第27話山に問題ありのその後




早くから村役場に行き、家と山の購入手続きをようやく済ませた。

田村のおばさんは気になっていたのだろう。


「マコトはあのダンジョンに入ったんだろ」


「入ってませんよ。もし嫌疑が掛けられたらおばさんの責任ですよ」


「ああ恐、あんたも言うようになったね」


「村役場はどうするんですか?」


「それが問題なのよ。隣村の境目だから村長は我が村の土地だと譲らないのよ。私も知っているけどあそこは村の土地だね」


「共同で管理すれば、簡単ですよ」


「あんたは知らないだろうけど、結構多々良ダンジョンは村の収入源の30%を占めているのよ」


冒険者の数も少なくギルドに販売される品数も少ないのに何故だ。

何か裏のからくりでもあるのか?


「何を考え込んでるの」


「世の中は世知辛いと」


「そうよ世の中は世知辛いのが当り前なのよ」


「しかしあんなに近い所にダンジョンが2つあるのは異常ですよね」


「わたしは聞いたのよ。絶対言わないと約束よ」


「約束します・・・」


「これは村役場に来ていたギルド高官の話をたまたま聞いたのよ。ダンジョン数値が高いって聞こえたのよ」


「本当ですか?」


これは不思議な現象だ。

ダンジョン数値は低級魔石を使って、ダンジョンからもれるマナを測定される数値。

ダンジョンがダンジョンで無いか、外から確認できるので信頼の厚い機器であった。

ダンジョンの色に関係なく一定の数値のハズ。

高い数値が計測されたのは、ダンジョン爆破後に計測された数値だけだ。

これはもしかすると、魔物がダンジョンより出て来る前触れかも・・・


だから俺の家の前を、軍用トラックが何台も走っていたのか?

家に帰ったらPCで調べてみるか?



あれ?、誰かが玄関先に居る。

近くまで来てようやく昨日送ってくれた隊員2人だと気付いた。


「隊長が呼んでいる。来てくれないか?」


「断ることは出来ないみたいですね」


「ダンジョンに潜る積もりで来てくれ」


玄関に入り、壁から防具を取って装備してゆく。

玄関を出ると、先導されながら4WD車に乗せられ走り出した。

いつの間に山の中に道が出来ていて、今でも重機が動いていた。


ダンジョン前で降ろされ、案内されたテントにはあの隊長と若い隊員2人が待ち構えて居た。


「又来て貰って悪いね」


「潜ることが決定のようですが?」


「6色の人間を潜らせたが、ダメだった。多々良ダンジョンの冒険者で潜れそうな人間は君だけなんだ」


「だから潜れと」


「潜ってダメならすぐに上がればいい。これはダンジョン法の特例11に該当するので断れないよ」


「それは昔に聞いた覚えが・・・」


「この新人2名と潜ってくれ」


俺は諦めて、2人が階段を下りてゆくので付いゆく。

新人の緊張はすぐに俺にも伝わり、ダンジョン経験が少ないのだろう。

どう考えても色に染まっていない人間は、特別な支援スキルを習得したか何か問題が有るかだ。


俺の体には異常が無い。

すると多々良ダンジョンと同じ色だと確定。

魔物探知を発動。近くに感じる。

しかしあの2人が勝手に歩き出し通路へ入って行く。


「何、勝手に進むんだ。戻れーー」


どうも変だ、駆け出し2人を捕まえた時には、2メートル先に黒い球体が浮遊している。

【黒球】を放つと、相手の黒球体は周りの黒い霧を盾の様に使い【黒球】を跳ね返した。

急いで剛腕の刀を取り出し、振り下ろした。紅いスジが霧と黒球体を2つに切裂いた。


新人の顔を見ると、空ろな目をしているので、平手でビンタするも正気に戻らない。

全範囲探知を発動。遠くの魔物がここに向かっていること探知。

地面にあるカードと剛腕の刀を収納。魔石をポーチ入れ、2人を強引に引張りどうにかダンジョンを出た。


「この2人は、どうかしているぞ。勝手に通路へ入って行きやがった」


2人はなおもダンジョンへ歩こうとするが、周りの隊員に取り押さえられた。


「どうした高橋、しっかりしろ」


「隊長!三上と高橋は意識が朦朧もうろうとしています」


「ヘリへ運べ」


慌ただしく2人が運ばれ、遠くの方でヘリの音が聞こえている。


「君は大丈夫のようだ。ここでなくテントで詳しく聞かせてくれ」



テントに入るなり椅子に座るようにすすめられる。


「さあ、話してくれ」


「俺に異常が無かったので多々良ダンジョンと同じ色だと考えていたら、あの2人が勝手に通路へ歩き出した。どうにか引き止めた」


「音とか匂いはしなかったのか?」


「音や匂いは無かった。それと黒い球体が浮遊して向かってきたのでどうにか倒した。あ!これがその時の魔石だ」


テーブルの上に魔石を置くと、あ!!黒い魔石だ。

始めて黒い魔石だと気付いた。

あの時は急いでいたので、ポーチに入れる時に確認しないまま入れていた。


「黒い魔石か?するとあのダンジョンは黒のダンジョンか?」


ダンジョンは普通に魔物から赤い魔石が取れるが、稀に違う色の魔石が取れることがある。

その取れた魔石でダンジョンの色分けをしている。

赤のダンジョンだけが違う色の魔石が出なかったダンジョン。


なので黒は、まだ確認されていない色になる。


「これは大変なことに成った」


そして3時間近くも尋問されて、黒い魔石も預かり証を渡され解放。

俺はクタクタになった状態で家路についた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る