第18話12階層の謎




一夜を明けて、今は12階層に下り立っている。


「どんな魔物が来るか分からないぞ。気合を引き締めて戦えーー」


この言葉は、俺自身に言っている様で恥ずかしい。

愉快で頼れる仲間ができて、俺は充実している。

なので仲間を失うことは絶対に避けたい。その為にも油断は許されない。


俺は魔物探知に集中。


「何かが変だ。皆!何かが来るぞ」


魔物探知にノイズが掛かりハッキリしない事が変なのだ。

そのノイズが6メートル先ぐらいに居る気がする。


ピーとライムが急に遠距離攻撃をする。

何も見えないが攻撃が当たった証拠に何かが燃えている。

2メートル空中でも何かが溶けている。

何かが居る事は確かだ。


ツタの10本のツルが、そこに伸びて捕獲。

そしてそのまま巻きつき締め付ける。

しだいに透明な輪郭がモザイク状に見え出した。

それは3メートルの人型であった。頭らしき所には目も口もない。

巻かれたツルを両手ではがそうと、もがき暴れ狂っている。

しかし巻かれたツルの締め付けは、更に増して胴体を2つに千切り取る。

2つになった体にツルが侵入して、栄養を吸取るとしだいに干からびて無残な姿に。

ドロップしたカードと魔石が地面の上に。

ツルが伸びて魔石を吸収したあとで、ツルがカードを俺の前に持ってきた。

俺はカードを取り上げて、カードを見る。


透明化


体を透明にして見えなくする


何と透明人間になれるスキルの様だ。

俺はエッチなことは考えないハズ。


もしもの時は発動させて逃げる手段になり、大いに興味がわいてきた。

カードを見詰めてイメージする。

体の中を淡い何かが駆け巡った。

ステータスで確認すると、防御スキルに透明化が表示されている。


早速試しに透明化を発動。

しばらくすると徐々に手が薄れてゆき見えなくなった。

しかし服や防具は見えている。

透明化を使う場合は、やはり裸になるしか方法はないのか?

しかし寒い所では使いたくないスキルに間違いない。


不思議な事にダンジョンは、1年を通して27度であった。

しかし、特別なユニークダンジョンもあった。

温度が40度で、水魔法を持った冒険者が居ないと攻略できない。

通称は紅蓮ぐれんと呼ばれて北海道の登別にあるダンジョン。

特色として1階層から火系の魔物が出て来る。

ここの1階層は火の玉が魔物で自爆攻撃をして来る。

ダンジョンの色は赤。



透明化を解除するイメージをすると、手が元に戻りホッとする。

それにしても、従魔らにはアイツが見えているらしい。

考えてみれば従魔には目が無いので、他の器官で見ているのだろう。



そんな事を考えていると、キーが突然に雷撃を落とした。

そこには白くなった人型が立っていたが、この瞬間に粉々になって崩れ落ちた。

コイツは雷系の攻撃に弱い魔物かも知れない。


それにしても10階層からドロップ率が下がった気がする。

今の人型も魔石しか転がっていなかった。


「前方に複数のノイズがあるから気を付けろ」


雷撃が複数落下して、複数の人型が崩れている。

そして2メートル先で、複数の遠距離攻撃を受けた人型が膝をつき前かがみに倒れて粉々になる。

雷撃の直撃から逃れた人型であったが、モザイク状に見えたままわずかに動いている。

キーが跳ね出しその人型に飛び付いて電撃を放つ、すると人型は飛散して跡形も無く消えてしまった。

そしてキーは、カードを持って俺の前にきたので、俺が体をなでながら受取る。


「えらいぞキー」


跳ねて喜ぶキー。俺はカードを見る。


絵柄には刀が描かれている。裏返して見た。


剛腕の刀


力で斬り付けることで、斬れない物は無い


すぐに具現化のイメージで刀を実体化する。

刀身は黒く、波紋は紅くそして黒い刀身に溶けているように見えた。

身構えて力一杯に振り下ろす。

すると紅いスジが発生。ズバッとダンジョンの壁を斬り開いた。

深さは40センチもあり、縦に2メートルも斬れている。

なんと凄い刀なのか・・・

しばらくは刀に魅入られる様に見ていた。



キーが俺の足を突っつくことで、ようやく何かが解けた。


「悪かったな、心配かけて」


そして戦いが再開。

キーの活躍で順調に倒して、魔石も従魔と俺とで順番に取りあった。


そして慣れなのか、俺にも人型の存在が分かる様になった。

4メートル先から剛腕の刀で斬ってみたが、頭から胴にかけて斬られた人型がズレ落ちた。

見事な斬れかただ。


地図アプリでは、この通路を進むと地図が完成する。

しかし予想に反してこの通路は、北側端をオーバーして通路は続いている。


ダンジョンは大小の違いはあるが、正方形内におさまっている。

これもレアダンジョンだからと片付けられるとは思えない。

何故か不安を感じるが、先に進む従魔の姿を見ると頑張れと自分自身に言い聞かせる。


ようやく通路の終わりに辿り着いた。


広いスペースがそこにあった。

体育館程の広さで天井まで15メートルもあった。

罠探知で入念に探知するも、罠らしい物はない。

しかし中央に仕掛けの様な物が探知。

それは危険な物でない事も感じ取っている。


「中に入ってもいいぞ。中央には近づくな」


俺と従魔が入ると、壁には魔物絵が描かれている。

幾つもの魔物が取囲む様に、描かれて天井には満月の絵が描かれている。

壁から魔物が現れるイメージを想像してしまい、魔物探知で再度入念に調べたが何も探知しない。

俺らは壁伝いに右から一周りしながら調べた。

そして通路の元の位置に戻った瞬間。

中央の地面から石がズズッズッズーーとせり出した。

罠探知で再度調べたが反応はない。


その石は石碑で、見た事も無い文字が書かれていた。

それも両面に、スマホでカシャカシャと何度も撮り続ける。


「ダンジョンは人類に何か伝えたいのか?」


疑問だけが残ってしまった。

壁や天井も撮って終了。

石碑以外の変化も無いので引き返すしかない。


「階段へ戻るぞーー」



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