探偵団再結成

五十嵐さんと佐藤に会った日の夜にタツをファミレスに呼び出して一通り話した。

「んで、お前はサチを疑ってんのかよ。大体その五十嵐ってやつが嘘ついてないっていうのもお前の感覚なんだったらわかんねーじゃん。」

「まあそうだけどさー」

「なら決まりだな。」

「何が?」

ラッキーセブン探偵団再結成だ!!


という訳で、とりあえずサチには疑ってしまっていることは話さなかった。探偵団としての目標はアカリが過去から来たか探ること。五十嵐の身辺調査ということになった。

「まさかたっくんと一緒になるとはね♡」

俺はまさかのヤマさんと五十嵐さんをつけている。なんで俺がヤマさんと。このチーム編成とターゲットはタツが決めた。サチをアカリの方につけ、いつものように写真を送って貰う。それを監視できるようにタツもそっちに。そして残りの俺らが五十嵐さんにということだ。

しばしばサチから写真が届く。そしてその少しあとにタツから連絡が事実確認の連絡がくる。

こっちはと言うと、五十嵐さんはいろんなとこに行っては取材をし、と言った感じだ。記者ってスゲーな。こんな行動力俺にはない。

五十嵐さんがカフェで休憩に入ったので俺らもランチにした。

「にしても、あんたも凄いよね。」

「何がっすか?」

「行動力っていうか。好きな女のためにここまで出来るもんかね。あんたはもちろんそのために協力出来るあの二人もよっぽど。」

ヤマさんに言われて思い出した。五十嵐や佐藤の的の外れた話のせいで忘れていた。タツはもちろんサチだって今まで協力してくれていたんだ。それなのに俺はタツにあたって、サチを疑って。クズだなほんと。

俺は勢いよく呼び出しベルを押した。

「すいません!チョコレートパフェ1つ!」

「吹っ切れたみたいね。」

「ありがとうございます。ヤマさんのおかげです!」

「それはいい事だけど。つけてたひと出ていくわよ」

ヤマさんが指さす方を向くと、五十嵐が会計をしていた。


あぁぁぁあ、やらかしたー!!


数時間後LUCKYにて。

「んで、見失って今日の収穫なしと?へー」

「さーせんでした。」

「まあまあ私のせいでもあるから」

ヤマさんが庇ってくれたのもあり、その場を特にお叱りを受けることは無かった。

「じゃあ次はチーム替えだな。タクとサチで五十嵐さん?だっけ。俺とヤマさんでアカリさんだ。」

タツが次のチーム分けを決めると解散となった。次はみんなが休みの来週。


ほぼ毎日バイトのサチとタツ。ヤマさんは店長だからもちろん仕事。それにブログの方もいろいろと大変らしい。大学が終わるとすぐには帰らず、ブラブラする。特にサークルなんかもやってはなく。たまに友達がやってるとテニスとかバスケとか混ざる時はある。公園でベンチに座って考え込んだ。良く考えればとても大きなことではない。彼女が写真に写らないだけだ。

起こりえないことかもしれないが、それから戦いに巻き込まれたりとか、他にもそういう人がいたりとか少年漫画的な展開にはなってない。足元にボールが転がってきた。野球少年たちのファールボール。気をつけろよー、今どきは公園で野球禁止だの厳しいからな。と注意をボールに込めて少年に返した。


懐かしい。


昔はよく父さんとキャッチボールをしたな。


高校は野球部に入るつもりだった。

エースで4番。甲子園にも出場してプロ野球にドラフト入団。そしてメジャーリーガー。

あの夢はどこに置いてきてしまったんだろう。

あんなことがあったからか。

あんなことを知ってしまったからか。


土曜日。一日中曇りという微妙な天気だが、初夏の5月にはありがたく涼しい。むしむしはしてないし雨は降らないだろう。

今日も五十嵐は色んな場所を転々とし聞き込みに取材にを行っている。

「マスコミってさ。たまにはマスゴミなんて言われてるけどさ。私たちなんかよりよっぽど偉いよね。」

「偉い?」

サチの偉いに、お利口さんの偉いなのか。お偉いさんの偉いなのか、疑問が生じた。これは前者みたいだ。

「私たちは事実を知る努力もしないくせに知った気でいるのに。この人たちは必死に真実を捜し求めている。それって偉いよね。」

「偉いっていうのは分かんないけど仕事だしな」

「サチね中学の時、好きな人勝手に決められてたんだ。よく見てるし話すからA君が好きだろって。でも本当はB君が好きで告白したら、Aと付き合ってるのに俺に告白すんの?モテる女は違うねって振られちゃた。それから色んな噂が流れて。高校に行っても同じ中学の子達に色んな噂流されて。仲間外れにもされた。だからたっくんとたちが仲間に入れてくれた時は嬉しかった。恋するじゃないかとおもった。」

「はぁぁあ?」

思わず声が出た。雰囲気的にちょっと。俺の勘違いメーターが一気に振れた。

「まあしてないけどね。ただ、」

「ただ?」

「たっくんに彼女がてきた時。ちょっと寂しかった。嫉妬とかじゃなくて。やっとできた居場所も永遠じゃないのかなって。」

小雨が降ってきた。予報と違うじゃねーか。

これは誰が曇らせた雲で、誰が振らせた雨なのか。考えなくても答えは分かってた。

「まあだから真実を明らかにして、たっくんには幸せになってもらわないとね。」


「でも事実は1つだろ。」

この言葉がなんの意味を持って、何を思ったのかは分からない。ドラマの主人公が言ってた気もするけど、このタイミングで出るか?

多分だけど、心の中の俺じゃない俺は少なくともこうおもってしまったのだろう。


「おやおや、久しぶりっすね」

振り帰らずとも分かった。


タツヤマチームは困窮していた。アカリさんは普通に仕事をこなし、普通に帰っていったから。

「このまま付けてて意味あるんすかね。」

「でも他に手がかりもないしね。」

「にしても可愛いな。タクにはホントもったいない。」

「そうよね。それなのに写真に写らないなんて。まあでもタクくんにそれを打ち明けないってことは気づかないと思ったのかしら?つまりタクくんが初彼氏なんじゃない?男としては嬉しいわよね。」

「分かりませんよ。タツがバカにされてるだけかも知れませんし。それに写真に写らなくなったのは最近で昔は写ってたかもしれないし。」

「あぁ!」

「あぁ!」


タツヤマがそんなアホなこと考えてるとも知らず俺は慌てていた。先ほど俺らの背後に現れた男。こいつのことはサチには話していない。けどこいつの空気の読めなさっぷりと、さっき話しかけられたことを考えると無視はできない。でもこれじゃ逆に俺がサチに隠し事してるやましいヤツじゃねーか。

「君は確か」

男が口を開いた。名前を覚えてないならトンズラ出来るかもしれない。

「佐藤教授!?」

次に口を開いたのはサチだった。



逃げ場を無くすように雨が本格的に降り始めた。天気予報なんてアテにはならない。


to be continued

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