第38話ドロ人間とアリ
従魔らが選んだ通路を進んだ結果。
色々な魔物と戦い、長い時間を費やした。
行き着いた先には、体育館程のフロアが広がっていて、地面が泥沼でぬかるんでいる。
底なし沼かも知れないし、下手に入ると抜け出せない可能性もある。
槍を取り出して、差し込みながら深さを調べると2メートルも入ってゆく。
「あ!取られた」
引き込まれると思った瞬間に手を放し、後ろにのけぞった。
突然に沼から槍を持った泥の手が俺に向かって槍を投げ飛ばした。
間一髪でかわし、槍は通路の天井から伸びたツルがガシッと掴み取っている。
『この槍、貰っていい』
ツタが嬉しそうに槍を持ってくるくると回して遊んでいる。
この泥沼に何かが居ることがハッキリした。
俺の身長より深いので入ること自体が無理だ。
絶対に沼に引きずり込まれる。
天井を見上げるが相当高く見えない。
フロアの壁はツルツルしていて、登山用のアンカーでも打ち付けていけば行けるだろう。
時間が掛かるしアンカーを持ってきていない。
次回からそんな道具も持ってくるべきかも知れない。
しかし後ろ姿を魔物にさらすのは不味い。
そんなことを考えていると、又も従魔らが勝手に泥沼に入ってしまう。
「何、勝手に入っている」
『何故・・・ほら大丈夫だよ』
ライムは泥沼の上を滑るように移動。キーは潜ってしばらくするとプクッと浮かびあがってくる。
リップは太い根をバタつかせて、泳ぐように移動。
その飛沫が俺の顔にピチャと掛かる。
ツタも這うように自由に動き回っている。
リップが太い根で何か捕まえたようだ。持ち上げられた正体は、ドロ人間で口や目は無い。
締め付けてベチャッと真っ二つにへし折られていた。それを花の中に入れる。
俺はそれを食うのかと口には出さなかった。
リップはリップなりの考えがあるのだろう。
俺もアイみたいに飛べれば問題無いのだが・・・
飛び回るアイを見てしまう。
「あ!そうか」
空弾を左右の手の平に作り、更に両足の下に空弾を強くイメージしてバランスを取りながら浮上。
急にバランスを崩し顔面を地面に強打。あと少しだったのに悔しい。
ポーションを顔に掛けると痛みは消えてゆく。
失敗した悔しさは消えなかった。
再度チャレンジすると、
「あ、・・・そこ・・・もう少し・・・ああ」
何とか空中で維持出来るように成った。
あとは移動だ。向きをゆっくりと変えて、通路に沿って進むだけ。
「お・・・まだまだいける・・・」
2時間も費やしてマスター。
いざ泥沼に挑戦。
『親分、あいつを全部倒したぞ』
「全部か?」
『全部だよ』
浮遊しながら向こうの通路に下り立つと、やはり地面の上だけあって安心してしまう。
そして通路を進むとこの通路は、一本道でようやく階段のフロアに到着。
この階段は危険だと感じた瞬間、体が光り危険探知を習得したようだ。
身の危険を探知して知らせる。俺のレベルだとこの下は危険地帯なのだろう。
階段を見続けて、身震いがしてきた。
早速、引き返して違う通路で探索でもしてレベルアップを図ろう。
「皆!俺に掴まれ階段ワープで移動する」
『おいらが一番にタッチ』
『ならおいらは、こうやって抱き着くぞ』
「皆、掴まっているか」
『掴まったよ』
『大丈夫だよ』
『OK』
『手を握ってるよ』
『今触ったよ』
『こっちも大丈夫だよ』
「誰だ掴まっていないのは」
『親分、遅れてごめんです。足につかまったよ』
一瞬で階段に到着。
従魔らの数を数えると、1・2・3・4・5・6・えーとスラはそこか、全員そろっている。
今度は右側の通路から攻略だな。
何なんだこのフロアは、直径1メートルの穴がそこかしこに開いている。
何やら穴からカチカチと音も聞こえる。
カチカチ響くフロアに剛腕の刀で斬りつけた。赤いスジが穴に直撃。
それでも穴から出る気配が感じられない。
「穴から出てくる魔物に気を付けて倒せ」
俺はフロアに入り周りを警戒。
出るは出るは全長1メートルのアリが、左の手に空弾を作りアリに投げ付けると粉砕する複数のアリ。
ツタは槍でアリを鋭く突き刺して数を減らしてゆく。キーの雷撃が天井のアリ達を直撃してパラパラとアリが落ちてくる。
「何匹いるんだ。次から次と出やがって」
リップは壁もろとも剣で斬り捨てている。壁に深く傷を残した。
その傷からも傷を広げて、アリが出てくる。
ライムはアリに飛び付き消化して次に飛び付く。
反省したようすのリップは、花で直接にアリに食らい付き食べだした。
美味しそうに食らうリップ。
アイの光線も引っ切りなしに連射。
アリを減らしているが、減らしたアリの数だけアリは出てくる。
しだいにアリの攻撃対象は俺に集中して激しさを増し、堪えらず空弾を使って浮上。
それでも天井から飛びつくアリに、手に保持している空弾で次々に粉々にして天井もろとも破壊。
その間に従魔らが残りのアリを倒し切った。
「助かった。どうにか倒し切ったな」
『助けた分の魔石を欲しいです。親分』
「仕方ないな、好きなだけ食べていいぞ」
『食べていいって』
『これも早いもの勝ちだーー1つでも沢山食うぞ』
『負けるもんか』
『おいらなんか、倒しながら食ってたぞ』
最近食うことに執着しているようで、俺には分からない美味さなのだろう。
俺はいつもの携帯食を食らう。
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