第15話蛾の討伐




今日もスマホの音で目覚めると、足元にクモの糸カード11枚と見慣れないカード1枚。

カードの絵柄は袋状の物が描かれ、裏を見る。


毒袋


体内に注入すると、液状にしてしまう毒


「なんだ、触るのも恐そうな物だな」


だがようやく理解した。毒袋はマレにクモからドロップする物。

そして扱い難い物として有名。衝撃に弱くすぐに破けて悲惨なことになる。

何重にもビニール袋にいれて衝撃を受けない様に注意してもダメだった。

空気に触れると、1時間もすると劣化が始まり8時間後は腐った液になる。

なので普通なら捨てられる運命の物。

しかし俺は苦労することも無く安全に運ぶことができる。

カードバインダーに入れて一旦は保留。


ピーとキーのコンビはここに残して、今日は目の前の階段を下りる予定だ。


「リップが先頭で進め」


言われた通りに進むリップに、続く従魔らの最後に俺がついて行く。


9階層はネコ程のガが20匹から40匹の集団で飛び交う。

そして毒の粉を撒き散らし、口に入れば嘔吐で始まり失神して倒れる。

肌に触れると赤くはれて、かゆくて血が出るまでかいてしまう。

やっかいで仕方ない毒だ。

対処方法は火魔法の【轟火】《ごうか》で焼き払うか。

完全防護服を着るか、光魔法の【浄化】で消し去るしかない。


俺は念の為に防毒マスクとゴーグルをつけているが不安だ。

リップは飛び交うガを掴んでは、花に持っていき食っている。

どうやら食っている時点で毒を無効化しているのだろう。

スラもリップから逃れたガに跳び付き消化している。

粉が舞う中を平気な顔で進む従魔。


取り残された俺。俺は近づき粉に触れてみた。

赤くはれないので左の手を粉が舞う空中の中へ入れてみるが、平気で毒を無効化しているか?

どうやら5分も浴びているが異常は無い。

そして従魔の後を急いで追う。


そして地面に落ちたカードを拾う。

カードは光球で、50年前にドロップした光球は今でも光り続けている。

直径2センチの球だが照明として使われている。

値段はたしか10万円で買取ってくれる。


従魔らがドンドン先に進み、俺は下を見ながらカードを探し拾うので中々追いつけない。


「お前ら!少しペースを落とせ」


この一言でようやく従魔らに合流。

そんな従魔らは、見ていると先頭を交代して戦い出している。

従魔らも知恵が上がったようで頼もしい。

スラの連射での針攻撃で数を減らすが、それでも襲うことを止めないガ達。

この行動はダンジョンの魔物の習性だと、ある学者が言っていた。

俺なら絶対に逃げ出しているのに、恐怖がない魔物に俺は恐怖を感じる。


次はライムが先頭になって、水球で一瞬に溶かしている。

落ちてきた魔石を体の一部を伸ばしキャッチして体内で消化していた。

あのように伸ばせるのかと感心。


しばらくライムの戦いが続いたが、今度はツタが天井を這いながら進みだした。

ツルが上から突き刺し栄養を吸収。魔石も一緒に吸収している。

ツルの攻撃には迷いが無く、一撃で仕留めている。


地図アプリも半分が埋まり、目の前には10階層へ下りる階段を発見。


「リップとツタ!俺らがいた階段まで行って、マットとカバンをここまで持って来るんだ」


リップは根を振り答えて、ツタもツルを振っている。

どうにか理解している様だ。2体揃って来た通路を戻っている。


俺はピーとキーのコンビにここの位置を念じて送る。

何とか通じた様だが、もし失敗したらあの階段へ行き、又念じるか探しに行くしかないだろう。


「今度は俺が先頭だ。後ろから来た奴は倒せ」


そう言って先頭に立って、戦い始める。

初回は【黒球】を発射して数を減らし、3匹になると両手に持ったナイフで攻撃体勢に入る。

壁を蹴って天井近くのガを斬り落とし、着地したところを襲うガを振向きながら横一文字に斬る。

頭上から来るガにナイフを突き刺し終了。

魔物探知がレベルアップしたようで、見えていない方向でも見えている様に分かる。

腕や体や足をどうしたら最短で攻撃できるかも分かるし体も動かせる。

レベル9の時と全然違う動きになっている。

そんな俺自身が、驚く動きの変化だ。


そして次々と倒して行く。



どうやら地図アプリの9階層も攻略終了。

10階層へ下りる階段に向かって帰ることにする。


3回程戦い階段に到着。

リップもツタも戻っていて、リップはカード3枚を掴んで振って見せている。


「えらいぞリップ、そのカードを渡せ」


細い根が伸びて3枚のカード渡してきた。

2枚は光球カードで、もう1枚は青く光ったカード。

裏を見る。


癒し球


光りを浴びると傷は治り、HPは徐々に回復


そんな感じで書かれていて、微妙な鑑定結果だ。

それでも低級ポーションの上をゆく効果がありそうだ。

しかしどれだけの時間光り続けるのかが書かれていない。


光球は100年と書かれている。

なのでこの癒し球は一瞬で消える可能性もある。

よく分からないのでこれは保留。


どうやらピーとキーが帰って来たようだ。

俺の魔物探知範囲も距離が伸びて50メートル先のコンビが探知された。


やってきたピーがカードをププッと吐き出す。

クモの糸カード12枚と毒袋カード1枚。

まずまずのドロップだ。


そして又8階層へ行こうと跳びはねた。


「待て!明日の8時までには帰って来い。明日は10階層へチャレンジする」


分かったと何度も跳ねて、あのコンビは8階層へ行ってしまった。

あのコンビは24時間戦い続けているが大丈夫なのかと心配だ。



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