第25話謎の声




階段に辿り着き、ようやく気持ちも落ち着きだした。

幻魔カードを取り出し、見詰めながら念じる。

心の奥底から魂の叫びが始まり体を駆け巡った。


なんとなく幻魔を理解した。

そして、幻魔は支援スキルに分類されている事も理解した。

すると地上でも、この幻魔が使用できるのか?

色々と考えさせられるスキルのようだ。


試しに従魔らの目の前にゴブリン1体を、幻魔で作り出してみた。

速攻でリップが捕獲して花の中に入れて食っている。

俺が幻魔で作ったので、モノクロに見えているゴブリンで不思議な光景でもあった。



「お前らカードに戻すから、怒るなよ」


『わかったよ』


『了解』


『うん』


従魔らをカードへ戻した。時間は19時20分。

階段ワープを発動して、1階出入り口の階段付近を確認すると誰もいない。

新しい移住者が居るかと思ったが居なかった。

即座にワープを完結させて、出入り口の階段前に瞬間移動。

もう1度周りを見て誰も居ないことを確認。


【黒空間】からバッグを取り出し、急いで階段を駆け上がる。

支部に入ると機械に冒険者カードを読ませた。

カウンターに袋から中級魔石Bを102個をかき出した。

それを見た沙紀が驚いている。


「あんた、そんな階層に潜って大丈夫だったの」


「目の前にいるから大丈夫だよ」


「102万円ね、現金にする、それとも振込みする」


「現金で頼むよ」


「はい、どうぞ」


「新しい移住者は、帰ったのか?」


「夕方には帰ったけど、何か気になるの」


「いや、ただなんとなく」


「そう、父さんにも困ってしまう・・・」


現金をバッグに入れて支部を急いで出た。

そして我が家に帰ったら、あの邪魔な木が切られて根っこも引き抜かれていた。

下の町の工務店に頼んで、庭と家の改修を頼んだ。

庭の一部には内風呂と露天風呂が作られる予定。

改修された家とこの家は渡り廊下で繋がる。


そんなイメージをしながら広くなった隣の庭と家を見ていた。

やはりあの木が風の通りを邪魔していた。

俺の顔に風が吹き付けて、気持ちが良く周りの光景を見ている。

すると山奥に見える満月が美しく、12階層の天井の満月を思い出した。

突然、脳内に声が響いてくる。


『汝は今何を思い、何をするか分かってい・・・みるがいい』


薄れる意識に、その言葉だけが残ってい・・・




体が痛く、目覚めて驚く。

家の玄関先で寝ていた。


「そうだ、突然声が響いてそのまま寝てしまったのか?」


腰あたりが痛く、ひねった状態で寝ていたのだろう。

玄関に入り、防具も脱ぎ捨ててよろけながらどうにかベッドへ倒れ込んだ。

不思議な経験をしてしまった。

あれは何だったのだろう。

あの言葉だけでは何を伝えたいのか、俺には分からない。


横になったことで、疲れがどっと感じる。

玄関先で寝た事で、疲れが取れた訳では無い。

体自身が緊張し続けて、疲れも溜まっている。

段々と眠くなって来るので、そのまま抵抗することもなく寝てしまう。



起きたのは、隣の改修工事がうるさくなった為で、時間は14時21分。

風呂に湯を溜めて、シャワーを浴びて洗い続ける。

風呂に浸かりしばらくすると、体をなでるとあの痛みもなくなり一安心。

風呂から出るとドラム式洗濯乾燥機は洗い終わり、回転しながら乾燥段階に入っている。


村に1軒の電器店で購入。

俺が潜っている期間に、勝手に搬入して設置していった。

俺は玄関に鍵を掛けていない。


この村ではそれが当り前で、この家に貴重品などもなくテレビやPCも中古で買った物。

しかし、金が入ったことで欲しかった、ドラム式洗濯乾燥機を買った。


電器店の鈴木のおじさんも、最近購入者が増えたと喜んでいた。


この多々良村で年1回の草刈で、鈴木のおじさんに教えて貰いながら、エンジン刈払機をどうにか扱った。

若い俺でも、村にとっては即戦力として期待されたのだろう。

それを切っ掛けに、鈴木のおじさんとも話せるようになった。


スマホが鳴り出し、出ると村役場の鈴木課長からだった。


「すると開発を始めても、問題なしでいいですか?・・・はい・・・はい・・・分かりました」


明後日の月曜日までに冒険者カードでの支払いを、ギルド多々良支部で行なって欲しいと言われた。

ギルド支部には支払い依頼済みで、支払い決算を済ませばOKらしい。

村役場には、冒険者カードでの支払い決算をする機器が、導入されていないのが原因。

今は導入にあたっての検討中らしい。

今後、冒険者移住者を本格的に進めるのなら、必要な機器である。


支払いを済ませたなら、山の開発も進めてもらっても良いらしい。


すぐにギルド支部に向かうと、山田のおばさんがPCに向かって打ち込んでいた。


「おばさん、村役場の支払いを頼めますか?」


「聞いているよ。今セットするから」


PCの端末に冒険者カードを差込、冒険者番号と暗証番号を入力。

村役場の支払い項目が出てきた。

聞いた金額に間違いないので、決算ボタンを押し、再度確認ボタンを押すと支払い完了。


「あんたも稼ぐ様になったね」



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