第28話武器を持たせて




今日も早くからダンジョンに潜っている。

玄関先で寝てしまった体験が忘れられずに12階層に居るが、全範囲探知にあの通路が見当たらない。


「前に来た、あの石碑の前まで連れて行け」


『分かったよ。あの広い所だね』


従魔らに言ってしまったが、はたして行けるのか?疑問だ。

従魔らに戦わせながら進むが、何故何故の疑問だけが頭の中を駆け巡っている。

12階層へ行けば、あの疑問が解決するかもと期待したが、更に疑問だらけになる。


今まさにピーが輝き、更なる上位にランクアップしたのだろう。

体全体が真紅しんくの赤に成っている。

打ち出す火球も赤い炎から青い炎に変わって威力も増している。

それを証明したのが人型の魔物が、瞬時に燃えてなくなっている事であった。


何度も人型を倒してやって来た所には壁しかなかった。

叩いたり、入念に切れ目がないか探したが、それらし物は見つけられない。

実際に目の当たりにしても信じられなかった。

俺は諦めてモンモンとした気持ちだけが残った。


「階段へ戻るぞ」


『OK親分』




「今から階段ワープを使う。お前らはカードへ戻すぞ」


『もうカードに戻るの、ワープ後は早く戻してよ』


『仕方ないなーー親分』


階段に着いた俺は、従魔らをカードに戻し階段ワープで3階へワープをした。

スラのみ元に戻した。


この階層では、他の冒険者に出会う可能性がある為、スラだけを戻した。

スラなら透明で気付かれないと思ったからだ。

今のスラは動いていないので、完全に透明状態。


「スラ、ここではお前だけで、出会うコボルトを一匹残らず倒せ」


『分かったよ親分』


コボルトは現れた瞬間から倒され、倒された事すら分かっていないだろう。

魔石はスラが食べている。

俺は武器カードを回収し続ける。


「その通路は右だ」


剣カードがワンランクアップした。



STR3


-  -  -

剣+1


STR6


更に戦い続けて今度は槍カードがワンランクアップした



STR4


-  -  -

槍+1


STR8


結局この3階層のコボルトを倒し切った。

そしてワンランクアップした武器も増えた。

剣+1が3枚。槍+1が2枚。弓+1が1枚。


そして階段でスラをカードに戻した。

2階へ行き冒険者が居ないことを全範囲探知で確認。

今度は緊張しながら階段ワープを発動。

うっすらと見えた階段付近を見渡すも人は居ない、ワープを決める。


例の見つけたダンジョンの階段付近に立っている。

階段を認識していれば、他のダンジョンへの階段までワープが出来た。


人が居ないことを再度確認。

右手に持った剛腕の刀に、握る力が増す。

通路手前まで走りピタリと止まる。

全範囲探知で調べると、15メートル先に魔物が居て気付いた様子はない。

カードを投げて従魔らが地面に着地。


「15メートル先に黒球体がいるから倒せ」


『分かった親分』


従魔らが動き出し俺は後を追う。

今回の階段ワープは成功で11ポイントもMPを消費していた。

多々良ダンジョンから向こうダンジョンへワープするのに10ポイントも消費したのだろう。

1ポイントは2階から1階への消費だと思う。


いよいよ海外のワープへ視野が広がる。



アイの光線も弾かれ、ピーの火球が当たるがあの霧によって防いだ。

キーの雷撃も同じように防いだ。ライムも同じだった。

スラの攻撃だけが効果を発し、地面に落下して痙攣けいれんを起こしている。


これで納得した。コイツは魔法攻撃が効かないのだ。

毒針は物理攻撃になるのだろう。


俺は剣+1カード2枚と槍+1カード2枚を取り出し、武器に戻した。


「リップとツタ!好きな武器を使え」


リップの細い根が剣+1と槍+1をがしりと掴んだ。

ツタも同じようにツルで掴んでいる。


あの時から物理攻撃のパワーアップを考えた。

そのため従魔の物理攻撃担当に更に攻撃アップを図った。

俺の黒魔法を防いだ黒球体には、物理攻撃しか効かないと判断。

その為の3階層のコボルト討伐で、強い武器が必要だった。

カードを掴む事が出来るなら武器も持てる判断。

ただし弓は無理だと諦めた。


「リップとツタ!その武器で戦え」


『どう使うの』


「貸してみろ、剣はこの刃で魔物を斬る。横に斬ってもいい」


『分かった。これはどう使うの』


「交換しろ。こうやって突く、突いて突いて突きまくる。そしてこれも刃の部分でこうやって斬る」


『分かったおいらの槍を返して』


リップに放り投げると、パシッと受取る。


「ツタも使い方は分かったか?」


『うん、分かった』


本当に分かっているのか?すると誰も居ない空間にツタが槍で突きまくっている。

中々な攻撃スピードで期待出来そうだ。


「丁度3体の黒球体がやってくるぞ。リップとツタでやっつけろ」


『頑張るぞ』


『うん、分かった』


天井からの槍の攻撃が連続突き刺しで、2体の黒球体が串ダンゴの様に刺さっている。

残りの1体はリップの横一文字に斬られ2つに切断されている。

その断面も綺麗に斬られている。



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