第34話3階層は広い誠黒ダンジョン




この3階層の階段は何処にあるのだろう。

迷路の端にも辿り着けない始末で、なんだかイライラとしてくる。

もう既に今日が帰る日に成って諦めモード。

時間は13時16分。

俺のレベルも既に41まで上がっているのに、先が見えないこの苛立ち。

探索する距離が伸びる度に、徐々に動きや攻撃力が上がり俺らをはばむようになった、忍者・侍・足軽達。

この広大なフロアで最後の鉄砲隊に【黒沼】をダブルで発動。

黒い沼が撃つ体勢にいる鉄砲隊50体を引きずり込み、上に発砲する者や逃れようとする者がいるが、抗う事も叶わず黒い沼へ消え失せる。


『親分、終わったね』


『魔石の半数を食べてもいい』


「半数だけだぞ」


従魔は従魔なりに俺に気を使っているみたいだ。


『OK』


『沢山食べた者が勝ちだぜ』


『なんだとーー負けないぞ』


結局半数以上を食うか吸収してしまう従魔。欲望に忠実なのだろう。


全範囲探知も50メートル内から拡大することもなくなった。

その50メートル内に魔物が居ないことを確認。

どうしょうもない疲れで続けても命を危うくする恐れもあるので、今日は早めに帰るか?


「今から地上に戻る。カードに戻すぞ」


『美味しい魔石だったね。又、今度たらふく食ってやる』


『親分、了解』


戻すとカードホルダーに収納。

多々良ダンジョンへ階段ワープを発動。

1階出入り口に見知らぬ人が休憩中。2階の階段に切り替え見渡す。

人も魔物も居ないので決める。


2階の階段前で【黒空間】から背負いバッグを取り出し肩に掛ける。

階段を上がり、1階でスライムナイフ取り出し駆け出した。

流れる様にスライムを倒し、カードが無ければ先を急ぐ。


出入り口には、まだ見知らぬ人が8人が座り込んでいる。

1人がむくりと立ち上がり俺を見た。


「あ!山田さん。もしかして移住者ですか?」


「否、違う。特殊部隊のメンバーだ」


「特殊部隊って何ですか?」


「それ以上話せない」


「そうですか。お先に失礼します」



ギルドに入ると見知らぬ女性が窓口に座っている。

どうやら俺に気付いた様だ。


「はじめまして。新人職員の青葉渚あおばなぎさです」


「どうも青柳誠です」


「何をにやけた顔をしてるの」


キツイ声で奥に座っている沙紀が睨んでいた。


「あんた知っているの?あのダンジョンの正式名が【誠黒せいこくダンジョン】に決まった事を。せいは誠って書くのよ」


「何故、俺の名が入ってるんだ」


「知らないわよ。普通は地名が付けられるけどね」


俺は機械に冒険者カードを読ませて、急いで外に飛び出した。

何故だか恥ずかしい。

早足で我が家に戻ると温泉発掘業者の佐藤さんが、トラックに荷物を積み込んでいる最中だった。


「あ!佐藤さんどうかしましたか?」


「いい所へ帰って来ましたね。温泉が出たんです。今パイプも繋がり今日でも入れますよ」


「本当ですか?」


「金額は村役場が立て替えて貰いました。何か大事な話があると鈴木課長が言ってました」


「そうでしたか、ありがとう御座います」


「今回はいい仕事が出来てこっちも嬉しいです。源泉場所はダンジョン関係者によって道が作られて助かりました」


何がなんだか分からないまま話が進み過ぎて、疑問だけが空回りしてきた。

訳も分からないことは後回しにして、急いで温泉に入ろう。


試しに風呂へ温泉を入れていると言っていた。

内風呂がなみなみと温泉が溢れて掛け流し状態。


外の露天を見ると豪華な岩風呂にポチャポチャと湯が注がれていて、湯煙が立ち昇っている。

桶で頭から掛けて体にも掛けて、タオルで体をこするとあかがでるはでるはで驚く。

それも湯をふんだんに掛けて洗い流して、ゆっくりと浸かってゆく。


「ハーァ気持ちいい」


1時間近く浸かった。洗い場で再度、頭と体を洗うとふやけた肌から垢がまだ出てくる。

一生懸命に体を洗い続ける。



PCでは、正式に誠黒ダンジョンのことは一切書かれていない。

しかし岩手の方で新しいダンジョンの発見が書かれていて。

青のダンジョンと承認されている。


青の冒険者で上級冒険者として有名なのは、青北刀せいほくとう使いの西川仁にしかわじん

振り下ろした先には、青いスジが走り魔物を斬り裂く為に注目を浴びている。

あの侍と同じ武器なのかと思い出し、動画の刀を詳しく見るが刀身に青い模様が入っていて違う刀だった。


しかし俺の剛腕の刀が出す赤いスジと、原理は似ているのではと、動画で技の参考に見続けた。

刀の返しが参考になった。剣豪佐々木小次郎のツバメ返しのような技であった。


そして上級冒険者は、25階層の更に下に挑んでいる。

25階に辿り着くまでも日数が掛かり大量の食量と水が必要。

その為に大量の荷物を運ぶポーターが必要。

この先、誠黒ダンジョンを攻略し続けるには、5日程度の日数では思うように攻略出来ないだろう。

上級ランクの冒険者みたいに、俺もポ-ターが必要。

そうしないと【黒空間】の存在がバレてしまう。


今ではAIのポーターが誕生して、上位ランクの冒険者に貢献している。

電源は魔石の為、電源を心配しないで使い続けられる。

価格は1台2000万円以上で階段の上り下りも可能で、冒険者の後を一定の距離で追尾。

言葉での命令にも忠実に従う。

追加機能で最悪の場合は、けたたましく音を響かせて囮にもなる。


中には機銃を備えるポーターもいる。

(日本は原則禁止だが銃砲所持許可を取ってギルドに申請すれば使用出来る)


まずは普通のAIポーターを画面を見ながら購入ボタンをクリックする。

在庫が3台も有ったので、2日後に支部に配達と表示。

次回の探索日には支部に届いているだろう。

3週間の申請でもするか?それとも2週間にするべきか?今から悩む。


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