第24話18階層




16階層の魔物と言うべきか、グレーの霧が迫ってくる。

キーの雷撃も効かず、ライムの酸球は当たった部分のみしか溶かしていない。

ピーの火球はフワリと霧はかわしている。

もちろんツタのツル攻撃なども、あの霧の中をすり抜けている。

どう見てもダメージを与えていない。


俺のわずかな攻撃魔法【黒霧】を発動。

動きは遅いが、グレーの霧をむしばみ全滅させる。

同じタイプだったので倒せると確信していた。


『親びん、つよいな』


「スラ、変な呼び方をするな」


『だめですか、親びん』


「だめだ!」


『わかった』


この16階層は【黒霧】を発動したまま進むしかない。

減ったMPも【吸魔】で回復して、更に攻略を進める。


地図アプリも16階層を攻略した合図が出ている。

そして、カードが1枚もドロップしなかった。

やはり俺のドロップ率が悪いことだけが分かった。


従魔らをカードに戻し、17階層へ繋がる階段へワープで飛ぶ。

そして従魔カードを従魔に戻すと、従魔が急に念話をしてきた。


『親分、急にカードへ戻さないで』


「時間短縮だ、いい考えだろ」


『こっちの身にもなってよー』


「そうか、言ってから戻せばいいんだな」


『そうだそうだ』


他の従魔までも賛同してきた。

従魔らは、最近念話に慣れたみたいでよく話し掛けてくる。

1人で話すのも辛い物があるからいいのだが、程々にしてほしいと思う。


「17階層へ行くぞ」



17階層は16階層より迷路として更に大きい。

俺の全範囲探知でもカバー仕切れていない。

16階層の霧の数より多い、これは2時間ぐらい探索して戻った方が良さそうだ。


「12メートル先の魔物を倒すぞ」


ここは念話で頑張るぞーと言うタイミングだが、コイツらはそれが分かっていない。


「何だこの臭さは、あの魔物が原因か?」


それはヘドロの塊が地面を這いながら向かって来ている。

バックから防毒マスクを取り出し装備。

何とか臭さが緩和されたが、ヘドロは倒され地面に薄く広がっている。


ツタがツルでその地面を触り探している。

魔石は吸収され、カード1枚を俺に渡して来る。


どれどれ、期待しながらカードを見る。


体臭


臭い体臭を発することが出来る


「何だこのカードは、絶対に身に付けたく無いスキルで何だか臭ってないか?」


捨てる訳にもいかないので保留だ。

そして、又もヘドロがやって来ている。


キーの雷撃がヘドロを襲う。最後の一撃が何かを破壊して破裂音が聞こえる。

多分、ヘドロの中に核があってそれが弱点だったのだろう。


何度も戦い10体のヘドロを倒した。


「今日は引き返すぞ」


『ボス、黄金コンビは残って戦うぜ』


「負けそうだったら逃げるんだぞ」


『分かった、負ける相手じゃあ無いよな相棒』


『おう!』


コンビを残して俺らは引き返した。



一夜を明かした俺らは、全範囲探知でコンビの位置を確認。

その位置に向かって行動を開始。


全範囲探知を探知していて、コンビがヘドロを倒したことを探知。

これも使いようだと感じる。


1時間後にやっと合流。

ピーはププィとカードを吐き出す。

6枚のカードは全部が体臭カードで、俺は思わず地面に叩き付けた。


『親分どうした』


「カードが多くてビックリしただけだ」


『そうか、もっとカードをゲットしよね』


なんか、俺は悪い人間の様に思えてしまう。

純粋な従魔を汚さない為にも、俺にはもっと注意しないといけない。


順調に進みこの17階層も制覇。

体臭カードが10枚揃い、物凄い体臭カードになったが保留。



1時間後には18階層に下りた。


魔物探知が無数に居る魔物を知らされている。

全範囲探知を発動。迷路には魔物の赤で染まっていた。

ゾワゾワと音がしてきて20センチ程のアリが、通路を埋め尽くしていた。


従魔らの遠距離攻撃も始まっているが、対応が追いついていない。

【黒霧】を発動して、広がる【黒霧】によって死滅するアリ達。

一瞬撤退を考えた。

アリ1匹の防御力が弱そうに感じたので、【黒霧】を広げて威力を弱めても対処できると考えた。

【黒霧】から逃れたアリは従魔が退治。


もう1万匹以上もアリを倒したが、カードと魔石のドロップは無い。

魔石が出ない事に、違和感を覚えるがここは進むしかない。

1万匹以上なら1枚は必ずドロップする筈なのに、他に原因があるのか?


更に前進速度を速めてアリを倒してゆく。


ついに紅いアリを発見、【黒霧】に触れても死滅しない防御力を発揮している。

【黒球】を放つとジャンプしてかわそうとするが、俺が念じて軌道修正に成功。

空中で逃れないアリに命中。

その瞬間に居たハズのアリ達が居なくなっている。

もしかしてあのアリ達は幻覚だったのか?


どう考えても疑問だらけだ。


俺は駆け出し、紅いアリの消えた下にかがんだ。

20センチ程の魔石があったからだ。

見たことも無い大きさの魔石。

それとカードもドロップしている。


従魔が来ない間に大きな魔石を【黒空間】に収納。

そしてカードを確認。


幻魔


深層心理までも騙す、幻影を見せる。


成る程、やはりまぼろしのアリと戦っていたのか、従魔も騙されていた様だ。

今までの戦いを思うと何だか疲れた。


ここから戻れば20メートルの所に階段がある。


「階段に戻るぞ」


『あいつら魔石を出さないから嫌いだ』


『そうだそうだ』



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