第2話スライムカード




今日も朝早くから、1階層でスライム相手に戦い続けている。

かれこれ43匹も倒して、1階層の迷路の北の端までやって来ている。


目の前のスライムを睨みつけて、スキルのスラッシュを発動。

体全体が滑る様にスライムの横をすり抜ける。

ナイフが横一文字に、スライムの胴体を切裂いていた。


急に脳内に、あの声が響いてきた。


『同種の魔物を連続で10万回討伐しました。恩恵にスライムカード・従魔スキル・黒魔法・レベルアップを与えます』


この声は、初めてスライムを討伐した時に聞いた声。

それとスキル習得時にも同じように聞いた。


成る程、俺は2階層へパーティーで行ったが、俺の攻撃はゴブリンには通じなかった。

かわされたり、棍棒でナイフを防いで押返され太刀打ち出来なかった。

だから、スライム以外倒した経験が無かった。

幼馴染の2人からは、何も言われなかったが、残りの3人からは役立たずと罵られた。

それが俺の1回だけのパーティー経験。

次の日からは、俺1人のソロ活動の始まりでもあった。



「ステータスオープン」


青柳誠あおやぎまこと


Lv10


HP100

MP50


STR5 VIT3

DEF3 INT4

DEX4 AGI5


固有スキル

カードマスター

カード化・カードホルダー・従魔


魔法スキル

黒魔法


攻撃スキル

スラッシュ


支援スキル

魔物探知


「やったぞ!!レベル10で新たに黒魔法が習得出来ている。これで魔術士として名乗れる」


透明なボードの黒魔法のあたりを、指先で長押し。

鮮明なイメージとして、魔法の知識が脳内を駆け巡ってゆく。

攻撃魔法は少ないが、それでも使い勝手は良さそうだ。

しばらくは、黒魔法の知識にひたっていた俺が居た。


黒魔法は、冒険者のサイトでも見た事が無い。

ハズレ魔法かと一瞬脳裏を通り過ぎたが、黒魔法の知識から判断しても良い魔法だと分かる。

今度は従魔を長押しすると、成る程、魔物をカード化できて従魔として戦わせることが出来るみたいだ。


早速、スライムカードを見る。

通常の透明なスライムでなく、薄いピンクのスライムが描かれていた。

イメージすると、手からこぼれ落ちて、薄っすらと透明なピンクのスライムが地面に現れて俺を見ている。


指先をスライムの体に突っつくと、ぷるんと震えて襲ってくることもない。

感覚的には、可愛さと親近感がわいてくる。

今度は手の平でなでてやる。ぷるぷると震えて返事らしい動作で答えてくれる。


「そうか、うれしいか?お前の名、ピーだ。どうだ気に入ったか?」


2回程軽くジャンプして、嬉しさを表している。


「そうか、その名で良いんだな」


後からスライムの気配が感じる。

振向くと右からの通路からスライムが出現。


「ピーやっつけろ」


ピーはピョンピョンと跳ねて、2メートル手前で止まり、スライムに向かってピンクの球の様な物を発射。

それがスライムに当たり、スライムが弾けて地面には魔石とポーションカードが現れた。


「ポーションカードか、何時もなら2千匹~2千5百匹ぐらい倒さないと現れないのに、運が向いてきたかな」


このひとり言は、寂しいのかつい出てしまう癖であった。


ピーが魔石とカードを器用に体に載せて、俺の所まで運んで来てくれる。


「いいぞー、ピー」


魔石とポーションカードを受取ると、カードホルダーに仕舞う。

何となく、スライム相手なら勝てそうだと判断したが、思っていた以上の強さを発揮している。


今度現れたスライムには、俺の黒魔法の【黒球】を発射。

100キロの速度ぐらいで発射され、見事に命中。

当たった瞬間にスライム全体を黒く包み込むと、そのまま消滅。

残った魔石を拾い上げる。


互いに交代しながら戦ったが、どうもピーが戦った時にポーションカードが又も現れた。

おかしい、カード化の率がピーの時だけ違う。

何度か検証してみたが同じであった。


そして、ピーが倒した後にスライムカードが現れた。

これにより、カードマスターの期待度が上がり、今までの苦労が報われた様に思えた。


カードの絵は、通常の透明なスライムが描かれていた。

スライムカードを持ったままイメージすると、いつものスライムが現れた。

そのスライムにスラと名を付けて、スライムと戦わせた。


戦いは、互いに相手を包み込もうと体を広げてぶつかる。

徐々にスラの方が有利になり、相手のスライムを飲み込み終了。

多少、時間が掛かったが勝ったのでヨシとした。


何度もポーションのカード化があり、初級ポーションが10枚になった時にそれは起きた。

カードバインダーの変化に気付き、確認すると初級ポーションは消えて、中級ポーション1枚に変わっている。

中級ポーションなら、体の欠損でも治せる優れ物。

軽い病気でも治してしまう。

ギルドに売った場合は、平均相場は80万円ぐらいで、品薄の場合で100万円の高値がついたこともあった。


10枚揃うとワンランク上がるのか?今まで経験もしたことがない。


今日は色々な事が起きた。

考えを整理する為にも、早い時間帯だが地上へ戻って考え直そう。



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