光の交わる場所
色は交わるものによって最終的な色が変わる。
絵の具だと黒に。光だと白に。
様々な思いや真実が交わるとき、
その色は何色なのだろうか。
「それでは皆さんお揃いっすね」
アカリと会ってた五十嵐に連絡をつけようと思ってた矢先、佐藤から連絡があった。
そしてLUCKYで俺、タツ、サチ、ヤマさん。五十嵐と佐藤が集まった。
「みなさんいろいろと思うこともあるでしょう。ですがまずあたしの推理を言わせてください。」
みんな静まりかえっている。聞きたいことはあっても話したいことは無いのだ。
「まず、あたしと五十嵐さんが知り合いなのは五十嵐さんから相談されたからっす。内容は人は未来を知ることが出来るのか。あたしは空間時空の研究をしてます。可能性としては監視カメラみたいなものを光より早い早さで動かせば未来を知ることは可能です。ですが今現在我々も、我々以外でもその技術は今のところ完成していません。」
「つまり未来はしれないってことですよね?
ってか、あんたらの関係とか知って意味あるんですか?」タツだ。
「ではあたしの話は一旦中止して五十嵐さんのターンっすね。」
次は五十嵐が話し出した。
「僕は勿体ぶるのとか得意じゃないんで。それこそ記者なんで題名から話しますね。
永瀬さん達がこの間見た男性は僕の兄です。
そして僕が岸本さんと話していたのはあの方が僕の義姉。僕の兄の将来の婚約者と言われたからです。あとは佐藤さんお願いします。」
みんな、ポカンとなっていた。アカリが自分から?あれ、俺ってアカリと別れたっけ?
「今の話で重要なポイントは将来ってところです。岸本さんも今は別の恋人がいるんだとか。そしてそのあと永瀬さん。あなたの話を聞いて予測はしてたんですが。」
俺が岸本アカリの恋人だよ。
「なるほど。これで透明人間と予知人間が同じ人物だと分かりました。」
「あんた話し方がまどろっこしすぎて分かんないんだけど。」
「あたしもはっきりとは分かってないんです。あくまで仮定の話。たとえこの仮定があってたとして、その次は目的が分かりません。結局本人に聞くしかない。ただこの仮定があってたとしたら岸本さんは」
未来から来た人
俺も初期の方からもしかしたら分かってたのかもしれない。ただ佐藤の言うとおり、目的が分からない。俺からしたら目的なんてどうでもいい。俺と付き合うということが、俺たちの思い出がどこまで本気だったのか。もしかしたら目的の為のカモフラージュで誰でも良かったのかもしれない。その事実を知るのが怖くて逃げた。
「あたしの仮定はこうです。岸本さんは未来の技術を使い、何らかの形で過去に来た。おそらく時空を超えているので光より早いスピードというところは変わらないでしょう。その為、写真に光として写らなくなった。そして未来での旦那さんは五十嵐さんのお兄さん。」
「でもさ、それなら今のアカリさんが2人いるみたいになるんじゃない?」
「そう、だからあくまで仮定ですし。」
「真実を1番知るべきはあなただ。ただ1番知りたくないのもあなたのはずだ永瀬さん。」
真実じゃない事実だ。
若い人々は自分の不幸や不自由を誰かのせいにする。それを自分のせいにしてしまうと、いつか1人立ちする前への決心がつかないからだ。自分じゃない何かのせいで苦しんだ。1人ならそんなことは無い。そして1人立ちしたあとは次は言い訳を始める。問題ない、練習はしてきた。今まで通り誰かのせいにしたらいい。
これが悪い事だとは思わない。俺だってそうだったから。夢の限界を感じた時、誰かのせいにすると夢をあきらめる理由になる。
中学3年の夏。引退後の野球部に混ぜてもらい試合させてもらった。ピッチャー、バッター、守備と一通りしてみんなから上手いとチヤホヤされた。自分でも上手いと思った。でもそこまでだ。硬式で1人で練習していた分ミスもあった。それにしては上手い。でもその程度だった。俺は上手いけらいになれてもプロにはなれない。中学生ながらにそんな気がした。でもまだ可能性だった。夢を諦める瞬間を想像すると怖かった。
中学3年の秋。試験勉強は無難にこなしていた。今日も公園で練習しよう。素振りをして、壁あてを始めた。急に走ってきた20歳過ぎの男の人が「ロージンいらね?いるよね?あげる」
と言われ白い粉の入った袋を渡された。ロージンの割に袋から粉が出てこない。怖くなった。授業で見た事がある。お兄さん怖かったし、ほぼ間違いない。俺は慌てて袋を公園に埋めた。とても挙動がおかしかったのだろう。次の日袋は見つかり俺は警察に連れていかれた。幸い、お兄さんを追いかけている刑事さんのおかげで捜査2日目で誤解が解けた。進路にも問題なく、この事件は解決した。
ただ、捜査一日目で別の問題が発生した。警察に誰に貰ったのかと問われている途中、家族構成を答えるとそれだけか?と言われた。うちは両親と俺と弟の4人兄弟。でも警察は1人隠してるだろう、そいつから貰ったんじゃ無いのか?
煮えきらなくて捜査が終わってから両親に問いかけた。
「お前には黙ってたが、、、」
両親から伝えられたことはにわかには理解出来ず、頭の中が真っ白になった。
何より嘘をつくなと言った父さんの嘘がとても自分には堪えた。
春が過ぎた。
俺は野球部には入らなかった。
自分の才能の限界を他人にバレないうちに、誰かのせいにして終わらせてしまおう。その為にあの出来事はとても大きい。分かってる。あの人が俺を守るための嘘だったなんて。高校は特に目立たず友達が居ないこともないけど、コウモリみたいにいろんなところを転々とし。そしてあいつらを見つけた。モテすぎて女に嫌われてる女。家が貧乏で虐められてる男。こいつらには居場所がない。ちょうどよかったんだ。
誰でもよかったんだ。
それから3回目の春。3人は同じ大学に行ったが、サチは成績がついて行かず中退してフリーターに。タツはバイトをしながら奨学金も使い。俺たちは大学3年になった。アカリのことがあり、こいつらと触れ合い気づいた。こいつらは俺の事を大切にしてくれてる。俺が居場所を与えたから少なからず感謝している。それに気づいた。もしかしたらそれが分かってて利用したのかもしれない。
俺はいつもそうだ。分かってるくせして知らないフリ。現実から目を逸らしては何かを言い訳にして。弱いものの味方になるフリをして居場所を作る。
待ち合わせ場所について5分くらいたった。
スーツを来ている彼女が近づくのが分かり目を逸らした。ほのかに香る綺麗な女性の香水の匂い。その匂いから彼女の匂いに変わる。この匂いが変わる瞬間が好きだった。その理由は。
2人きりになる瞬間だから。
街に溢れるごく普通の人同士からカップルに。
2人きりになる瞬間。
今日は緊張が走った。
そもそも彼女が本当のことを言ってくれるのか
言ったとして受け止められるのか。
何にも分からない。
それでも聞かなきゃ行けないんだ。
ここがもう1つの居場所だから。
to be continued
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