第37話1万人




多々良支部に行くとあの女性が元気よく声を掛けてきた。


「おはよう御座います。AIポーターが届いてます。早速ですが支払いをお願いします」


「ああ、ありがとう」


操作して支払いを済ませて、いつもの機械にカードを読ませた。

そしてAIポーターを触りながら、スマホとリンクさせて初期設定を1つ1つ決めて終了。

一瞬、奥の沙紀の顔が見えた。すると恐い顔で見ていた。


何か機嫌を悪くするような事でもしたか?

以前、配達で怒っていたな、AIポーターの事で怒っていたのか?

それも仕事の業務だと言ってやりたいが、更に怒りがひどくなるかも。


俺がドアから出て行くと、AIポーターが段差を4つのカタピラを駆使して、上下に揺れないように動いて追尾してくる。

まるで賢い犬のようで道路への階段もスムーズに下りる。

ここはいったん我が家に帰り、AIポーターにダンボール箱を幾つも載せてダンジョンに向かうか?。


我が家で荷物が一杯になっても、スムーズにAIポーターは動いてくれる。

しかし昨日の事件のせいなのか、冒険者の姿は誰も見かけない。

朝早くから畑仕事に出掛けるおじいさんも見えない。

何かあるのかなっと思いながらダンジョンへ入る。

そして1階フロアでAIポーターに触り階段ワープを発動。

誠黒ダンジョンの3階が見えたので決定。


見事に成功、AIポーターが傍らに居る。

従魔に試すのも恐かったので、AIポーターで成功した事でカードに戻さなくて済みそうだ。

今度から従魔らと一緒にワープが出来る。


早速カードホルダーからカードを取り出し、空中に放り投げる。

次々と従魔が現れ、スライムは重なりながら着地。


『親分、もっとばらけるように投げてよ』


「ああ、悪かった」


『許す』


今回は長く潜れるよう申請もしてる。

スライムらがAIポーターを不思議そうに見ている。


『これは何だ』


『お前は新種の魔物か?』


「これは俺らの仲間だから心配するな」


『仲間なら名を名乗れ』


「仲間でも話せないんだ」


『話せないのか?ならおいらが抱きしめてやる』


ガバッと体を広げて抱きしめている。


「AIポーターは、黒空間に収納するから開放してやれ」


開放されたAIポーターを収納する。


『バイバイ、おいらの仲間』


「前回の行った所まで急いで行くぞ」


『親分、分かった』


前回の道筋なら分かっているし、罠も知っている。

パチンコ玉地獄はスライムらが全弾受止めて無効化。


次の100体の足軽隊も侍大将を一番に倒すと、統制が取れずに従魔に次々と倒された。



そして広大なフロアにようやくやって来た。

この平らな場所で、あの遠くにせり出した丘に赤い鎧を着込んだ総大将。

兜は獅子を配し、毛で覆うことで獅子の頭を模した豪猛な印象の兜が威嚇いかくを発している。

それとは違う兜の下の凄い眼光が、更に威嚇を倍増させている。

この威嚇が従魔の能力を半減させた原因。


その前に7人の侍が片膝を付いて控えていた。


1万の赤い兵が鶴翼かくよくの陣で待ち構えて微動だにしない。


前回は何も考えずに突撃をして、28時間以上を費やして終わらせた。

しかし今回はPCで陣形を調べつくした。

この陣形の欠点は、中央突破であった。突破して後方を襲えば陣形が総崩れになる。

しかし俺なりの作戦で仕留めてやる。



「皆!全員で突撃」


従魔が動き出すと、敵陣の左右の騎馬隊が凄いスピードで向かってくる。

アイの連射で撃ちだされる光線が侍と馬を貫通して、一気に40人程の侍を葬った。

そして更に倒す数を増やしてゆく。


俺も既に駆け出している。

体には防御魔法を掛けて、黒い霧に包み込まれている。

【俊足】を発動。一気に距離を縮めて再度【俊足】を発動。

そこには、黒装束の忍者軍団100人が襲い掛かる。

俺は【暗黒球】を発動。

俺に殺気を持つ忍者軍団100人を逆に襲い飲み込んでしまった。

1分後には【暗黒球】も自然に消えてしまう。


俺はその結末を見ずに、【俊足】を発動。そしてもう1度【俊足】を発動。


目の前に座る侍大将に、剛腕の刀を振り下ろす。

侍大将は軍配で受止めようと振り上げるが、軍配と一緒に兜から鎧まで斬り下ろした。


「侍大将を斬ったぞーー」


それに反応して振り返る赤い兵達。

そして俺は輝きレベルアップをした。


近場に居た侍7人が向かってくるが、俺がダブルで振り下ろしてできた赤いスジ2つに一瞬で斬られた。


それ以降は赤い兵の統率は無くなり、従魔達に蹂躙じゅうりんされている。

鉄砲隊にキーの雷撃が落ちて消し炭になる前に、火薬袋が暴発。

連鎖するように暴発は続いて、爆煙が視界をさえぎってしまう。


アイは弓隊の攻撃を光線で撃ち落としながら、弓隊を倒し尽くした。


所々に炎が舞い上がり、火砕流を発生させて兵を巻き込み燃やしている。


この戦闘は2時間で終わらせた。


「祝いだ魔石を全部、食うなり吸収してもいいぞ」


『本当か?』


『親分に感謝』


『食べるぞ』


魔石が無くなると、リップとツタが後始末をしている。


『親分、ここに通路があるよ』


『いやいや、こっちにもあるよ』


成る程、通路は2つもあるのか?同じような通路、どっちを選ぶべきか?


「今回はお前達の多数決で決める。さあ分かれて選べ」


「右が5票で左が2票で右に行くぞ」



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