第17話11階層




俺の耳元でスマホが大きく鳴り響き、嫌でも目が覚めた。

そうか小説を読んでいる最中に寝落ちをしてしまった。

電源も15パーセントで、カバンから充電器を取り出しスマホに繋げる。

このまま繋げて使うしかないか?


するとピーとキーのコンビが帰って来た。


「カードをドロップしたのか?」


俺の前でポロと1枚のカードを落とした。

絵柄は黒く塗りつぶされている。

ドキドキしながら裏に返して見る。


階段ワープ


行った事のある階段へ瞬間移動ができる


今回の鑑定内容で大体のことは理解できる。

だが瞬間移動とは、とんでもないスキルであることには変わりない。

しかしこのスキルは俺のネットの知識でも知らない。


スマホのスキル辞典で探しても載っていない。

今回潜る為にダウンロードしたアプリだが活躍は罠探知だけ。

試すしかない。カードに集中してイメージをする。

今回は電撃が走るように駆け巡る。手にはわずかに震えが残っている。


そして理解した。これを使うと俺1人しか瞬間移動できない。

従魔はカードに戻さないと、どうなるか分からない。

なのでカードに戻してから使うのがベスト。

これで長い移動を戦わなくても、瞬間移動で深い階層へ一気にいける。


早速エアーマットの空気を抜きバックに入れてバッグを【黒空間】で収納。


「今回は11階層に行くぞ」


リップが先頭で行き続いて従魔らも階段を下りてゆく。

俺が下りた時には、6メートル先で戦いが激しく始まっている。

安全地帯は5メートル内、たまたま近くに居て従魔が仕掛けたのか分からない。


相手は巨大な猪、額に巨大な角を生やして、その角で突く為に頭を上下に振る。

しかし天井からツタがツルでその角を4本で掴んで離さない。

残りの6本が背中を連打して、そこから大量に流血している。

リップは細い根で体を押さえ、首にかぶりついてそこから血が流れている。

右前足はライムによって溶かされ姿勢を低くさせた。


「ツタ!角を離せ」


ツルが離したスキに【黒球】を放ち角と頭部を消滅。

頭がえぐられる様に穴が開き、猪はそのまま倒れる。


リップが前面に出た為に、他の従魔が攻撃に参加できない状態になったようだ。

しかしあれだけの攻撃に耐える猪も、凄い者だと感心する。

猪は鼻がいい獣で、そこから推測と検証だ。

どうも猪は鼻で従魔らの存在を嗅ぎ付けて、凄いスピードで向かってきたのだろう。

戦い終わった現場の向こうに、地面をえぐった足跡が続いている。


「リップは後方から攻撃しろ」


リップは花を上下させて了解と言っている。


「今回はリップが魔石を食べろ」


そう言った瞬間に魔石を花の中に入れてしまった。

又も激しい足音が聞こえだした。


「遠距離攻撃の準備をしろ。射程範囲に入ったら攻撃開始だ」


5メートル先から遠距離攻撃が始まり徐々に数が増えた。

しだいに激しい集中を浴びて3メートル先で倒れた。

頭部は溶かされ、前足はもげている。

胴体は変色して、雷撃で幾つも穴が開いた無残状態。


そんな戦いで、巨大猪を倒した従魔にさすりながら褒める。


「よくやった。協力して戦えばお前らに敵う者いない」


そして地図アプリの半分を探索した頃に、カードがドロップ。

拾った時の驚きも、何故こんな物がと戸惑いが入り混じった感情。


猪の肉


旨くて極上の肉 10キロ


そのままの内容だが、こんなドロップ品は全然知らない。

あえて上げるならポーションしかない。

早速アプリの【ドロップ品の値段を探せ】で探すが、やはり検索に掛からなかった。

旨い極上の肉だから旨いのだろう。一度食べるしかない。

しかし俺はグラム単位での豚肉しか食べた記憶しかなく、ネットで料理方法を調べるしかないだろう。

ちなみに俺は鶏肉は食べない。あの肌のはね穴が何となく嫌なのだ。



あ!又も戦いが始まったが、少し様子が変だ。

巨大な猪が白い体毛でおおわれ、その体毛によって遠距離攻撃が余り効かない。

少しだけだが体毛が溶けているだけ。雷撃もあの体毛によって弾かれている。

今までの猪が茶色だったことから、コイツは格上の魔物なのか?

そして角から何かを放ち、前面の魔法攻撃を防いでいる。


そしてリップの首へのかぶりつきで、あの白い体毛に鮮血が流れた。

ツタの連打も少しだけのダメージしか与えていない。

今は締め付けをして、これ以上俺の所に来ない様にしている。

俺は右側の壁にもたれ掛けて、斜めから胴体に向かって【黒球】を連発で放つ。

胴体に1メートルの穴が2つも開き、そこから内臓がこぼれ落ちる。

それをチャンスと思ったキーが、雷撃をその穴に幾度も落とした。

それによってようやく白い猪は倒れた。


そして死体はダンジョンによって吸収。

その跡に上級魔石とカードがドロップしている。

上級魔石とカードは俺がいただく。

従魔の眼線を感じるが、知らない顔でバックに入れる。

上級魔石で白い猪が格上の魔物であることが確定。

しかしネットではこんな事は書かれていない。

やはりレアダンジョンだからなのか?

そしてカードを見る。


従魔強化


HP2倍


成る程、少ない説明だが何となく理解した。

2倍の強化は凄い事だ。

誰にしようか悩む、そこでひらめいた。


「お前ら俺を中心に円陣を組め!」


皆、円状に並んだのでキラーナイフを取り出して、地面の上で回す。

倒れたナイフの先はリップに向いていた。

リップに近づき、カードをかざしてイメージをする。

多分これでリップを強化させることができると思う。

カードは消えリップが光りだした、光りが消えると高さ3メートルにリップが成長。

葉を高々に上げて喜んでいる。


あの白い猪が現れた事で、この位置が気になりだした。

地図アプリで確認すると、南端にきていて11階層を制覇。

それ以外、地図には異常な点はなかった。


「皆!そろそろ帰るぞ」


途中で見つけた階段へ、俺らは向かう。



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