第39話凝った罠




やけに魔物に出会わないなと、薄々感じていたこの通路。

更に警戒して進んでいたが、急にけたたましく脳内に鳴り響く。

その危険を俺に知らせる。


この通路は微妙に傾斜が付いていた。

長い距離での傾斜だった為に、罠探知にも感知されなかったが危険探知でようやく知った事実。

リップだけが、何もしないで進めば完全に滑ってゆくレベルの傾斜。


ツタとスライムらは天井を這い回るので、滑ることはないだろう。

俺もリップと同様で、知らなければ滑ってゆくだろう。


「ツタ、リップを抱えて移動できるか?」


『少し待って、抱えてみるから』


『おおお、浮かんでるぞ』


リップだけが天井に張り付いているツタによって、吊るされながら移動。

俺は空弾を作り出し、浮上しながらの移動。


目の前のフロア下に巨大な穴が開き、絶壁の先端に立っているようだった。

足が小刻みに揺れえだした。高所恐怖症の俺には堪えられない。

空弾で浮かんでいてもそれは変わらない。

あのまま歩いていたら、間違いなく滑り落ちていただろう。


「ツタはリップを抱えて、下に降りられるか?」


『大丈夫だよ』


『それは、おいらが重いみたいで失礼でないか』


お前は、何を目指しているんだと言いたいが我慢。

下へ降りていくと、300メートル以上も深い穴だった。

そして、その穴は剣山のように尖った太い針が生えていた。


そして50メートル先に通路の穴が見えている。


ツタとスライムらは針の穴をものともせずに這いながら通路に向かい到着。


『リップ、おろすよ』


『ありがとうなツタ』


仲むつまじく、ツルと細い根で絡ませて握手をしている。


俺の危険探知が危険を知らせる。


「何かが飛んでくるぞーー」


俺に向かってきたソイツを空弾で破壊。

リップは盾で弾き返して、壁を爆破させて大きな穴を開けさせた。


アイの光線の射程外からの攻撃。

俺は俊足を3度も発動して、かわして破壊してついに両手の空弾を相手にぶつける。

粉々にチリと成った正体は、サイのような魔物で背中から大砲のような物がせり出していた。

そして地面には魔石とカードが落ちていた。

久し振りにドロップしたカードを拾い上げて見る。


大砲


炸裂弾を発射できる(射程距離20キロ)


従魔の中でリップだけが遠距離攻撃が無い状態。

ここはリップに与えるべきだろう。


「リップ、遠距離攻撃が出来るように成りたいか?」


『成りたいぞ』


「分かった。リップの願いを俺が叶えてやる」


リップの前でカードをかざして念じる。

リップが光り輝き、そしてようやくおさまった。


「リップ、あの穴に向かって撃てそうか」


『大丈夫、撃ってみるよ』


花の口を穴の方へ倒すと、「バンッ」と音がしてリップが少し仰け反る。

爆破音がここまで聞こえてくる。


『少し衝撃を受けるけど、どうにか撃てるみたいだよ』


「そうなのか?好きなように使って大丈夫だからな」


『うん、好きなように使うよ』



通路を更に突き進むと、広大なフロアが目の前に広がっている。

【黒空間】から双眼鏡を取りだして観察。

ここから見える壁には穴が開いていて、あのサイが待ち構えている。

入った瞬間に全包囲から撃たれ続けるのだろう。

ここから見える範囲の両サイドの壁と向こうの壁で、20体のサイが気配で感じる。


「リップ、あのサイを狙って撃てるか?」


『やってみるよ』


花口を向けて撃ち出した。見事に命中してサイの遺体がフロアへ落ちてきた。

損傷の激しい遺体だが、周りの穴からは反撃は無い。


10体を倒した瞬間にリップが光りだした。


「レベルアップをしたみたいだな、リップ」


『うん、強くなった気がするよ』


成る程、従魔も自覚しているようだ。

そして見える範囲は倒したが、見えない範囲にも必ず居る筈。


「スラは、コッソリと近づき捕食出来ないか」


『うん、行ってくるよ』


何の疑問も持たずに行くスラに、何か申し訳ない気分に成ったが、もしもの時は飛び出して戦う予定だ。


『1体を倒したよ』


『又、倒したよ』


何と順調に倒し続けている。

日頃から見付け出すのに苦労したが、その経験から密かに相手に近づき倒せると思っていた。


『コイツで最後だよ』


もう最後のサイに飛び付いたようで、しばらくして倒したことを感じて飛び出した。

俺らが居た通路の上では、サイが消化されている姿がハッキリと見えていた。


『親分、カードが出たよ。これってリップが貰ったカードと同じだよ。これ欲しいな』


「本当にそうなのか?持ってきて確認をしてからスラに与えよう」


『嬉しいなすぐに持っていくよ』


穴から飛び出し、落下して着地の瞬間に体をバネのように衝撃を吸収。

ひらひらと落ちるカードをゲットしている。


器用に体の上に載せてやってきたスラ。

そのカードを取って見る。間違いなく大砲のカード。

スラにかざして念じる。スラは光り輝いた。


「どうだ取得したか?」


『うん、取得したよ。撃ってみるよ』


スラの体の中に砲弾が作られる工程を早送りで見ていた。

時間で7秒ぐらいだった。

そして急に音もなく撃ち出され、壁が大爆発して大穴が開いている。


嬉しいのか、又、撃ち出された。

同じ穴に更に大爆発が発生。より深くに穴が開いてしまっている。


「スラ、もう撃たなくていいぞ」


そう言いながら体をなでて褒めてやる


『分かった。もう撃たないよ』



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