第16話罠探知と状態異常耐性




全員が揃って10階層に下り立っている。

普通ならレッドベアーが居るハズで、両手から火球を出し交互に放り投げてくる。

立った状態だと3メートルもある。これはネットで調べた情報。


この10階層は横幅6メートル、高さは6メートル。

9階層と比べても大きい。

今はでかくなったリップが前に出て、細い根で地面や壁や天井をペシペシと叩き罠が無いか調べている。

10階層から罠が有るというネットでの書き込みで、落とし穴もあれば天井が落下して潰されたり壁から槍攻撃などがある。

しゃれにならない程の罠攻撃だ。

もっとも嫌なのは天井落下で俺は下敷きに成りたくない。

罠探知のスキルがあれば楽に行けるのに、俺はそんな風に思ってしまう。


DEX【器用さ】とAGI【素早さ】が10を超えて、日頃から探索をする用心深い人は、罠探知や気配探知を習得する人が多い。 

俺もそんな人になりたい為、魔物探知で修行中。


「右の通路に魔物が居るぞー」


警戒する従魔達。

現れたのは巨大コウモリで羽根をバタつかせているが、羽根が広がった状態だと4メートルもある。

突然耳鳴りがして、耳を塞いでも音は止まない。

俺は地面を転がり頭痛に悩まされる。


その耳鳴りが止まり、耳を塞いだ状態で目を開くと、巨大コウモリは地面に横たわっていた。

しばらくするとそのコウモリも地面に吸収されて消えた。

残った魔石を掴んで食べているのはリップだった。

そしてカードを掴んで、倒れている俺に渡してくる。

受取ったカードを見ると黒く塗りつぶされていたので裏を見る。


罠探知


罠を探知できる


「罠探知だ!!しかし又も、短い説明文だ」


そんな事はいい、スキルカードだと言う事実が凄い事だった。

俺が罠探知の事を考えていたから、ドロップしたのか?

それとも偶然なのか?


しばらく考えても答えが出る訳でも無い。

カードを見詰めたまま、イメージをする。

カードが消えたとたんに体が光り習得したイメージが体を駆け巡る。

普通のスキル習得と違う感覚。

ステータスにも罠探知が表示されていた。

あのカードのスキルで有る事に間違いない事が証明された。

しかし魔物からドロップする物で、スキルを習得したと言う情報は聞いた事がないし見た事もない。


「なんだ心配しているのか?大丈夫だ先に進め」


どうやら従魔らに余計な心配を掛けた様だ。

罠探知に集中だ。10メートル内には罠は無い。


「2体のコウモリが来るぞー」


又も転がる羽目になり、耳鳴りが少し残った状態。

今度はカードは出なかったが、10階層はこれが続くと思うと微かに耳鳴りがする。

これでハッキリした。このダンジョンはレアダンジョンだ。


レアダンジョンの情報はネットでもギルドでも公開されていない。

冒険者が公にしない限り、その情報は秘匿される。

それは冒険者の権利としてギルド設立以来守られている。

ギルドが聞く事も許されない。

そして高レベルの冒険者の多くがそのレアダンジョンに潜っている。

しかし10階層でその冒険者の多くの死亡が届けられているのも事実であった。

レアダンジョンの色は何故か白だけで、その数も少ないそうだ。


52回の戦いに、役にたたないまま俺は耳鳴り悩まされる。

そしてあれ以降カードは1枚も現れていない。

何度も何度も転げ回ると、急に体が光りスキルを習得。

ステータスを確認すると、防御スキルに状態異常耐性がついている。

そして少しの耳鳴りはするが、頭痛がする程の痛さは感じなくなっている。

あの苦痛が報われた思いだ。


俺は先頭に立ち、頭痛のお返しにコウモリへ【黒球】を当てて消滅させる。

そして、拾った魔石を2回に1回だけ従魔に交代で食べさせている。

俺が戦闘する様になり魔石を拾う度に、従魔の視線が背中に感じていた。

結構高い魔石だが仕方なく半分を食わす羽目になった。


そして全ての通路を制覇。

罠探知も罠が無い為、探知の瞬間の感覚は未経験のまま終わった。


「11階層へゆく階段へ行くぞ。お前達で好きなように戦え」


俺は従魔の後ろについて魔物探知で探知し続ける。

成る程、俺はコウモリ相手に従魔が戦う光景は見ていなかった。

どうも従魔はあの攻撃に何も影響していない様子。


そうだ従魔には耳が無かった。だけど俺の命令には従っている。

何故だろう分からない。


10階層になってから、従魔が魔石を食べる瞬間、美味しそうに食べている。

俺にはそう見える。リップが分かりやすいのは、葉を小刻みに揺らしている。

ツタも同じで、幾つもの葉が揺れているのだ。

スライムは微妙だが何となく分かる。

それは主従の関係を結んだ者だけ、つまり俺しか分からない。


そして階段に辿り着いた。

俺が寝る準備をすると、後ろからピーが突っつくので「分かった行ってこい」


又もあのコンビは、嬉しそうに出かけて行った。



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