では黒いマンモスで、体中が長くて黒い毛でおおわれている。

そして太くて長い牙もマンモスの特徴だ。


最初に動いたのはアイとグフだった。空からの光線での連射はどうも効いていない。

グフの風の刃でも体毛を切り落とすだけに止まり、マンモスの進行も遅くならない。


双眼鏡なしでもよく見える距離になると、マンモスの巨大さがよく分かる。

身長は7メートルで激しく動く足に踏まれでもしたら瞬殺に終わるだろう。

数も50頭も居れば、迫力は十分だ。


「先頭の右足を狙え」


俺の空弾が右足に当たり、体毛を粉々に粉砕。そこに風の刃が足を切断。

走っていた勢いで前に転倒して、体ごと回転して地面が大きく揺れ動いた。


後ろから追尾していた2頭も、前のマンモスをよけきれず同じく転倒。

俺は俊足で転倒したマンモスの頭に現れると、目に剛腕の刀を突き刺しひねりを加えて引き抜く。

目の前の頭を土台にして飛び跳ねて、もう1頭の頭に着地と同時に目を突きひねって抜くと、大きく後方に跳びはねた。


傷付いたマンモスに、後ろから来たマンモスは止まらずに突き進み、マンモスの頭を陥没させて乗り越えてきた。

一瞬も油断も出来ないと思った。


マンモスの右目を狙って空弾を放つと、目を傷付けながら広がり急に頭部を破裂。

右側頭部が無い状態で前へ倒れる。


「目を狙え」


又も空弾でマンモスの目を狙って、頭を破裂させる。

アイも光線で目を狙いだした。当たった瞬間に崩れて倒れるマンモス。

風の刃も目に当たるが目から出血して、怒り狂うマンモスが所構わず走り回る。

丁度、飛び跳ねてかわしたスラが着地した地点をマンモスの足が踏みつけた。

ピシャと音がした瞬間に、怒りが込み上げて剛腕の刀を両手で凄い勢いで振り下ろしていた。

凄まじい赤いスジが発生して、マンモスを真っ二つにしていて、その後ろにいたマンモスの首も斬り落として、更に後ろのマンモスの体ごと切断。


俺は肩で息をしながら地面を見ていた。

ぽつり、ぽつりと涙が落ちて俺の不甲斐なさに怒りを覚えていた。

いつか犠牲者が出ると思っていたが、出てみてその考えは間違っていた。

犠牲者を出さない努力がもっと必要だった。

俺は従魔を手に入れて、嬉しかったのもあるがダンジョンで従魔らと戦うことが生き甲斐だったと思う。

互いにレベルを上げて、それが楽しかった。従魔の会話も楽しかった。

だから何億も稼いでも、ダンジョンに潜り続けた。

俺は本当の意味で孤独を知ったのかも知れない。



するとマンモスの死体下からスルスルとスラが這い出してきた。


「え!スラなのか?」


『何を変な事を聞くの親分、スラだよ』


俺はスラを抱きしめて、ポロポロと涙を流していた。



『主よ、そろそろこっちのマンモスも相手にして下され。我らだけでは手一杯です』


どうやら俺を守りながら、マンモスと戦っている光景は見ていても切羽詰まっている。

せわしく飛び回るアイとグフは劣勢モード。


俺は剛腕の刀を構えて集中する。


「アイとグフは空へ逃げろ」


一斉に空高くに避難したアイとグフを見届けて。


剛腕の刀を見極めて、振り下ろした。5頭のマンモスが倒れ。

更に横一文字に斬ると、全マンモスが胴体もろ共切断されてずり落ちた。


あの怒りが更なるスキル怒涛どとうを習得させた瞬間だった。

そして体が光りレベルアップをしていた。


『親分レベルアップだね、おいらはうれしいぞ』


「ありがとうなスラ」


『スラも頑張ってレベルアップするよ』


スラをなでてやると嬉しがる姿に、又も涙が出てきた。

ああ涙もろくなったなーー


『主は、先ほどの勘違い、シャレになりませんぞ』


「するとスラが生きていることは知っていたのか?」


『勿論です。何せ従魔の絆もつようございます。それとスラは物理攻撃が無効になったと言ってましたぞ』


「そうだったのか?と違うだろ!俺は聞いてないぞ」


『え、言ったような無いような・・・えへ』


後から下りてきたグフは、その話に付いていけない。

グフだけが話の内容に付いていけない。

何度も首をかしげて俺を見ていた。



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