第29話あのダンジョン




かれこれ何体の黒球体を倒したのだろうか?

100体以上からは数えていない。

そしてようやく黒い魔石をゲットすることが出来た。

ポーチに入れたが、今の所使い道は分からない。

普通の赤の魔石みたいに電気が取れない。

異色の魔石はギルドのダンジョン研究所で研究されているらしい。

新たな発見や利用方法は報告されていない。


ピー・キー・ライム・アイには、俺が剛腕の刀で倒した奴の魔石を与えている。

時たま跳び付き消化する場面もあるが、スラの討伐数は断トツ。

続いてツタが2位でリップ3位。


「あ!階段を探知」


『どっちに行くの』


「5メートル先の左通路へ行け」


『親分、分かったよ』


右へ行き、更に左であとは真直ぐ行けば階段に辿り着ける。

俺が指示しながら先を急ぐ俺達。

このダンジョンに来てから12時間以上も経過している。

多々良ダンジョンを入れると、26時間以上も戦闘をしていることに成る。


今は緊張しているので眠気は感じないが、階段の距離を考えると2時間は掛かるだろう。


「前方から5体来ているぞーー。後2時間頑張れ」


ツタの槍使いは、人間の動きを超えている。

人間は関節があるので関節の動く範囲しか動けない。

ツタは関節がない状態でクネクネと動かす為、全方向に攻撃が出来る状態。


それに対してリップは、剣の振りに力がこもっていて一振り一振りの剣速が鋭い。

今、黒球体を斬った一振りも素晴らしい一振りだ。


俺はツタに普通の槍1本を与え、リップにも普通の剣を与えた。

少し心配しながら見ていたが、上手く扱って倒す速度がアップしている。



どうにか辿り着いた。


『親分、俺らコンビは強くなる為、戦ってくるぞーー』


俺が止める間もなく行ってしまったが、危険だと思えば戻ってくるだろう。


『俺らも行きたいぞ』


「スラは残って俺を守れ。リップとアイでコンビを組んで行け。ツタとライム同じだ」


『じゅあ行って来るぞーー』


「チョッと待て、この袋を持ってカードがドロップしたら回収だ。ツタは初めてだが出来るか?」


『出来るよ』


「回収を忘れるなよ」


『わかった』


『OK』


スラだけが残っている。


「スラ、何処に居る」


『天井だよ』


見えない体が止まっていると、音もしないので存在を感じなくなる。

それがスラの特色かも知れないな・・・


なんだか緊張が途切れたようだ。

急に眠気が襲ってくるが抵抗も出来ずに、崩れ落ちてしまう。

もう目も開けられない・・・




目が覚めて、急に飛び起きて辺りを見渡す。

そしてようやく寝てしまったことを思い出した。


俺の周りにはカードが見当たらないので、従魔らはまだ帰っていないのか?


「スラ、変わったことはなかったか」


『何もないよ』


背負っていたバックから、充電し続けているスマホを取り出して日付と時間を確認。


深夜の1時を過ぎて2日目に成っている。

体内時計を戻す意味で、スマホの目覚ましをセットして再度寝る。


1時間もボーとしていると知らない間に寝ていた。




スマホの鳴り響く音で目覚めると、従魔全員が揃っていた。


地面には、5枚のカードがあったので拾うと、スライムらが変な行動をしている。

跳びはねて壁に向かい、壁を基点に又跳びはねて天井にいき、次は体全体で跳ね返り地面に強襲している。

何度もやったのだろう地面のあっちこっちが凹んでいる。


「お前ら、何をしている」


『黄金コンビが編み出した。物理攻撃を教えていたんだ』


「成る程、その攻撃で黒球体は倒せたのか?」


『一発でKOだよ』


「偉いぞ」


俺は1匹1匹をなでて褒めてやる。

他の従魔はそれが不満のようで、念話で言わないが伝わってくる。

仕方ないので全員をなでて「偉いぞ」と褒める羽目になってしまう。

それで納得したようだ。


それでようやくカードが見られる。


1枚目は黒く塗り潰されたスキルカードで裏を見た。


魔法防御


魔法攻撃から身を守る


成る程、黒球体のスキルであった。

早速カードに念じてイメージする。突然電撃が流れるように体中に駆け巡る。

そして体から黒い霧が徐々に出てきて、体を被いつくした。

これが魔法攻撃から防いでくれるのだろう。

何だか黒いオーラを身にまとっているみたいだ。

この黒い霧を止まれと念じた瞬間に消えてしまった。


次のカードは4枚とも同じカード。

防具カードらしく、黒い円形の盾が描かれていた。

裏にはハッキリとシールドと書かれていた。


黒いラウンド・シールド


魔法攻撃から守る


DEF3


次は魔法攻撃を防ぐ盾か?それにDEF3が付いている。

これは貴重な品だ、売ったらどれぐらいするのだろう。

前回のオークションは世界中に話題をまき散らした。

慎重に行動しないと、あの隊長の様に目を付けられてしまう。

しばらくは保留だ。


1枚はカードホルダーに収納。3枚を具現化させる。


俺は黒いラウンド・シールドを拾い、左手に装備して振ってみる。

まあまあな感じで装備出来ている。


ただ剛腕の刀は、右手の片手持ちになってしまう。

面倒だがカードに戻したりすればいいのか?


誰かが俺を突っついている。


「誰だ」


『それが欲しい』


リップが根で地面にある黒いラウンド・シールドを指している。


「リップとツタ、取っていいぞ」


ツルがいち早く取って、遅れてリップが取って高々に上げている。



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