第36話人間との戦い
スマホが鳴り続けて奪うように取る。
目覚めた脳がフル回転してスマホを見ると、時間は3時を過ぎていた。
非通知で誰がこんな時間に電話をしたのだろう。
「はい、どちら様ですか?・・・え・・・はい・・・分かりました」
服を着て、背負いバッグを掴んで下のフロントに下りるとあの隊長と隊員が居る。
「金は払っている。すぐに行くぞ」
フロントの受付の人は、迷惑そうな顔をしてこっちを見ていた。
「鍵をよこせ」
仕方なく軽自動車の鍵を渡すと隊員に放り投げて、受取った隊員は俺の車に乗り込み走ってしまった。
「心配するな、君の家に届けておく。さあこっちに乗れ」
後ろの席の隊員は天井に上半身を乗り出し、機関銃を構え警戒を怠らない。
「よく聞け。外国の工作員10人が山に潜んでいる。どうも変わった支援スキル持ちが居るみたいで見つからない」
「それで俺にどうしろと言うのですか?」
「探し出して欲しい」
「相手は銃火器を持ってますか?」
「機関銃を持っているな。対戦車誘導弾までも発射された」
「それだと無防備に近い俺に、それでも探せと言うのですか?」
「探し出さないと村人が危ない事になり、人命が失なわれる恐れがある。俺は人の支援スキルが見えているから頼んでいる」
一瞬に頭の中が白くなった気分だ。何か悪い汗が出てきた。
「他のスキルは見えますか?」
「支援スキルだけだ」
「分かりました。村人の為に協力をします」
あのダンジョンに辿り着くと、ヘルメットと防弾チョッキを渡される。
俺はヘルメットを被りアゴの部分を調整して固定すると、防弾チョッキを着込んで調整する。
この行動で戦闘モードに切り変える一種の儀式。
既に相手の位置は探知済み。
しばらく歩きながら全範囲探知に集中する。
一番近い相手が自ら姿を現して、凄い眼で睨みつけてきた。
相手が右手を上げると、鏡を見るように俺は左手を上げる。
相手の顔は微笑んでいる。
今度は左手を上げると、俺も右手を上げる。
しかし相手の顔が急に苦悶の顔に変わる。
催眠を掛けたと思っていたのが、己自身が催眠に掛けられたと感じた瞬間だった。
そのまま後方へ倒れて気を失う。
俺は駆け寄り、後ろに手を回して手錠を掛ける。
足には拘束バンドで締め付けておく。
又もゆっくりと歩き探知に集中。
一気に走り出し、横に飛ぶと居た場所が撃たれていた。
対人狙撃銃で狙っている様なので、コイツから始めよう。
攻撃をかわしながら進み岩陰に飛び込むと、体をかする様に弾丸が通過。
後ろの木に穴が開いている。
相手を繊細に探知して、まぶたが下りる瞬間に移動して身を隠す。
このスナイパーは中々の集中力で、俺の隠れている所から目をそらさない。
仕方ないので顔の微細や心拍数などで、まぶたの下りる瞬間を予測するしかなかった。
木や岩に隠れて目的地に近づいたが、相手が5メートル先に居るが隠れる物はもうない。
俺は姿をさらし相手も睨みつけた。
相手は拳銃を素早く構えたが、崩れるように倒れた。
俺の催眠で気を失わせた瞬間だった。
俺は近づきながら相手の目を何度も見ていた。
徐々に催眠が掛かっている事を気取られない工夫。
戦闘が始まる前までは、魔物と違い人間相手に戸惑いも隠せなかった。
本当は催眠が使えるか、自分自身でも心配だった。
相手の目を何度も見る事で、自信が持てるようになり自分自身に言い聞かせて勇気をふるい立たせた。
次の相手は8人がかたまって警戒モードに入っている。
3人は対戦車誘導弾を所持して、大きなケース5個も後ろに置いている。
何処かに連絡をしている様で、大型ヘリでも救援に来るのか?
連絡しているのがリーダーで、配下に何か外国語で話している。
俺が凄いスピードで近づき、凄い爆発をかわし銃弾もかわしている。
皆、驚きながらも撃ち続けるしかない。
1人の腹にボディブローをかまさして気絶させて、ジグザグに後方へ飛ぶ。
ナイフを構え追いかける相手にアッパーを振り上げ、そいつを盾に後方へ更に飛跳ねる。
いつ来たのか俺の後ろにリーダーが居て、マシンガンの引き金を引き全弾を撃ち尽くした。
リーダーは笑いが止まらず、最後に日本語で「これが俺のスキルだ」と大きな声で叫んでいた。
俺は1人1人を拘束して、最後のリーダーもアッパーで気絶させて拘束。
俺は既に幻魔で幻の世界で戦わせていた。
リーダーの笑いに、悲しい者を見てしまった。
ようやく隊長と隊員がやって来て、拘束された身を担ぎ運び出す。
隊長が俺に近づき話し掛けてきた。
「どうだ【JIBA】に入らないか?大変だが遣り甲斐のある仕事だ」
「冒険者として頑張りたいので、お断りします」
「そうか、残念だ」
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