第21話催眠と邪眼




俺がダンジョンに入って行くと、山田のおっさんが見知らぬ人達を介護している。

若い女性1人は地面に吐き出しタオルで口を押さえている。

残りの4人の男性も苦しそうにうずくまっている。

俺は新しい移住者の冒険者だと気付いた。


「お前か、気にしなくていい。先に行ってくれ」


「その人達は何色だったんですか?」


「赤・黄・青だな」


「それ以外の人は居ますか?」


「前に緑の人が居たな」


「ありがとうございます」


「やはり色が気になるか?」


「それは気になりますよ」


俺はそう言いながら、通路へ入って行く。

あれは違う色のダンジョンに入った時に起こるダンジョン酔い。

2時間も経過すれば治まる症状で、今後スライム相手に戦い続けるのだろう。

弱いスライムでも戦う事で、色に染まるのも早くなるので頑張るしかない。


しばらくはスライムナイフで戦い、次の階段へ最短ルートで進む。

そして2階層へ繋がる階段に到着。

周りに人が居ないことを確認後、階段ワープを発動。

思い描く12階段付近の光景がかすむ様に見え、魔物も居ない状況を確認して移動を決める。

その瞬間、12階に俺は立っている。

MPを11ポイントも消費。1階層につき1ポイントの消費計算になる。


カードホルダーから6枚の従魔を取り出して放り投げる。

イメージすると、従魔が現れて着地。

ピーとキーのコンビは跳びはねて喜び合っている。

ツタは素早く天井に移動。


前の事を思い出し、俺が先頭に出て階段を下りる。

後ろから付いて来る従魔らは、13階層に下りると俺を見ている。

10メートル内には魔物の存在は感じない。


スライム4匹に先行させながら進むと、左の通路に魔物の反応があった。


「左通路に8体いるぞ」


スライムはその通路を覗き何やら相談している。

飛び出したのはキーで、雷撃をぶちかました

俺は急いで通路見ると、1メートルの目玉が地面に8玉が転がっていた。

スライムが遠距離攻撃を加えると、1玉は爆発し次の目玉は溶かされている。

1玉は目が充血して血を流し続けている。

次々攻撃されて終了。

多分、目玉は雷系に少し耐性が有ったが気絶状態。

遠距離攻撃の餌食となった。


俺が魔石を回収して、皆に順番に配ると美味しそうに食べている。

やはり魔石の質で味も違うらしい。


真直ぐな通路から8玉が空中に浮かんで凄い目つきで睨んできた。

俺を見る目は異常で、少し目眩がする。

もしかすると催眠か?そうに違いない。

スキル状態異常耐性でどうにか持ちこたえている。

俺が持ちこたえている間に、従魔の攻撃で終了。

リップはその目玉を美味しそうに花に入れて食っている。


「お前はゲテモノ喰いか?」


あんな大目玉食うなんて、信じられない思いだ。

そんなリップがカードを1枚を掴んで持って来ている。


「今のはすまん。言い過ぎた」


カードを受け取り見る。


催眠


凄い催眠を掛けることができる


「何だその凄い催眠は、もっと詳しく説明しろ」


又も安直な鑑定結果だ。その【凄い】が知りたいのだ。

仕方ない、カードを睨んでイメージすると、脳に突き抜けるイメージが駆け巡った。


そのイメージで凄いの意味が理解した。

集中して見た相手を好きな様に操る事ができ、人間相手なら24時間は操れる。

そんなイメージが脳内に幻想的に見えていた。

ステータスで確認すると、支援スキルに催眠が追加されている。

すると地上で催眠が使えるのか?どれだけ俺に悪事を誘惑させるのだ。

悪い事を想像してしまう。



今度は右の通路に7玉と直進の通路から8玉が、同じタイミングで向かってくる。

目玉達が合流した瞬間に、1玉だけが赤く目から光線が出た。


俺の左腕が急に激痛が走った。

まだ距離があると油断していた。

俺はヤバイと思った瞬間に黒魔法の【暗黒球】を発動。

瞬時に【暗黒球】が目玉を15玉も飲み込み消える。

俺に敵意を持った者を瞬時に飲み込んでしまうのが【暗黒球】。

その為にMPが50ポイントを消費してしまう。


左腕には1センチ程の穴が開き、血が流れている。

あれは合流した時の接触がなければ、心臓に当たっていたかも知れない。

低級ポーションで治療をすませて、ようやく立ち上がった。


「赤い目玉は、速攻で倒せ分かったな」


従魔は体を動かし、『分かった』と返事をしてくる。


次から来た目玉は従魔に任せて、【吸魔】でMPを回復する。


そしてついに魔物カードがドロップした。

カードを見る。


邪眼


催眠で相手を操る


あの催眠カードと少し違う、どう違うのか分からない。

微妙な表現で困ったカード鑑定だ。



この階層の地図がようやく完成。

更に戦いで手に入れた邪眼カードは5枚が揃っている。

後5枚欲しいが、時間が迫っているので階段へ向かう。


そして階段に到着して準備をすると、あのコンビは俺の足にまとわりつき『行ってくる』と行ってしまう。



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