第19話オークションで落札




スマホの22時を合図に、12階層の階段から階段ワープを試した。

1階の出入り口の階段が微かに見えて、間違いない事を確認。

この階層へ行くことに決めて、一瞬で場所が変わりワープが成功。

体に異変が無いか、手で触りながら確認してゆき、防具にも異変はなかった。

最後にカードホルダーを確認。従魔カードの紛失はなかった。

ようやく安心した俺は、ツタのみ念じて呼びだし天井で警護を頼んだ。

これで階段付近で安心して一夜を明かせる。



階段での目覚めも今回の攻略で5回目。

ツタを戻して地上に戻る準備も整えた。

身に着けている武器はキラーナイフのみの軽装。


時間も7時になったので、地上に上がり山の空気を深呼吸で一杯に吸い込んだ。

久し振りの新鮮な空気だ。生きている事を実感。


支部に入ると沙紀が準備を整えて受付に座っている。

そして俺の目と合ってしまう。


「あんたは連泊の帰りは何時も早いのね」


「ここが遅くまで開いていたら、昨日には帰れたよ」


「そう、それは残念ね」


機械にカードを読ませると、支部をでて家に向かって歩き出す。

家に戻った俺は、風呂の湯を出して、洗濯機に着ている服とカバンの服も入れて洗濯を始める。

どうも防具も臭い出している。


風呂の湯はまだ半分だが、風呂場に入りシャワーを浴びる。

何度も洗い溜まったあかを落として、ようやく風呂に入ると「ハーァ」と溜め息が出る。

5日も風呂に入らないのはキツイ。

濡れタオルで拭くだけでは、この癒され感は中々でない。

30分も浸かり

体も精神も癒しモード。


風呂を出て、リビングのテレビを付けて、防具の手入れでもするか。


テレビでは、関西国際空港が映し出され、ロビーに出てくる人を映していた。

フラッシュが幾度も光り、6人の男女が注目を浴びていた。

テロップには『世界のトップランカー急な来日』と出ている。

俺も思い出した。アメリカの【ファビラの鉄槌】と呼ばれるパーティー。

そして次のニュースに移っていた。


昼は軽い食事を済ませて、PCの前で陣取る。

兵庫地方ギルドのオークションが既に行なわれている。

時間が13時になったなら、冒険者専用オークションが行なわれる。

俺の出品は14時が予定時間だと、今日のスマホの連絡でようやく知った。


冒険者専用オークションとは、冒険者の為のオークション。

冒険者がダンジョンで活躍する為に、必要とされるドロップ品と武器や武具が出品される。

そして落札するのも、冒険者のみと限定される。

出品者は匿名が基本で、武器や防具を作って出品する人は、有名な人程名乗って値段を上げようとする。

そして落札価格の1割が税金として取られる。


冒険者がより良い状況で戦える様に行なわれる支援で、本来のギルドの目的の為の処置らしい。


一般オークションは、もっと多額の税金を取られる。

それ程ドロップ品は貴重で、大切な物で大金になりやすい。


俺は画面の時間とスマホの時間を交互に見比べる。

まだ13時53分だが、時間が遅く感じる。


長い時間待った気がする。


「今回の出品でレアな出品だと断言できます。大きな木の実で従来の木の実の50倍の効果です。それでは5千万円から」


会場では、代理人や本人が最低100万円単位で入札がされている。

落札価格が既に8千万円に上がり、5分程で2億円まで上がり落札された。

ボタンを押した番号に注目がゆくと、【ファビラの鉄槌】のメンバー6人が座っている。

画面一杯に映し出され、顔ばれもいとわない雰囲気をかもし出している。

【ファビラの鉄槌】がこの場に出てまで落札しようとした出品。

誰もが係わるとヤバイと思った。


また新たな出品が開始。今回2つ目の大きな木の実だ。

開始そうそう2億円の入札があった。

会場全員が【ファビラの鉄槌】のメンバー6人を見る。

会場が静まり、誰も入札しないまま【ファビラの鉄槌】が落札。

それだけの威圧が会場を支配した。

もしかしてメンバーの中に支援スキルを持っている者がいるのか?。

画面を見ている俺でも、その威圧を感じ取った。

まだまだオークションは行なわれているが、茫然と眺めていた。


スマホが鳴り、開くと3億6千万円の入金の知らせが入っていた。

俺は狭い部屋をスマホを持ったまま、ぐるぐると歩き回っていた。

そしてようやく決断する。隣の家を買おうと決めた。

隣の庭に生えた木が邪魔だった。

日陰になって風通しが悪いし、落ち葉が俺の庭に落ちて迷惑であった。

村役場で相談したが、90万円の伐採費用を出すなら切ると言われ丁寧に断られた。

中には枯れた木もあって、こっちの家に倒れてくるか気が気じゃない。


PCの前に戻り、冒険者ご用達の防具店サイトで防具を見てゆく。

使用した材料や買った冒険者の評価を細かくチェック。

軽くて防御力がある物は、1000万円を軽く越えている。

欲しいが無駄使いはしたくない。

それに派手な模様が入り、俺好みの防具でなかった。


結局、俺が装備している旧タイプからアップグレードされた物に決めた。

今の装備の連続使用も限界で予備が必要だった。

値段はセットで105万円になっている。

サイズは前回と同じサイズを選び、決済ボタンを押す。

明日には支部に届くと記載されていて、現物確認後に冒険者カードで決済すれば終了。

たしか明日は支部が休みなのに、下手をすれば明後日になるかも知れない。



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